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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、もふもふライフ
98/144

P98 スインさんも参加する事になった

 ノリスさんから服の完成報告も貰って、イベントの準備も整ったのでわたしは今日も朝から空を飛んでいる。目的地は王都だ。

 今回のイベントはルルの街でやるのでラライア姫とコタビをこっちに輸送しなければいけないからね。あの二人がいないとイベントを開く意味が半減してしまう。


 パパッとお城に着くと、いつものわたしの出入り口の窓はちゃんと閉じてあった。


「よしよし、しっかりと言う事を聞いて閉めてあるね」


 この前来た時には寒いのに開けてあったからね。二人してミノムシみたいに布団にくるまれている姿を浮かべると今でも笑える。

 あれはあれで可愛かったから、あのまま放っておいても良かったけど、可愛さより体調管理の方が大事だ。健康に勝るものは早々にない。

 いや、わたしに限って言うのなら、健康よりも大事なゲームがあるんだけれどもさ。元の世界じゃ風邪だろうが何だろうがやり続けてたわけだからね。でも、この世界にはわたしが好きなゲームはないから健康第一だ。あとお金。甲乙つけ難い差である。


 そんな事を考えつつ、ラライア姫の部屋の窓をトントントンっとノックをする。


「わたしがきーたよっ! あーけてっ! って、うわぁ!?」


 扉がバンっと勢いよく開いたかと思ったらスインさんが飛び出してきた。


「あわわわわー! 落ちるー! 落ちますー! 誰か助けてくださーい!」


 飛び出してきたスインさんはそのまま絨毯の上に転げ乗って、じたばたと手足を動かしながら助けを求めている。

 まるで、ひっくり返った亀の様だ。


「いやいやいや、落ち着いてスインさん。ここ絨毯の上だから、地に足は着かないけど落ちる事はないから」


「あ、あれ? あ、これは女神様、おはようございます!」


「うん、おはよ」


 じたばたと暴れていたままの状態で手足だけピタッと止めて、転がったままわたしに挨拶をしくるスインさん。

 落ち着いたのはいいけど、体勢そのままでいいのかメイドよ。暴れていたせいで、服が乱れているぞメイドよ。仮にもわたしは客の部類に入るんだからしっかりしなよメイドよ。


 それにしても、相変わらず慌ただしいスインさんだね。まぁ今回ばかりは扉から飛び出してくれば誰だって慌てるよね。普通は落ちるもんね。

 問題は、何故、窓から飛び出してきたのかだよね。普通は飛び出してこないもんね。

 この窓から飛び出していく普通じゃないのはわたしくらいだ。わたしの真似をよくするコタビも、流石に真似はしないんじゃないかな。


「スイン大丈夫ですの!?」


 スインさんが窓から飛び出した事でラライア姫が心配して様子を伺いに来た。


「女神様が居たので大丈夫でした! 危うく落下して足首を捻るかと思いましたよー!」


 絶対捻るだけじゃ済まない高さだよ。軽く命の危険すらある高さだよ。人間の身体はそこまで頑丈に出来てないぞ。

 わたしは多分無事だけどね。巫女服があるから。無くても魔法で何とかなるし、何とかする。


「んで、なんでスインさんが飛び出してきたの?」


 部屋に入って一息ついたところで、先ずは気になっていたことを聞いてみる。


「いやあ、女神様がいらっしゃったので窓を開けようと歩いたんですけど、ちょっと自分の足に自分の足を引っかけて転んでしまいまして……あわわ……」


「不器用なのに器用なこけかたをしたもんだね……」


 窓を開けるというモーションを起こすだけでなんで足がもつれて転ぶんだ……。普段生活している中でも何回も転んでいるんじゃないか、これ。


「女神様が来ました! 私がいきますね! って駆け出すからいけないのですわ」


「そうなの。普段から食器を割ったり、壺を割ったりしているのに、急に走ったりなんてしたらそうなる事は目に見えてるの」


「普段から散々だね……」


 流石スインさん、期待を裏切らない慌てた生活をしているみたいだ。子供二人、しかも主人であるラライア姫にまで注意される有様とは、メイドとしてちゃんと働けているのだろうか。いや、働けてないか。疑問に思うまでもなく分かり切った事だったよ。


「いつも気を付けているんですけどねー。なんでなんですかねー。気が付いたら、何かしらやっちゃったんでするんですよねー。不思議です!」


 まるで反省していないかのように、まるで他人事のようにのほほーんと語っている。大丈夫かこの人。一回、ベテランメイドに指導、いや、調教された方がいいんじゃないか。


「あ、そうだ! 良い事考えた! 本当はラライア姫とコタビだけのつもりだったんだけど、良かったらスインさんも一緒に行こうよ!」


 スインさんを連れて行って、ノリスさんに押し付けよう。きっと、喜んでスインさんをベテランメイドにまでレベルアップさせてくれるはずだ。


「国王様から女神様の用事を最優先にと言われているので、天国でも地獄でもどこでもご一緒いたしますよ!」


 天国も地獄もどっちも死後の世界じゃないか。なんで一緒に死ななきゃいけないんだ。生きさせてよ。

 っていうか、国王から女神優先って言われているのなら、わたしはもうこの国で何やっても許されるのでは。やりたい放題じゃん。自由じゃん。最高じゃん。……まぁそんなする事ないんだけどね。

