P95 ご褒美、ご褒美返し
大会が終わって帰還して数日、のんびりといつもの日常を過ごしながら次のイベントを考える。
ラライア姫がルル達と遊びたいって言ってたからね。まあ言ってなくとも、わたしが皆と遊びたいので、皆と遊べるイベントを考えるのだ。
楽しく遊ぶためには、どっかの王に邪魔されないイベントを考えないといけない。あの王が関わるとめんどくさいことになりがちだ。
その王からの手紙で大会に行く事になってしまったけど、あれはお金に釣られてしまったから仕方がないったら仕方がない。お金、大事。
イベントを考えるうえで必要なのは、やっぱ場所だよね。どこでやろうかなー。ツズリランドも王のせいでラライアシティーになっちゃったからなー。ツズリランドはもう使えないよね。
場所は後から考えるとして、先ずはラライア姫の所に行こう。ラライア姫とコタビに注文しないといけない道具があるんだよね。
っという事で、今日も今日とて、わたしは絨毯に乗って空の旅をする。目的地はラライア姫の部屋だ!
まぁ、十分もあればつくんですけれども。
「ぃやっほー!」
わたしはいつも通り、いつもの窓から挨拶をする。
いつもの事で慣れた事なのか、最近ではこの窓は空いている事が多い。いつわたしが来てもいいように開けてくれているんだろうね。
「おはようございますなの! ツズリ様!」
「おはようございますですわ! ツズリ様!」
「はい、おはよー! 今日も元気がいい挨拶だね」
「勿論なの!」
「勿論ですわ!」
元気も良いし息もぴったりだ。ずっと一緒にいるだけの事はあるね。もはや、双子と言われても信じてしまいそうだ。
役割は姫と犬で似ても似つかないけれどもね。
「元気がいいのはいいけど、二人は何をやってるの?」
元気よく挨拶をする二人の姿は、布団にくるまって顔だけ出している状態になっている。二人で同じ布団にくるまっているのは可愛いけど、何をしているのかはよく分からない。
「最近寒くなってきましたので、布団から出る事が出来ないのですわ」
確かに、お城の最上階でお風呂入った時も、最上階にしては寒さを感じた気がする。お風呂に入るとき以外はこの巫女服を脱がないから、外の気温って分からないんだよね。
そういえばルルもリリナも、大会に行く前と後では来ている服が冬物になっていた気がするな。現世でもこの世界でも服に関しては無頓着だったから、全然気にしていなかったよ。
「暖房器具……いや、部屋を暖かくする魔道具とかないの?」
「あるの。今も使っているの」
あるんだ。そりゃあるよね。電気技術の代わりに魔力というものがあるんだから、あってもおかしくない。マイクだってあったし。
「だったらどうしてそんなに寒がってるの? 魔道具が故障してるとか?」
「故障はしていないのですけれど、窓を開けているとそこから冷たい空気が入ってきて、魔道具の意味をなさないのですわ」
「閉めなよ! わたしの為に開けておかなくていいから、ちゃんと閉めようよ!」
わたしは急いで窓を閉める。
女神としてわたしを崇めたり、優先してくれるのは有難い事なんだけど、寒さを後回しにしていつ来るか分からないわたしに備えるのはやめて欲しい
「今日から窓はちゃんと閉めておくように! わたしの事よりも自分の身体を大切にしてね! 特にラライア姫は体力がなくて身体が弱いんだからさ」
「はいですわ」
「はいなの」
布団にくるまったまま、二人ともが返事を返す。
わたしの言う事を女神の言葉として受け取る二人は素直に聞いてくれる。妹のように可愛い二人だ。見た目的には大差ないどころか、コタビの方が大人びて見えるけれどもさ。ある一部位のせいで。どことは言わないけど。
二人ともまだ寒そうだね。魔道具とは言えど、姫様の広い部屋じゃそんなにすぐには温かくならないか。
魔道具で暖かく出来るなら、わたしの魔法でも暖かく出来るかな。お湯を作れるんだから、空気だって暖かく出来るはずだ。
風魔法を基調として炎魔法を火として使わず熱として使う。
「どう? わたしの魔法で暖かくしてみたつもりなんだけど、暖かくなった?」
自分では気温が分からない。巫女服を脱げば分かるけど、ここで理由もなくいきなり脱いだりなんてしたらただの露出魔だ。わたしの真似をしたがるコタビが真似して脱いでしまう可能性だってある。
ラライア姫達は布団からもぞもぞと、恐る恐る出てくると、
「わぁ! 凄いですわ! 一気に暖かくなりましたわ!」
「もう寒くないの! 甲羅を脱ぎ捨てた亀状態なの!」
