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第一部 第一章 第二節 内務省陰陽庁


 大日本帝国に存在する呪術・魔術管理機関、陰陽庁の庁舎があるのは東京都上野であった。

 名前から神社仏閣風の建築物を想像してしまいがちだが、鉄筋コンクリートで造られた庁舎の外見は他の官庁庁舎と変わらない現代的なものだ。

 古くは江戸城の鬼門を守る寺として、上野一帯に広大な土地を有していた東叡山寛永寺の元敷地の一角に、陰陽庁庁舎は立っていた。寛永寺の元敷地には、他に東京国立博物館や上野動物公園を含む上野恩賜公園がある。

 現代では、この陰陽庁が宮城(きゅうじょう)の鬼門を守るものとして存在していた。

 陰陽庁長官の土御門晴重(はるしげ)は、霞ヶ関の内務省庁舎で行われていた会議から戻ると、自身の執務机に付いた。

 かの有名な陰陽師、安倍晴明の末裔である土御門家当主の男は、出された湯飲みから茶を啜ると、一息つく。

 パソコンを立ち上げてみると、会議中に送られてきたと思われる部下からの報告メールが何通も存在していた。加えて、彼の決裁を待つ書類が机の上の決裁箱に積まれている。

 「森羅万象文書(もんじょ)主義」と皮肉られる日本のハンコ決裁中心主義が、二十一世紀になっても未だ続いているのだ。

 陰陽庁は日本の呪術・魔術全般を管理・統轄する機関であるため、必然的に仕事量は多くなる。日本を走る龍脈の乱れは霊的災害(霊災)に繋がるため常に監視は怠れず、魔導犯罪も後を絶たない。

 特にここ十年近くで急増しているのは、魔導詐欺と呼ばれる幻術を利用した詐欺である。

 内務省での会議も、魔導犯罪に対して警察との連携をどのように図っていくかという内容が主な議題であった。

一部の有識者の中には、陰陽庁を陰陽省に格上げしてはどうか、という意見が出ているようだが、世論の反対は根強く、実現はまだ先のことだろう。

 まったく、先人たちも余計な負債を残してくれたものだ、と土御門は恨めしく思う。






 日本が、あるいは世界が今のような在り様になってしまった原因をどこに求めるかと問われれば、それは恐らく一九一四年に勃発した第一次世界大戦と答えることになるだろう。

 少なくとも十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて、著しく発展した科学は人々に“科学万能主義”ともいえる幻想を抱かせるのに十分なものであり、そこに魔術が入り込む余地など存在していなかった。

 魔術は過去の遺物であり、非科学的であり、オカルト的であり、また西洋人の大半が信じている宗教の教義にも反していた。

 それらが一変してしまったのは、ひとえに第一次世界大戦の影響であった。

 総力戦となったこの戦争は、軍事力だけでなく国家の持つ人的資源、経済力、工業力、科学力、政治力、思想のすべてを戦争に動員する結果を生み、その中には魔術も含まれていた。

 近代以降、非科学的とされてきた魔術が初めて再評価された瞬間でもあり、それは同時に欧州大陸全土に深刻な荒廃をもたらす結果となった。

 大気・大地の霊子は根こそぎ資源として扱われ、欧州大陸の龍脈は荒れ果てた。戦後残ったのは、霊的安定を欠き、霊災の頻発する大地であった。

 日本も日英同盟を理由に参戦したこの戦争で、金剛型巡洋戦艦四隻を始めとする援英艦隊、陸軍も万単位の部隊を欧州へと派遣しており、総力戦、そして一部では魔術戦となったこの戦争を肌で体験していた。ドイツ海軍のUボートに沈められた日本の輸送船も多い。