 目立たずにのんびり暮らせたらそれでいいからね。手遅れだけども。


「それで、ツズリ様、どこに行くつもりなの? ツズリランドに巨大ツズリ様像を建てに行くの?」


「建てないよ! 大金を積まれても絶対に建てないよ!」


 コタビはまだわたしの像の設立を諦めてなかったのか。諦めの悪さまでわたしの真似をしなくていいものを……。万が一作ったとしても秒で壊しに行かないとだね。


「では、オフロ文化を広めるために王都の真ん中でオフロに入って、オフロの布教をしに行くのですわね!」


「そんな恥ずかしい事しないよ! お風呂は好きだけど、裸を晒すのが好きって訳じゃないんだからね!」


 どうして大衆の面前でお風呂に入らなければいけないのか。そこまでしてお風呂文化を広めようとは思わないよ。そもそも、広めようともしていないしね。広めるならもふもふの重要性を広める。

 この子たちはわたしを辱めたいのか。像やら裸やらなんでわたしが恥をさらさなければいけないのか。もっと女神の身体を大切に扱って欲しいものだ。


「ってか、行き先言ってなかったっけ?」


「言ってないの」


「言ってませんですわ」


「今日、ルルの街で皆でイベントする予定だったんだけど、それも言ってなかったっけ?」


「何も聞いてないの」


「何も聞いていませんですわ」


 どうやら、連絡をしていなかったらしい。らしいというか、連絡を怠ったのはわたしなんだけれどもさ。

 この世界、ネットがないからパパッと連絡する手段がないのが不便だ。かといって、手紙を送るくらいなら、わたしが飛んだ方が早いから送る気にはならない。


「ルルの街で皆で飲食店をします! 日にちは今日です! ちゃんと準備してね!」


「当日じゃ何も準備できないの!」


「ごもっとも!」


「何回もこちらに来ているのですから、そういう事は早めに言って欲しいですわ!」


「それもごもっとも!」


「事前に言っておいてくれたら、私も転ばずにすみました!」


「それはごもっとまないよ! わたしが来ても来なくても普段から転んでるんでしょ!」


 スインさんが転ぶのまでわたしのせいにしないで欲しい。スインさんの特殊能力であってわたしは全くの無関係だ。


「それにしても、女神様は意外とおっちょこちょいなんですね! 私、女神様の血が混ざっているからこんなにおっちょこちょいなのかもしれません!」


「だから一緒にしないでよ! わたしはスインさん程おっちょこしてないから! おっちょこレベルの差じゃスインさんの方が上だから!」


 転生してきたわたしの血がこの世界の人の誰かと混ざっている訳がない。誰かから産まれたわけでもないから、純性のツズリ血だ。世界にったった一人の血筋だよ。

 あれ、そう考えると、わたしっていったい何者なのだろう。転移なら元の世界で産まれたっていう事実が残っているけど、転生、しかもゲームの身体でってなると、もはや人造人間も良い所なのでは。

 神が創りし人造人間ツズリ……。わたしは何者……。そもそも、何者なのかすら怪しくなってくる。


「コタビも急におっちょこちょいになった気がするの! 何もない所で転んじゃうのー! コタビもツズリ様の血が混ざってるかもしれないのー!」


 わたしが自分がナニモノなのかを考えていると、何故か、コタビが転げ始めた。スインさんがわたしの血が混ざっているとかいうから、コタビが羨ましがって真似した居るんだろうね。


「わ、わたくしも何もないところで転びますわー!」


 そして、宣言してから転び始めるラライア姫。計画性溢れ過ぎていて、おっちょこレベルはまごう事なきゼロである。


「なーにやってんのー二人とも! 転んだからってわたしの血が混ざる事になんてなる訳ないでしょ! そもそも、わたしは転ばないからね!」


「あ、ツズリ様笑ったの! さっき暗い顔して悩んでたから心配だったの」


「世界でも滅ぼそうかと思うくらい深刻な顔をしてましたわ」


 ふとしたことで自分がナニモノかを考えていたのが顔に出てしまっていたようだ。すぐ顔に出るわたしの悪い所で、二人を心配させてしまっていたみたいだね


「流石に世界を滅ぼそうだなんて悩んではいなかったけど、でも、ありがと。二人のお陰で悩みなんて吹き飛んじゃったよ!」


 自分がナニモノかなんて、どうでもいいことじゃないか。大事なの今だもんね。

 今、わたしがここにいて、仲の良い大切の友出来て、そしてもふもふイベントが待っている! 悩んでいる暇なんてわたしにはないのだ!


