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二回もざまぁされる予定の中ボス魔王妃様は自由に生きたい  作者: 明。


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貴方を許さない

 血縁上の父は王太子が居なくなったのを確認してから声をかけてきた。


「ユーリフィアン、そこにいるな。こちらへ来なさい」


 声が疑問系ではなかったので、渋々皆のところに出てきた。


「………………」


 ヤス兄があたしを庇うように前に立った。


「…どういうことですか?」


 メガ兄が血縁上の父を睨んだ。


「話をしたいだけだ。ユーリフィアン…いや、ユアン君にとって害があると思ったなら、昨日のように殴って止めるがいい」


 メガ兄がヤス兄に目くばせして、ヤス兄が渋々どいた。


「…君がユアン君、なのだな」


 あたしは素直に頷いた。


「…そうか、君が…そうなのか」


 確かめるような、噛みしめるような言葉にぼんやりと血縁上の父を見つめる。その瞳に悪意の色はなかった。


「ユーリフィアンの動向は、ずっと監視していた。ユーリフィアンの心を支え続けたのは『ユアン』という少女だ。ユーリフィアンはユアンに恥じぬ人物になろうと努力していた。だが、ユアンなどという人物はこの世界のどこにもいない。てっきりユーリフィアンが度重なる心労と重責から逃避するため、自らの中に作り上げた虚像なのだと思っていたが……君は異界にいたのだな」


 つまり、あたしの動向も監視していたということかな?しらを切っても無駄だろう。あたしは続きを促した。


「で、心労の原因その一が虚像ではないあたしに何の用ですか?」


「君に、感謝を」


「……………………………は?」


 感謝を?何故??


「君は、私を父とは思えないだろう?」


「はい」


 まっったく思ってませんな!


「それでいい。君は私を許さないでくれ。だが、それとは別に君のユーリフィアンへの献身に報いたい。君の縁談は君が決めなさい。私は家の都合で結婚をおしつけないと約束しよう。また、何かあれば言いなさい。君が望むなら…流石に民が苦しむような事は無理だができる限り叶えよう。もちろん、これはユーリフィアンへの贖罪とはまた別物だ」


 血縁上の父は、思ったよりはずっとマトモな人物であったらしい。彼女の記憶でも、父は領民に尽くす高潔な人物だった。


 だが、ユーリフィアンにしてきた仕打ちは容認できない。容認できない、が……少しだけは情けをかけてもいいかもしれない。優しいユーリフィアンはこの男を許すだろうし、きっと喜ぶだろう。だから、そう。これはユーリフィアンのためなのだ。


「ユーリフィアンに謝罪したいなら、手紙ぐらいは渡せます。まだ私とユーリフィアンは繋がっている。ただ、兄達の手紙が優先ですし、私が渡し忘れる可能性もありますけどね」


「あ…………あり、がとう……」


 静かに涙を流す血縁上の父。まあ…今すぐは無理だけど、いつかは許せる日が来るかもしれない。


「……マスターをいじめていたんできゅか?」


 樹がめっちゃ血縁上の父を睨んでいる。


「…ああ、そうだ。正確には、この子の親友を」


 いやいやいや!くそ真面目に答えるなよ!ああもう、仕方ない!


「樹、あたしは嫌なことをされたら、自分で仕返しする。他人任せになんかしない。だから、手出し無用だ!!」


「んん…じゃあ、さっきのハゲも余計なことできゅ?」


「んー、まあ、アレは……反省してないし、いい薬なんじゃね?むしろ、よくやった」


「じゃあ、ボクお城の精霊達に呪いを解かないように念のためお願いしてくるできゅ!」


「うん、頼んだ!」


 せっかく樹が不毛の地にしたのだ。すぐ解呪されてはつまらない。ただのハゲだ。命に別状はないし、嫌がらせとしては素晴らしい。あたしが許可すると、樹は走り去った。


「…クルメガネス、オコシャス」


「……はい」

「…なんですか」


「本当に、すまなかった。悲しみと怒りで目が曇っていた。お前達が正しかった。辛い思いをさせて…すまなかった」


 深々と頭を下げる血縁上の父。メガ兄は穏やかな瞳をしていたが、ヤス兄が爆発直前の火山みたいになっている気がする。


「………で?そんなペラい謝罪ごときで今までがチャラになるわけないですよね?ユーリフィアンをどれだけ傷つけました?ボク、あんたを許さへん。こんな奴が父親やなんて最低や!」


「……ヤス兄、泣かないで」


 彼に渦巻くその感情には、覚えがある。ヤス兄が本当に怒っているのは、あの男に対してじゃない。


「あたしも、同じだから。あたしもずっと、ユーリフィアンを助けたいと願っていたよ」


 きっと、誰よりそう思ってた。無駄なのはどっかで理解していたけど、体を鍛えて……ユーリフィアンの代わりに虐められてた女の子を助けたりした。本当に、ヤス兄とあたしは似てるんだな。兄妹なんだなって思うよ。


「ボク、遅すぎたんやな」


「…少し時期が早まっただけだし、とどめを刺したのは王太子だよ。あたしも多分、ヤス兄とおんなじ」



 ユーリフィアンを助けたかった。

 あたし達が本当に許せないのは、ユーリフィアンを助けられなかったあたし達自身だ。



 彼女は、それを知らない。ねえ、ユーリフィアンが笑うなら、あたしはなんだってするよ。本当は、ユーリフィアンの側でユーリフィアンを守りたいんだ。

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