 第一次世界大戦の総力戦的側面に早くから着目していたのは帝国陸軍であり、彼らは同時に魔術戦という側面にも注目していた。

 そして、総力戦体制確立のために内閣総理大臣の下に軍需局が設置されるのと同時に、陰陽庁の前身ともいえる陰陽局が発足する。

 一方、大戦後の欧州では同盟国イギリスが日本の支援を受けながら荒廃した龍脈の安定化を図ろうとしていた。日本の戦後支援は第一次世界大戦の影響と龍脈荒廃の調査という意味合いが強いものであったが、大戦の結果、落日の老帝国としての姿が確定的となったイギリスにとって他の欧州諸国に先駆けて霊的復興を遂げられることはそれなりに意義のあることであった。少なくとも、霊災の頻度低下はそれだけ戦後復興を早めることに繋がるからだ。

 両国の利害関係の一致は、そのまま日英同盟の存続にも繋がった。英国は優れた龍脈を持つ日本という魔術国家を自陣営に留めることが出来、日本もまた中国大陸での権益をイギリスと共に擁護することが出来るからだ。戦後処理を巡って英米が対立しつつあった国際情勢においては、なおさら同盟の維持は重要であった。

 一方で、戦後に開かれたワシントン会議を始めとする各種国際会議では、常に魔術の問題が付いて回った。そして、一九二五年のジュネーヴ議定書によって毒ガスや細菌兵器と共に魔術の戦場での使用が一切禁止されることになるに至ったのである。

 しかし、日本国内においてその議定書は平穏をもたらさなかった。

 日本国内では明治維新によって排除された陰陽師勢力が陸軍と結びついて復権運動を起こし、一九二九年の世界恐慌による経済不安は、彼らと国家改造を目論む一部の陸軍勢力、右翼勢力とを結びつける結果となったのだ。

 それは、一九三六年二月二十六日、高度国防国家・高度魔導国家の成立を目指す陸軍将校、陰陽師、右翼勢力たちによるクーデター未遂事件という結末をもたらした。

 後に二・二六事件と呼ばれるこの反乱自体は数日後に鎮圧されたが、事件が日本に与えた影響は大きかった。一部の反乱部隊は明治憲法にある統帥権条項を盾に降伏勧告に応じず、ついには天皇自らが「朕自ラ近衛師団ヲ率ヒ之ガ鎮定ニ当タラン」とまで宣言する事態となった。それは、皇軍相撃という悲劇をもたらすとともに、日本国民に明治憲法の根本的欠陥を知らしめることになったのだ。

 明治憲法はその後、一九四〇年代になって天皇大権の発動によって改定されているが、国民が陸軍、そして陰陽師に向ける目を厳しくする結果をもたらしたことだけは間違いなかった。大正デモクラシーから連綿と続いてきた大日本帝国の民主化の流れは、それに逆行しようとする動きを許さなかったのだ。

 同時にこの事件は、天皇自らが反乱鎮圧に乗り出したことにより、陸軍全体の政治的発言力、権威の大幅な低下をもたらすことになった。

 一九四三年から一九四六年にかけて行われた太平洋戦争は、基本的に海軍の戦いであったこともあり、政治勢力としての陸軍、陰陽師は衰退の一途を辿ることとなった。

 日本国民が海軍と海軍出身の政治家に向ける信頼に比べると、陰陽師を始めとする国家祓魔官への信頼度は相対的に低いのだ。






 それでも、と土御門は思う。

 我々陰陽師は国家のために尽くすべき存在だ、と。霊災や魔導犯罪から国家国民を守るという使命は、自分たちにしかこなせないものなのだ。国家へのご奉公に、称賛その他の見返りを求めてはいけない。

 土御門は何気なしに部下からの報告メールに目を通していたが、一つだけ気になる報告があった。おや、という表情を浮かべ、報告者を呼び出す。

 その人物は、陰陽庁東京本部本部長であった。

 東京本部は、警察庁の警視庁と同じく、東京都を管轄区とする陰陽庁最大の組織であり、帝都東京の霊的安定を担当する陰陽庁最重要部署の一つである。退官後は警察庁長官や警視総監、陰陽庁長官と同じく、貴族院議員の地位が保障されるほどの役職である。

