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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、大会ライフ
90/144

P90 魔王軍による獣人化の呪いですか?

 ツズリランドから帰るって言っても、ルルの街に帰る訳にもいかない。どうして魔王軍に堕ちているのかって理由を確かめないといけないよね。

 騎士が懐柔されているとなると、ラライア姫とコタビがいる王都も心配だ。魔王軍に攻められてたりしてたら、大変な事になっているはずだよね。遠目からは、城も壁も無事だったから、大事には至っていないとは思うけれどもさ。


 何より心配なのは、ラライア姫とコタビの安否。わたしが離れている間に、わたしの親友とも呼べる二人の身に何かあれば、後悔なんていうレベルのものじゃないよ。

 もし何かあったら、魔王軍を何万回滅ぼしてもぬぐい切れない程の、後悔とも呼べない何かに心を襲われそうだ。


 ドラゴンを収納魔法に片付けて、代わりに絨毯で飛んで帰る。王都が魔王軍に占拠されていてもいなくても、ドラゴンのまま行く訳にはいかない。

 だって、攻撃されるからね! 問答無用で!

 まぁ、攻撃されても痛くもかゆくもないから、別にいいんだけどね。


「うーん、王都に着いたけど、特に変わった様子はなさそうだね」


 城の門番とか街の門番とかの騎士達の鎧が黒いって点を除けばだけども。

 見た目には分からないだけで、乗っ取られたりしているのかな。魔王軍って言っても、魔族がどんな姿のか知らないからね。同じ人の姿をしているのなら、区別なんてつかないもんね。


「いつも通りラライア姫の所に向かおうかな」


 普通の人のいつも通りなら城の門からだろうけど、わたしのいつも通りはラライア姫の部屋の窓からだ。


「大丈夫かなー二人とも。人質とか洗脳とかされてなければいいけど……」


 いつも出入り口として活用している窓から、こっそりと中を覗いてみると、ラライア姫とコタビが居た。


「良かった。二人とも無事みたいだね。ただ――」


 まぁ、居るのは当たり前だ。でも、問題がある。


「どうして二人とも、尻尾と耳が生えてるの……」


 ラライア姫とコタビ、二人ともに耳と尻尾が生えていて、二人とも嬉しそうにしている。

 いったい、何があったらそんな事になるのだろうか。実は二人とも獣人だったとか? いや、それはないよね。二人とも一緒にお風呂に入った事があるから分かるけど、尻尾と耳を隠しているって事はなかった。

 じゃあ、後々に生えてきたとか? うーん、異世界だから無きにしも非ずだね。魔王軍に変な魔法を掛けられて獣人化したのかもしれない。


「ラライア姫とコタビの獣人化……魔王軍、グッジョブ! ありだよ! わたし的には全然ありだよ!」


 っと、テンションが上がっていると二人に気づかれた。

 気づいた二人は、笑顔でわたしのいる窓まで跳んできた。


「ツズリ様! 帰って来たの! お久しぶりなの!」


「お久しぶりですわ、ツズリ様! 中に入ってくださいですわ!」


 特に操られている様子もないし、いつも通り様付けで呼んでいる辺り魔王軍に堕ちたわけでもなさそうだ。魔王軍って女神を敵視してそうだからね。


 久々にラライア姫の部屋に入ると、懐かしい良い匂いがする。一ヵ月ぶりの匂いがする。

 姫の部屋で尚且つ美少女の部屋だから良い匂いがするんだよね。


「ただいま、二人とも! えっと、変わりなく元気だった?」


 明らかに、目で見て分かるレベルで変わっているんだけどね。


「見ての通り元気なの! ツズリ様が帰ってきて、もっと元気になったの!」


 コタビがぴょんぴょんとジャンプして、元気の良さをアピールしている。跳ねる度に尻尾も揺れている。


 か、かわいい……! これがもふもふ尻尾の破壊力か……!


「わたしくしも元気ですわ! この通りですわ!」


 っと言ってラライア姫もぴょんぴょんと二回跳ねたと思ったら、床にぺたんと座り込んでしまった。ラライア姫のもふもふの尻尾も、ふわっと床に着く。


 美少女ともふもふ尻尾最高か! 最高なのか!

