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夢の中へ、夢の中へ

 メガ兄は本当にユーリフィアンへ長編大作と呼びたいほどに手紙を書いてくれた。しかし、これ本当に手紙なの?厚みがおかしいんだが。封筒がムチムチしている。一般的な手紙用ではなく、A4サイズがたっぷりと入る封筒にもかかわらず、だ。


「ええと……これ、本当に全部?」


「すまない…これでもだいぶ推敲したんだ……」


 メガ兄本人も長編大作だという自覚があるようだ。とりあえず、半分に割ってもポストに入らないほどぶあつい…とだけ言っておく。これ、どう贔屓目に見ても手のひらサイズじゃないわ…分割すべき?


「とりあえず、相談してみるわ。一気にはダメって言われたら分割でユーリフィアンに渡すから」


「ああ。ユーリフィアンによろしくな」


「兄さんの渡し終わったらボクに教えてな。ボクもユーリフィアンに手紙書くから」


「はーい」



 というわけで寝る準備。樹を潰したら洒落にならないから、枕元に錬金術でよさげな樹専用ベッドを作成した。


「ふかふかできゅ~」


 樹もベッドが気に入ってくれたようでなによりだ。


「おやすみ~」

「おやすみなさいできゅ」







 そして寝たら、またあの空間だ。ポッポに相談したら、すごい考えていたけど長編大作全編の持ちこみを許可してくれた。最初こそ変態で好感度はゼロどころかマイナスに振りきっていたポッポだが、最近根っこはいい奴だと思う。色々とセンスがおかしいが、優しいのだろう。


「………きゅ?これはまた、ハッキリした夢できゅねぇ」


「樹?」


「マスター!」


 夢に樹も入り込んでしまったようだ。まさか、枕元に居たから持ちこみ判定された!?


「違いまきゅ。樹とマスターは魂が接続した状態できゅから…これが魂の混線なんできゅね。樹、長生きできゅが初めて見たできゅ」


 樹は珍しそうにキョロキョロしている。


「優音!」


「ユーリフィアン!」


 な、なんか一日で元あたしの身体が可愛くなっている。髪は可愛く編み込まれ、パジャマも小田郡がプレゼントしてくれたものの可愛すぎてお蔵入りしていた奴だ。

 それとは逆に、あたしはジャージと三つ編み。美少女ユーリフィアンも残念な仕上がりである。女子力の差が明らかだな。


「優音、その書類は?」


 あたしが持っていたメガ兄の長編大作(てがみ)に気がついたらしい。そうだね。手紙よりは書類に見えるよね。


「メガ兄…クルメガネス兄様からユーリフィアンへのお手紙だよ。これでもだいぶ推敲したらしいよ」


「お兄様から?まあ…」


 ユーリフィアンは一枚一枚ゆっくりと手紙を読んで、ポロポロと涙を流した。あたしは背中合わせで座り、樹をモフモフする。


「おにいさまぁ……ぐしゅっ…」


 何から話すべきかなぁ?とりあえず、樹を紹介して……ユーリフィアンも向こうで大丈夫か聞きたいなぁ。


「優音、お手紙を持ってきてくれてありがとう。わたくしも小田郡様からお手紙を預かってますわ。お母様にはまだお会いできていませんの」


「そっか」


 ボケモンのペカチュウがプリントされた封筒には、見慣れた小田郡の字が書かれていた。母は…まあ、そうだろうな。最後に会ったのいつだっけか。とりあえず小田郡の手紙を読むことにした。


『優音殿へ

いきなりのお話で、この小田郡も正直困惑しております。ですが、優音殿がこの手のドッキリなどせぬことはこの小田郡、よぉぉく存じております。そしてユーリたんがあまりにも可憐なので、男前な優音殿とギャップが凄まじいのであります。とりあえず、優音殿は頭部を強打して記憶喪失になったことにいたしました。拙者、優音殿への恩返しと優しいユーリたんのために全力でユーリたんをお守りします!

追伸・根津殿がユーリたんの可愛さに困惑して愉快なことになっておりますぞ。それから、ユーリたんから色々色々と聞きましたぞ。優音殿ならば大丈夫とは思いますが、拙者からある意味バイオテロ的な最終兵器(リーサルウェポン)をお渡ししましたぞ。お使いくだされ』


 最後に頭を打ち付けながら『比留間が可愛いなんておかしい!』と叫ぶ根津が描かれていた。愉快なことって、コレか。


「こちら、わたくしはけっして中身を見てはいけないと渡されましたの」


 A4サイズの封筒には、小田郡が敬礼する姿が描かれていた。チラッと見たが、中には肌色が多いぺらぺらの本がみっしり。ある意味…これはある意味バイオテロだな!小田郡………恩に着る!無意味と知りつつ、絵の小田郡に敬礼した。腐った女子の仕返しは、時に一般女子よりも過激でえげつないのだ。かつてイジメを受けていた小田郡は、王太子の所業が許せなかったのだろう。この最終兵器は時を見て発動するとしよう。発動する機会がないことを祈るのみである。


「マスター、いつになったら樹をユーリフィアン様に紹介してくれるっきゅ?」


「あ、ごめん。この子は樹だよ」


「せ、精霊様!?」


「色々あって、契約しちゃった」


「え」


「しかも、王太子を丸ハゲどんにしちゃった」


「え、えええええ!?で、殿下を丸ハゲに!?」


「そこはどうでもいいや。メガ兄に手紙の返事を書いた方がよくない?明日はヤス兄の手紙を持ってくるよ。あたしも小田郡に近況報告兼ねて手紙を書くし」


「ううう…た、確かにあのお手紙へのお返事は今すぐにでもとりかからないと…今晩中に書けるか怪しいですわ」


 その後、互いに黙々と手紙を書いた。根津にも手紙を書くべきかなぁ……まぁ、必要なら小田郡が言うかな。


「…優音、わたくしの本棚…中央の右端…辞典のケース内にある小説を読んでみてくださいませ」


「…小説?」


「…はい。読んでみてくださいませ」


「わかった」


 そして、互いに手紙を書き終えて交換したところで目が覚めた。メガ兄へのお返事も長編大作だった。この短時間でよく書けたなぁ、ユーリフィアン……と感心してしまった。

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