 事実上の陰陽庁ナンバーツー、そう言われるのが陰陽庁東京本部本部長という地位であった。


◆   ◆   ◆


「で、これはどういうことだ?」


 責めるというよりも、純粋に不思議がる口調で土御門は尋ねた。


「ああ、それか」


 組織上は彼の部下ということになっている東京本部本部長の賀茂憲行(のりゆき)は、平然と応じた。


「例の“魂食い”の案件、〈白銀の魔女(遠野沙夜)〉とその眷獣が捜査要員に加わっているのはどういうことなのだ、憲行?」


「なに、有坂祓魔官が言ってきたのでな。加えたほうがよかろうと思っただけだ」


 陰陽学園時代の同期生である二人は、周囲に誰もいない場所では自然と砕けた口調での会話になる。


「有坂祓魔官には別件の捜査があるところを、無理言って“魂食い”の案件の捜査に協力してもらうことになったからな。流石に助手が必要だろう」


「ああ、例の国際魔導犯罪者の捜査か」


「正直、優先順位としてはそちらの方が上だからな」賀茂は言う。「我が国は魔導犯罪防止条約に批准している。解決出来なければ、帝国の国際的信用に関わる」


 彼の言う「魔導犯罪防止条約」とは、違法な魔導実験の禁止、黒魔術(呪詛など他者に害を与える魔術の総称で、明確に「黒魔術」という形式の魔術が存在するわけではない)の禁止などを定めた国際条約である。

 絶滅の危険のある野生動植物や、各国に棲息する魔族の保護と国際取引を禁止したワシントン保護条約(海軍軍縮などを定めた一九二二年のワシントン条約とは別物)と同様に、魔導犯罪の定義に国際基準を与える条約であった。

 例えば、人造人間(ホムンクルス)を製造しての人身売買などは明確な魔導犯罪防止条約違反であるし、魔族・魔獣などの密猟はワシントン保護条約違反であった。特に魔族の中でも龍族については、その牙や骨が魔術的な道具として利用出来るので、世界各地で密猟が絶えない。そのため、アイスランドなど龍族棲息地域を持つ国々ではたびたび問題になっている。


「なるほど。それで、〈白銀の魔女〉の出番というわけか」


「有坂祓魔官曰く、あの眷獣の鼻は捜査で十分に役立つだろう、とのことだ。実際、これまでにも我々はあの鼻に助けられている」


 同期生の表情を、土御門は注意深く観察した。付き合いが長ければ、目の前の学者然とした男の内心を読むことなど、たやすいことだった。


「……まあ、公式にはそういうことにしておこう。役に立つ人材であることは確かだからな。で、裏の理由は?」


「まあ、二つだろうな。一つは最も狙われやすい学園の警備を彼女に任せるため」


「妥当だな。学園の教師陣の中で、彼女ほど実戦経験に富んだ人間もいない」


 首都圏において“魂食い”に最も適した場所は、清州の陰陽学園なのである。だからこそ、学園の警備を任せられるだけの魔術師が必要となる。


「で、もう一つは?」


「魔女の利用価値を我々に示すため、というところだろう。あの娘は、元はと言えば両親殺しの犯罪者だからな」


「まあ、事件の状況を見る限り、情状酌量の余地は多分にあると思うがね」


「それでも、当時の公安部があの娘を犯罪者として扱っていた事実は変わらんよ」


「陰陽庁の暗部に関わる話だ。あまりその件には触れん方がいいだろう」


 苦い表情と共に、土御門は言った。


「同感だ」


 賀茂は頷いた。そして、何事もなかったかのように話を続ける。


「取りあえず、有坂祓魔官からは定時連絡を受けるようにしている」



「それで、片付きそうなのか、この案件?」


 深刻そうな口調で、土御門が問うた。


「すでに被害者は数百名単位で出ている。最初は小中学校での集団食中毒だと判断された所為で、初動捜査に大幅な遅れが出ているからな」


 “魂食い”といえば物々しい印象を受けるが、要は霊力の奪取である。また、霊力を持たない一般人であれば精気(生命力)が奪われる。度が過ぎれば死に至り、また実際に心臓を喰うという類の“魂食い”も存在するが、今回の事件は広い範囲で少量の霊力・精気を奪っていくという類のものであった。