っと言っているので、魔法は上手くいっているようだ。
ただ、甲羅を脱ぎ捨てた亀状態は良く分からない。亀は寒いから甲羅を背負っている訳ではないと思うんだけど……。
「亀の例えは良く分からないけど、暖かくなったのなら良かったよ」
「寒い時期は一家に一台ツズリ様がいれば安心ですわ!」
「わたしを量産型にしないでよ! ホムンクルスじゃないんだから!」
「それは良いアイディアなの! 暖房の魔道具に耳と尻尾を取り付けてツズリ様型暖房魔道具を作るの!」
「やめーい! それはやめーい! 女神の名の下に制作を禁止します!」
ラライア姫のちょっとした発言をコタビが実行しようと企画する。女神を騙ってでも禁止にしないと、本当に作りかねない。実際に耳と尻尾はいつのまにか作ってるからね。
ホムンクルスは流石に無理だろうけど、ここは異世界だ。どこかの国にはそういう技術もあるかもしれない。ゴーレムがそれに近いものがある。わたし型のゴーレムなんて作ったら、速攻で全て破壊しよう。
「それはそうと、コタビはラライア姫の体調をちゃんと見ておかないとダメだよ。寒いのに窓をあけっぱなしにするなんて以ての外だよ」
「ラライア様がツズリ様の為だって言うから、名案だと思って乗ってしまったの。反省なの」
わたしの為だと言われたら名案だと思ってしまうとか、詐欺師にすぐ騙されそうだなコタビは……。女神様の為だからって言われて、ほいほいと付いて行って誘拐とかされてしまうのではないだろうか。ありえる……。
「ラライア姫はコタビが馬鹿な事したり作ろうとしたりしないように、注意しないと駄目だからね!」
「分かっておりますわ! でも、ツズリ様型暖房魔道具は良い案だと思ったのですけれど、禁止なんですの?」
「いい案じゃないです! 禁止です!」
お互いがお互いの駄目な所を補えばって思ってたけど、駄目かもしれない。この二人、息が合い過ぎてお互いの駄目な所を加速し合っている気がする。
二人ともがお互いの駄目な案を良い案だと肯定してしまっている。
うーむ、この二人の動向には注意が必要だね。定期的に見に来ないととんでもない事になりかねない。
「ツズリ様も道中寒いでしょうし、すぐに部屋に入れるようにと思ったのですけれど、わたくしが体調を崩して、またツズリ様に迷惑をかけてしまうと考えると、ちゃんと閉めておいた方がいいですわね」
「ラライア姫の為なら魔法で直せる病気程度なら迷惑でもないしどんとこいだけど、健康に越した事はないからね」
「ツズリ様はずっとその服を着てるけど、寒くないの? ひらひらしてるし、スカートの丈は短いしでとっても寒そうなの」
「わたしは寒くないよ。この服は寒さも暑さも防いでくれる万能な服だからね」
丈が短かろうが、風通しが良かろうが、この服はゲームで言う装備扱いなので、肌が露出していても寒さも暑さも適温だ。なんなら防御力だってシャロのパンチに耐えられるくらいには無敵だからね。
「おおー! 流石、天界の服なの!」
実際に神様が作ってくれた服だから、天界の服といっても間違いではない。服だけは女神といってもいい。巫女だけど。
「それで本題に入るんだけど、今日来たのは二人に頼みたい事があるからなんだよ」
「ツズリ様からの頼み事! どんな事でも頼まれるの!」
「どのような天命でも承りますわ!」
そんな天命なんて言えるような重大な事を頼む訳ではないけれども、わたしからすると結構重要だから天命と受け取ってくれてもいいか。
「そう! 天命だよ! 心して聞くように!」
二人ともはいっと元気よく返事をして、わたしが何を頼むのか目をキラキラさせて待っている。
目をキラキラさせる程の期待に添った頼み事ではないのが心苦しいけど、まぁいいか。この二人なら何を頼んでも喜ぶだろう。
「ルルとリリナの分の付け耳と付け尻尾を作って欲しい!」
わたしが頼みたい事とはルルとリリナのもふもふだ。サプライズしている時に、ルルとリリナにも生やしたいと思ったからね。思ってしまったら実行せざるを得ない訳で、絶対可愛いから強制的に付けたい訳で。
「それならもう作ってあるの!」
「こんな事もあろうかと、わたくしが友達と思っている方たちの分は優先的に作っておりますわ!」
「はやーい! 早すぎるよ! 優秀か!」
わたしが頼むまでもなく、既にルルとリリナの分も作ってあるらしい。流石わたしを信仰しているだけあって、わたしの心が読めているかのような事前準備の良さ!