 おっと、テンションが上がり過ぎて涎が出てしまってた。向こうではシャロのせいで、獣人が居たにもかかわらず、もふもふがお預けされてしまっていた反動が出てしまっている。


「相変わらず、体力は壊滅的にないんだね……。でも、元気そうで良かったよ」


「ツズリ様もお変わりなくて良かったの! おかえりなさいなのー!」


 コタビがわたしが帰ってきた嬉しさに耐えきれなくなったのか、抱き着いてきた。


「お-、よしよしー。そんな一ヵ月じゃ変わらないよ」


 流石コタビ、犬のようなじゃれ付き具合だ。犬のようにというか、もはや耳と尻尾もが生えて、見た目も犬になっているんだけどね。

 目前に変わっている二人がいるから、完全にわたしの言葉に信用性は全くないね。一か月で人は変わるよ。主に耳と尻尾が生えるよ。


「あー! コタビだけずるいですわ! わたくしも参加いたしますの!」


 わたしにじゃれついているコタビを見て、ラライア姫までわたしに抱き着いてくる。


 な、なんだこの状況は! 二人の、いや、二匹の子犬がわたしにじゃれてきているぞ!?

 ここは天国か!? 天国なのかー!?

 魔王軍だか悪魔軍だかなんでもいいけど、二人を獣人化してくれてありがとう! わたしは、今、幸せです!


 二人のお尻に生えている尻尾がを見る。うん、もふもふだ。もふもふがふりふりだ。

 シャロがいないこの状況でする事は一つしかない。そう、尻尾をもふもふする事だ!

 この二人はわたしの親友で信者と言っても過言ではない。二人に生えているもふもふは私のものと言っても差支えないって事だよね。

 つまり、わたしのものならば、わたしが自由にしてもいいって事だ!


「っという事で! もふもふさせてー! って、……にゅああああああああああ、取れたああああああああああ!?」


 二人の尻尾をもふろうとして、ぎゅっと尻尾も掴むと、すぽっと尻尾が取れてしまった。二人のお尻からもふもふが解き放たれてしまった。


「ど、どどどどどうしよう!? もふもふが! 二人のもふもふがー!」


「落ち着いてなの、ツズリ様。付け尻尾だから引っ張ったら取れるのは当たり前なの」


「直ぐに取れてしまうのが欠点ですわね。改良の余地ありですわ」


 慌てるわたしに対して、二人は冷静に返してくる。


「え? 付け尻尾? 改良? あ、これ作り物の尻尾!?」


「そうなの! 本物が生えてくる確率は絶望的だから、作ったの! コタビ考案なの! ふふーんなの!」


 コタビがいつものように、子供にしてはふくよかな胸を強調ながら胸を張って威張っている。

 あれ? 一か月でちょっと成長した? シャロやシルフさんの控えめな胸に見慣れてたからそう感じるだけだよね?

 いや、そんなことはどうでもよくて、いや、本当はどうでもよくはないけど一旦気にしないでおいて、尻尾に意識を戻そう。


「えっと、じゃあ魔王軍に獣人化の魔法を掛けられたわけじゃないの?」


「魔王軍? 何を言っているんですの?」


「そんな魔法があったら是非掛けてもらいたいの。本物の獣人になれたなら、より一層ツズリ様にお近づきになれるの! ツズリ様を崇める者として、当然の姿になれるの!」


 コタビの言っている事の九割は全く賛同できないけど、獣人化という魔法があるのなら、わたしは魔王軍に与してもいいと思う。全世界獣人化計画を企てて、もふもふの溢れる世界に変えるという野望を果たす事が叶うかもしれない。

 ルルやリリナ、シャロもけもっ娘に出来るという夢のような世界に……!


「ツズリ様、悪い顔をしていますわ。何か拾い食いでもしてきましたの?」


「してないよ! コタビと一緒にしないでよ!」


 考えていたことが顔に出てしまっていた。この癖はもう抜けそうにない、致命的な癖だね。

 でも、そんな悪い顔を無意識にしてしまうような、悪い考えじゃないと思うけどなぁ、全世界獣人化計画。天国みたいな世界になる訳だし。


「ツズリ様!? コタビも落ちているものを食べるなんて事した事ないの!」


「「え?」」


 わたしとラライア姫が同時に疑問を持つ。


「コタビを何だと思ってるの! 野良犬か何かだと勘違いしないで欲しいの!」


「野良犬だなんて思ってないよ。ラライア姫に飼われてるんだから、野良ではないよ。安心して?」


「そうですわ。わたしくしが毎日面倒見て差し上げているのですから、野良だなんて思った事もありませんわ」


「拾い食いする犬だとは思っているって事なの!?」


 久々のコタビ弄りは面白いね。ラライア姫もわたしに乗ってくる辺り、一か月前と何も変わらない。

 耳も尻尾も作り物だったみたいだし、魔王軍に襲われたって思ったのは杞憂だったかな。


 あれ? でも、あの黒い鎧は見間違いではないし、ツズリランドが侵略されていたのも夢ではないよね。いったい、どういうことなんだろうか。


「話は変わるんだけどさ、ここに来る前にキャンプをやったツズリランドに寄ったんだけど、黒い鎧を着た魔王軍に侵略されてたんだよ。しかも、その魔王軍、ここの騎士の人達だったんだけど、何か知ってる?」