 故に、最初は食中毒や集団感染などの体調不良として扱われていた。

 それが“魂食い”の疑いありとされ、陰陽庁の捜査員が派遣されたのがようやく二日前のことであった。公式に集団食中毒事件が“魂食い”事件として認められたのは、昨日のことである。

 これにより、管轄が厚生労働省から内務省へと移されたが、縦割り行政の弊害が生じていることは否めない。


「現在は犯人にこちらがまだ“魂食い”を把握していないと誤認させるため、報道発表はされていないが」賀茂はぶすりとした口調で言った。「“魂食い”が発生したと疑われる地域が広すぎる。これでは陰陽庁が機能不全を起こしかねん」


「だからこその、有坂祓魔官、そして魔女とその眷獣の投入か」


「まあ、そのための独立祓魔官制度だ。あの男とその式神、それに魔女と眷獣の組み合わせであれば、平凡な能力しか持たぬ公安の祓魔官百人分、いやそれ以上の働きはするだろう」


 陰陽庁は警察庁と同じく、内務省に所属する組織である。独立祓魔官という地位は、陰陽庁長官直轄を意味した。基本的に魔導の適正は遺伝によるため、優秀な祓魔官は数が限られる。そのため、一つの部署に固定で配置するのではなく、機動的に動くことの出来る独立祓魔官制度が創設されたのである。

 遠野沙夜は、そうした数少ない独立祓魔官の一人だった。緊急時以外は、清洲陰陽学園の講師として勤めている。同時に、学園の霊的警備も彼女の任務の内の一つなのだ。


「同感だな。そうなると、事件解決も時間の問題か」


「だといいのだがな」と、賀茂が釈然としない口調で言った。「なあ、晴重。これほどの広域魔導犯罪、そして霊力の奪取。一体、犯人の目的は何だと思う?」


 その言葉を聞いた途端、土御門が渋面を作った。


「神国派、か?」


 重苦しい息と共に、彼はその言葉を発した。

 “神国派”とは、特定の派閥や集団を指す言葉ではない。一九三〇年代に高度魔導国家の成立を目指した過激な国家改造思想を持つ魔術師たちと、その思想に共鳴する者たちの総称である。

 数年前にも、陰陽庁関係者が神国派に関与したとして逮捕されており、官民問わずその思想に共鳴する人間は、二・二六事件から八〇年近く経った今でも後を絶たないのだ。


「神国派が帝都で大規模な事件を起こしたのは、八年前、そして一年前だ」賀茂は言った。「そして、そのたびに霊災、ないし広域魔導犯罪が帝都周辺で発生している」


「現状、その兆候はあるのか?」


「これといった確証はない」

 賀茂は首を振った。


「要するに、この事件の犯人が、奪取した霊的資源をどう使おうとしているかが不明だからこそ、そうした懸念が出てくるわけだな?」


「その通りだな」賀茂は頷いた。「その場合、単に“魂食い”だけを警戒すればいいというわけにもいかん」


「だとすると、学園だけを警備すればいいというわけにもいかんぞ」


「その通りだ。そして、我々の持つ人的資源はそれほど豊富ではない」


 賀茂は壁に掛けてある首都圏の地図に近寄った。


「“魂食い”だけならば、最重要警備対象は清洲の陰陽学園だけで済む」


 彼は江東区の南に浮かぶ埋立地を指差した。


「まあ、もっとも個人を標的に襲うようになれば、対処は難しいがな」


 首都圏に在住する国家祓魔官や民間祓魔師、さらに学園の生徒とその家族全員を警護対象とするなど、非現実的である。もしそうなった場合、どうしても対応は後手に回るだろう。

