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二回もざまぁされる予定の中ボス魔王妃様は自由に生きたい  作者: 明。


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救いようがない男

とあるお兄さん視点になります。

時間も前日の夜に遡ります。

 皆さん、おはこんばんちはー。僕は宮廷魔術師キョウ=ビーンボゥルお兄さんです。こう見えても最高位の魔術師なんですよ。最高位の宮廷魔術師は属性の数だけいます。まあ、属性によってランクがありますけどねぇ。緑は言ったらなんですが、地味じゃないですか。農家や錬金術師には喜ばれますがね。光とか炎とか水みたく、わかりやすい華やかさがないんですよ。緑と土は最高位でも地味術師と言われてます。トホホ……。


「貴様、私の話を聞いているのか!?」


「あ~、はい。聞いてますよ~」


 嘘です。現実逃避してました。でも、初回はちゃんと聞いていたから問題ないですよ。だって、何回言われても結果は同じですもん。

 現在、僕は王太子殿下に呪いを解くよう強要されています。正直緑の精霊に人をツルッパゲにする力があったのは驚きだったけど、精霊だって意味もなく丸ハゲにしたりはしないです。しかも、ちゃんと解呪しないでねってわざわざうちのグリムワンドに根回ししに来たあたり、見た目こそ低位だけどかなりランクが高い精霊さんなんじゃないですかね。低位精霊って中身は小さな子供みたいなものだから、そこまで頭が回らないはずです。


 精霊の森にいる小さなモフモフ達に想いをはせる。今度の休み、王都の菓子でも買って会いに行こう。モフモフして癒されよう。週末モフモフ祭りだヤッホイ。とりあえず、王太子殿下が居なくなったらうちのグリムワンドをモフモフしてブラッシングしようヤッホイ。そうしようヤッホイ。


「だから、貴様の精霊にコレをなんとかしろと言え!!」

「無理ですヤッホイ」


 あ、ヤベ。ヤッホイ出ちゃった。ヤッホイはさておき、よく勘違いする貴族様がいるようですけど、僕らは精霊を従えているわけではないのです。マスターなどと呼ばれているのでややこしいですが、実際は主人などではなくよき隣人…友人関係が一番近いですかねぇ。力だってこちらは貸してもらっている立場なんですよ。お貴族様達のような態度で接したら、どんな精霊も力を貸してくれないでしょうね。最悪、怒らせてしまう危険性もあります。だからこそ僕らが緩衝材になるわけですが、面倒なんですよねぇ。


「そもそも、ぼ…私が通訳せずともグリムワンドは殿下の話を理解していますよ。その上で解呪をお断りしているのです」


 相棒であるグリムワンド…緑の中位精霊は頷きました。


「そうそう。できなくはないけど、約束したから無理なのよ。諦めて」


 グリムワンドはツンと王太子殿下と目を合わせようともしない。ふさふさな尻尾をゆったり揺らしている。グリムワンドはわりと機転が利くし気のいい精霊さんなので僕が本気で涙ながらに土下座するとか、お菓子で買収すればまあ……願いを聞いてくれないこともないです。僕がそれをしないのは、どう見ても王太子殿下に非があるからですよ。かなり詳しくイツキ君から事情を聞きましたからねぇ。僕自身のやる気がないんですよ。


 それに、僕はあくまでも『現国王陛下』に忠誠を誓っているのです。王太子殿下は僕の上司ではないので、命令を聞く義務はないのですよ。



「なんの騒ぎだ?」


「おや」


 これは珍しい。美しい漆黒の毛並みの魔族……確かエルセオルネ殿だ。


「廊下まで声が響いて……」


 そこでエルセオルネ殿が固まった。丸ハゲた王太子殿下に気がついたらしい。


「…………え?」


 王太子殿下もあまり丸ハゲを他人に晒したくなかったらしく、エルセオルネ殿を突き飛ばすと逃げ出そうとした。


「いいか、明日中には治せよ!!」


「だから無理ですってば」

「そうそう」


 正確には、できるけどやらないんですがね。のらりくらりとかわす僕にキレたらしい。


「貴様にどれだけ高額な給金を払ってると思っているんだ!?地味で無能な緑の精霊と魔術師ふぜいが、その態度はなんだ!?」


「………撤回してください」


「は!?」


「……………撤回してください」


 そっと殿下に触れた。


「さもなくば、永遠に鼻毛だけが伸びまくる呪いをかけます」


 いやあ、キレすぎると人間わけがわからない行動をしちゃいますよネ!僕、頭に血がのぼりすぎてますよ!緑の精霊は地味で無能なんかじゃないですよ!僕らがキレたらこの国は滅亡するんですからね!!この国が豊かなのはグリムワンドが頑張ってくれてるからもあるんですよ!


「!??」


「あー、緑の精霊は国のために重要かつ必要だ。王太子殿下も本気じゃない。カッとなっただけで、とてつもなく重要だなんて知ってるよな!?」


 エルセオルネ殿が必死だ。僕と殿下の間に入って必死に訴えている。殿下も発言のまずさに気がついたようだ。


「わ、悪かった……だ、だが貴様に借りを作ったなんて思っていないからな!魔族なんかに!!」


「……知ってるよ」


 どう見てもエルセオルネ殿に借りを作ったよね。今度こそ王太子殿下は逃げ出した。まあ、これでしばらくはうるさくないですね。結果オーライ!

 ちらっと見たら、エルセオルネ殿は悲しげに睫毛を伏せていました。なんかの彫像みたいに綺麗です。男なのに美しいとかスゴいですよね。でも、この顔…どっかで見たことある気がするんですよね。どこだったかなぁ?


「ところで、エルセオルネ殿は何をしにこちらへ?」


「ああ…魔王様の花嫁選定だ……」


「ああ………」


 もう三年か。選定だということは、今回の花嫁というか婚約者もお気に召さなかったらしい。大体三年に一度、魔王様に婚約者をあてがっているが、三年でいつも別れてしまうらしい。まあ、魔族に囲まれて暮らすとかマトモな神経の令嬢じゃ無理ですよね。貴族の令嬢って、偏見かもしれないですが箱入り娘がほとんどでしょうし。


「大変ですねぇ」


「わかってくれるか……毎度毎度泣き叫ぶ令嬢を送られてくるこっちの身にもなってくれ……」


「………………」


 思ったよりもエルセオルネ殿はマトモな神経の持ち主で、お疲れのご様子だ。チラッとグリムワンドに目で合図する。


「きゅう」


「フカフカ………癒されるぅぅ……」


 相当にお疲れのご様子だ。暫くグリムワンドのモフモフで癒されてからエルセオルネ殿と謁見の間に行くのだった。僕ももちろんモフモフしましたよ。ブラッシングしましたよ。

 鼻毛の呪いについて言いつけられたら困るから、陛下にちゃんと報告しておかなくてはね。それにしても、救いようがない方ですねぇ。鼻毛で窒息死したらいいのに。

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