「いよーっし! それじゃあ、早速だけど移動しよっか! 皆、絨毯に乗ってねー!」


「はいなのー!」


「はいですわー!」


「わかりましたー!」


 なんだろう……。スインさんは大人のはずなのに、コタビ達同様に子供のように感じてしまうのは何故なんだろう……。

 コタビとラライア姫は慣れたもんで、窓からひょいひょいっと絨毯に乗り込んでくる。部屋から出ると、外は寒い季節だから、皆しっかりと厚手の上着を羽織っている。

 絨毯の上はわたしが風魔法でバリア張ってあるし、バリア内を温める事だって出来るから、寒く感じる事はないと思う。。

 そしてスインさんはというと……。


「あ! あわわわー! 落ちるー! 落ちますー!」


 窓枠に足を引っかけて盛大に顔から絨毯に落下して、来た時と同じようにじたばたと慌てている。何か行動する度に、何かしら慌てなければ気が済まないのかな。


「もう、スイン! 落ち着きなさいですわ! 絨毯の上なのだから落ちませんですわ!」


「あわわわー! あ、そうでした! 私、落ちません!」


 スインさんがじたばたしたままの状態で、キリっとした顔になり、どや顔で落ちません宣言をしている。

 いや、だから一回態勢を整えなよ……。どうしてそのままの状態で落ち着くんだ。


「スカートが捲れてパンツが丸出しなの。はしたないの」


「あわわわー! 申し訳ないです! お見ぐるしいものを!」


 コタビに注意されたスインさんは素早い速さで正座に座りなおした。

 これじゃあもうどっちが子供か分からないね。


 スインさも落ち着いたところでわたしは絨毯を動かして王都を出発した。


「はーい、とうちゃーっく!」


 ラライア姫達を連れて、いつものようにルルの部屋の窓から入る訳にもいかないので、今回は珍しく屋敷の前に着地した。


「王都以外の街に来るのは初めてですわ!」


「コタビは前に来たことがあるの。でも、その時は馬車での長旅だったから疲れちゃうの」


 ラライア姫を連れて移動した事があるのはツズリランドだけだから、ここが初めての見知らぬ街だ。きょろきょろと辺りを見回している。

 コタビはわたしを迎えに来たこともあるから、わたしが知っている限りでは二回目だね。まぁあの時は街の外で待っていたから中には入ってないだろうけどね。


「あわわわわー! 空を飛んで移動するなんて初めてでしたので、足ががくがくしてます! まともに歩けないです!」


 スインさんはというと、絨毯を降りてから泥酔しているんじゃないかと思うくらいの千鳥足でよろよろと歩いている。


「よくその歩き方で転ばないね……。普段は何もない所でも転ぶのに……」


「スインは普段はポンコツなんですけれど、何かしらのマイナス効果があると器用に対応できるのですわ」


「でも、マイナス効果が既にマイナスだから、器用になってもプラマイゼロなの。意味ないの。この状態で壺を持たせても絶対割るの」


 デバフ状態になるとやっと本気が出せるみたいなスキルだな……。これはこれで、使い道があるスキルではあるんだけどね。勿論、ゲームではだけども。

 スインさんの場合は結果が変わらないから意味がない。普通に歩いても転んで壺を割る、千鳥足状態になっても転びはしないけど千鳥足だから壺を割る。

 うん、意味がない。


 スインさんのあわあわ千鳥足を見ていると、屋敷の玄関が開いてルルの父親でありこの街の領主であるハセンさんが出てきた。後ろには執事のロランさん他メイドさんも付いて来ている。勿論、ルルも一緒だ。


「ラライア・フォルグナス・アーベラル姫様、この度は私の街にご足労いただきありがとうございます。この街の領主、ハセン・ゼシュルーネと申します」


「これはご丁寧にありがとうございますですわ。今日はお世話になりますわ」


 ラライア姫の前で全員そろって膝を付いて、ハセンさんが代表としてあいさつをしてる。ラライア姫もそれに対してお礼をしている。


「ハセンさん何してるの? こんな揃って出迎えてたら、中に入れないじゃん」


「何ってお前……、この国のお姫様を連れて来られたから慌てて総出でお迎えしてるんだよ! この国の姫だぞ! 急に連れてこられるこっちの身にもなれ!」


 なんでわたしが怒られるんだ。友達を連れてきただけじゃないか。


「わたしその姫より偉い女神だけどお迎えされた事ないよ! 何なら怒られたんだけど!」


「それは知らん。日頃の行いだろう」


「わたしの日頃なんて女神そのもののような日頃を過ごしてるはずだけどなぁ」


「フンッ」


 何故か、鼻で笑われた。おかしい。

 女神ではない事は確かではあるけれども、不本意ながらにも皆女神だと信じて疑わないくらいには女神しているんだけどな。日頃から女神っぽい行動をしているからこその、疑われない女神評価だと思うんだけどな。




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