 霊的治安の維持に責任を負う陰陽庁としては、悪夢に等しい事態である。

 それでも、賀茂はさらに言葉を続けた。


「だが、もし神国派が帝都で大規模な事件を起こそうと考えているならば、宮城にとって鬼門であるここ、上野の陰陽庁、そして」


 上野を指している指を、賀茂はその反対側へと持ってきた。


「裏鬼門、芝の輪王寺宮(りんのうじのみや)邸の警備も必要になってくるだろう」


「宮様にご迷惑をおかけするわけもいかん」重苦しい口調で、土御門は言った。「しかし、皇室尊崇を掲げる神国派が殿下のお屋敷を狙うとも考えづらいが……」


「それに、有坂祓魔官の本来の任務は、輪王寺宮信久(のぶひさ)王殿下とそのお屋敷の警護、つまり裏鬼門の守護だ。今は宮様の好意でこちらに回してもらっているが、万が一の場合には彼をそちらに回せばよい」


「結局のところ」溜息をつくような調子で土御門は言った。「“魂食い”の段階で犯人を確保出来れば最善、そういうことだろう?」


「だとしても、警戒しておくに越したことはない。一度奴らが決起すれば、こちらもそれ相応の損害は覚悟せねばならんからな」


 事実、八年前の事件では一等祓魔官という、祓魔官として最高級の技量を持つと国家から認定された職員たちが多数、殉職している。


「判った。引き続き、公安部や霊災部、龍脈部の連中と連携して、神国派への警戒は続けてくれ」


「了解だ。だが、いざという時は、我々も現場に立たねばならんだろうな」


 共に一級祓魔官の階位を持つ二人の陰陽師は、重々しく頷き合った。






 賀茂が去った執務室で、土御門はもう一度、東京本部や公安部と呼ばれる陰陽庁第一部からの報告書に目を通し始めた。

 “魂食い”の発生場所、時期、規模……

 念のため、内務大臣と警察庁長官には話を通しておくべきだと思った。

 帝都での不祥事を陰陽庁が見過ごしたとなれば、自分は宮城前で腹を切らねばならないだろう。そう思ってもいた。


 内務省は現代日本では馴染みのない官庁かもしれませんが、戦前は内務省官制によって「内務大臣ハ地方行政、警察、監獄、土木、衛生、地理、社寺、出版、版権、戸籍、賑恤オヨビ救済ニ関スル事務ヲ管理シ中央衛生会、警視総監及地方官ヲ監督ス」と定められていました。

 その後、社時局は神社局と宗教局に分離し、宗教局は文部省の管轄になりました。また、日中戦争に伴う戦時体制の確立によって所管事務が拡大したため、社会局の行政と衛生行政を併せて厚生省として独立しました。

 現実世界では東京都の管轄である警視庁も、内務省が存続していることから内務省の管轄となります。

(参考文献:秦郁彦編『日本官僚制総合辞典 1868-2000』東京大学出版会、2001年)


 二・二六事件とその後の日本の変革についてですが、この世界では日英同盟が続いていたこともあり、ロンドン海軍軍縮会議は史実ほど海軍内部に政治的対立を生じなかったという設定です。

 そうなると、二・二六事件の際に海軍大臣となっているのは山梨勝之進である可能性が出てきます。

 史実ではロンドン会議後の海軍省と軍令部の対立によって海軍省優位体制が崩壊しますが、そうしたことがなかった場合、反乱の鎮圧に動こうとした横須賀鎮守府の米内光政長官と井上成美参謀長を軍令部が制止することが出来なくなり(史実では制止された)、海軍陸戦隊による反乱軍への攻撃、鎮圧という動きが起こった可能性があるのです。



 さて、陰陽師といえば安倍晴明というのが、多くの人たちのイメージなのではないでしょうか。

 本作でも他の同じテーマの作品と同じように、彼の子孫である土御門家の出身者が日本の魔術界のトップに立っていることになっています。

 しかし、戦前の陸軍内部で長州閥を排除することを目論んだ中堅・少壮将校たちのグループである木曜会が存在したように、必ずしも陰陽庁全体がこの状況に納得しているわけではありません。それは追々描いていこうと思います。


 また、本話において「輪王寺宮」という宮家が出てきますが、これは実在した宮家の名称をお借りしたもので、最後の輪王寺宮であられた北白川宮能久親王殿下のお血筋とは無関係です。それも、追々描写いたします。

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