「ふふーん、なの!」
「ふふーん、ですわ!」
コタビとラライア姫が優秀と言われて、ある胸とない胸を張って得意げにしている。
コタビはいつもの事だけど、ラライア姫までそれをやるのか。コタビに悪影響を受けているのかな。まぁ、ラライア姫ならわたしは何も思わないから良いけどね。
ただし、コタビはダメだ。強調され過ぎている。
「今日は気分が良いからそんな優秀なコタビにご褒美をあげよう。覚悟して受け取ってね!」
「わーいなの! ご褒美嬉しいの! でも、なんで覚悟が必要なの? なんで、そんな悪い顔をしているの?」
「ふふふふふ、それはねぇ。こういう事だからだよ!」
わたしはにやにやとしながらコタビに近づき、目に付くところをくすぐったり揉んだりする。主に胸辺りが何故か目に付くのでそこを重点的にやる。
「や、やめてなのー! くすぐったいのー!」
「むむむ、触ってみると見た目よりも揉みごたえが……、くっわたしにはないのに!」
「こ、降参なの! もう、ご褒美は十分なのー!」
ふむ、じゃあ、この辺にしといてあげるか。十分に堪能、いや、十分にご褒美を上げることが出来たからね。犬とのスキンシップは撫でまわすのが大事だからこれがご褒美なのだ。
「いよーっし! 気分スッキリだね!」
まあ、個人的な八つ当たりだからスッキリしたのはわたしだけだけれどもさ。
「はぁはぁ、待ってなの。コタビだけご褒美をもらうのは申し訳ないの。共同開発したラライア様にもご褒美を受け取る資格があると思うの」
コタビが疲れ切った様子でラライア姫も巻き込もうとしている。でも、確かにご褒美というのなら、二人ともに平等にするべきだよね。
目的はコタビの胸への八つ当たりだったけれども、ラライア姫にご褒美をあげないのは不公平だ。
「い、いえ、わたくしはご褒美はいりませんわ。ツズリ様のその気持ちだけで十分ですわ」
ラライア姫は逃げるように後ずさりしながら、なんとかして逃れようとしている。
「コタビは右からね! わたしと挟み撃ちでラライア姫にご褒美をあげるよ!」
「了解なの!」
「なんでコタビが参戦してるんですの! おかしいですわ!」
「ツズリ様命令なの。一緒にご褒美をあげるの! 覚悟するの!」
「ご褒美をもらう為に覚悟何てしたくないですわ! ま、待ってですわ!」
待てと言われて待つのは賢い犬だけだ。コタビは優秀だけど賢くないので待つわけもなく、当然、イヌ科ではあるけど、狐っ娘のわたしは犬ではなく狐なので待つわけもない。
そして、コタビとわたしに容赦なくくすぐられて、ラライア姫は笑い転げている。
むむむ、ラライア姫も意外と……あるな。健康体になって、食事もしっかりととるようになったからか、寝込んでいた分の成長が戻ってきているのかな。
そう言えば、ラライア姫の母親、つまりこの国の王妃だけれども、胸は大きい方だったな。遺伝か、遺伝なのか!
遺伝で胸が決まるのならわたしの遺伝は誰だ! ゲームか! 神様か!
神様の遺伝何て付いてたら、それこそ女神という肩書が本物になってしまうから、その可能性だけは否定したい。
「はぁはぁ、笑い疲れましたわ……」
一番疲れるのはやられる側だけど、やる側もこれはこれで疲れる。
「ラライア様、コタビにいい案があるの」
「奇遇ですわね。わたくしもいい案が思いつきましたわ」
ラライア姫とコタビがお互いはが同じ考えでることをアイコンタクトで確認している。
なんだか悪い予感がするけれども、二人は一体どんな案を多い浮かんだのだろうか。
「えっと、二人ともどうしてわたしの方を見てにやにやしてるのかな? 思わずにやけてしまう程にわたしが可愛いのは分かるけど、今のタイミングじゃない気がするんだけれども」
にやにやとしながら二人がわたしににじり寄ってくる。可愛いけど、怖い。
「コタビ行きますわよ! ご褒美をもらったお返しですわ!」
「日頃の感謝の気持ちなの!」
「いりません! 受け取りません! や、やめっ! やああああああああああ!」
女神なのに信者二人にボロボロにされました。わたし、女神なのに。