 騎士が魔王軍に堕ちている理由があるなら、この国の姫であるラライア姫なら何か知っているはずだ。街の様子を窺う遊びをしているし、ラライア姫ならそういう情報にも詳しいはず。……浮気調査ばっかしてたけども。


「黒い鎧の騎士なら、この国の正式な騎士ですわ。前までは青と白の鎧でしたけれど、黒い鎧はツズリ様が持ってきてくださった、ドラゴンの素材で作った鎧ですわ」


「魔王ってわたしだったの!?」


 騎士達が黒い鎧に包まれている原因はわたしだった!

 正確に言えば、ムカデの素材を使って鎧を作れって言ったのはわたしではないから、わたしのせいで真っ黒になった訳ではないんだけれども、わたしが持ってきたムカデのせいではあるよね。

 確かにあのムカデの色と鎧の色は一緒だ。真っ黒だ。それに、わたしの隕石魔法をくらっても平気そうにしていたくらい頑丈だから、鎧の機能としては抜群に優れているだろうね。


「ツズリ様は魔王じゃなくて女神様なの! 天と地ほどの違いがあるの!」


「あー、うん、そうだねー。わたしは女神だよー」


 っと言いつつ、コタビの頭を撫でて褒めてあげる。

 コタビは満更でもなさそうな顔で、ふふーんっと鼻息を大きくして満足してるみたいだ。


 なんだ、コタビはやっぱ犬じゃないか。


「鎧に関しては分かったけど、ツズリランドに関してはどういうことなの? 村が出来てたよ?」


 魔王軍の侵略ではないとしたら、まぁ当然の如くあの王に心当たりが行きつく訳だけれども、予想通りにあの王の指金なのかな。


「お父様がツズリランドの事を知って、新たに街を作り移住すると言い出しましたの」


「ああ、やっぱそうなんだ……。それにしても移住とは大きく出たね」


「女神が創りし神聖なる地に移住すれば、更に国が有名になり安全に暮らせる国になるだろうって言ってましたわ」


 わたしが作ったツズリランドにそんな効果は勿論ない。ある訳もない。

 本物の女神が作ったのなら、その可能性は十分にあるかもしれないけど、わたしはただの獣人だ。その獣人の同族、しかも獣王に神獣だの言われたけれども、ただの獣人なのだ。


「うーむ、王にあの場所を取られるのは嫌だなぁ。追い返してくるか」


「大丈夫なの! ツズリ様が嫌がると思って、ラライア姫が対策をしてくれたの!」


「対策? でも、既に村は出来てたよ?」


 娘のラライア姫を裏切って女神の地の侵略を優先したのかもしれない。あの王ならやりうる。女神をどうにかして利用しようと言うか、取り込もうと考えている節があるからね。

 わたしを取り込んだところで、女神パワーはこれっぽっちも授かれないんだけれどもさ。全く、迷惑な話だ。


「街を作る事は取り消せなかったのですけれど、移住を取り消す事は出来ましたの。それで、その街の領主をわたくしがなる事になりましたわ」


「え? ラライア姫が?」


「はいですわ。ツズリ様の聖地をわたくしがお守りいたしますわ!」


「コタビも向こうで神官長を務めるの! もう、了承を取ってあるの!」


 なんか、わたしがいない間に随分と話が進んでるね。まぁでも、王に乗っ取られるよりはラライア姫に明け渡す方が全然マシだ。

 っというか、ラライア姫に管理してもらえるなら、丁度いいかもね。わたしが今回みたいに遠出した時に、管理してくれるんだもんね。メイドを雇う必要がなくなった。


「よし! ツズリランドはラライア姫に任せてるよ! コタビもラライア姫の飼い犬として、手伝ってあげてね!」


「はいですわ!」


「はいなの! って、ちょっと待ってなの! 飼い犬ではないの! ラライア様の専属神官なの!」


 コタビからは否定の言葉が追加されたけれども、特に問題はない否定だったのでスルーすることとする。

 魔王軍に侵略された訳でも、王に乗っ取られる事にもならなくて良かった。ラライア姫のファインプレイだね。




誤字報告等、いつもありがとうございます。

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