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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、大会ライフ
89/144

P89 黒い鎧を着た騎士

 ドラゴンを作った翌日、わたしは早速ドラゴンに乗って帰っている。いや、ドラゴンになって帰っている。

 口の中の特等席でドラゴンを自分の身体のように操り、自由自在に飛び回っている訳だから、もはやわたし自身がドラゴンと言っても過言ではない。

 口の中に居るからと言って、食べられている訳ではないからね。自ら口の中に居るだけだからね。


「ぬぅわーはっはっはー! わたしはドラゴンだぞー! ドラゴンなんだぞー!」


 なんだかちょっと、強くなった気分になれるね。実際、わたしは強いんだけれどもね。

 シャロに大会で負けてしまったから、シャロ以下でって言う汚名が付いてしまうけれども。この汚名は、その内シャロ本人に投げ返したいものだ。


 ドラゴンの旅はなかなかに快適だね! 絨毯もいいけど、ドラゴンを操れるって言う暇つぶしがあるから、道中の楽しさが上がっている!

 飛行機? 絨毯? いやいや、時代はドラゴン一択でしょ!


 っという事で、ドラゴンになったつもりでルルの街に帰る事にする。

 流石にこのまま帰ったら街が大騒ぎになって、ルルに怒られかねないから手前で絨毯に乗り換えるけどね。

 そりゃ、ドラゴンが街に飛んできたら大変な事になる事くらいは、わたしでも容易に予測出来る事だもん。失敗はしない事で有名なわたしに、やらかした事や失敗した事なんて一切ないのだ。


 ルルの街に向けて飛んでいると、一つ思い出した事がある。


「あー、帰る前にツズリランドに寄って行かないとだ。一か月ほど放置してたら埃が積もってるよね」


 ツズリランドにある家、もといツズリハウスにはメイドを雇っている訳ではないから、わたしが定期的に清潔魔法を掛けにいかないといけない。

 元の世界と違って、雑巾掛けをしたり、掃除機を掛けたりと、身体を使って掃除をしなくても魔法で一瞬で終わる事だから、別に苦でもなんでもない。空いた時間にパッと行って、パパッと魔法を掛けてそれで終わりだ。だからこそメイド何て雇う必要はないんだけど、遠出する時なら誰かに頼んでもいいかもしれないね。

 ただ、王都からでも割かし距離が離れているから、安易に依頼は出来ない。そもそも、空を飛べないと、わたしが作った壕を飛び越える事も出来ないから、結局自分でやるしかないんだけれども。


 それに、家だけではなく、庭の手入れもしないといけないかもしれない。雑草が蔓延ってる可能性もある。

 土魔法で掘り起こすか、炎魔法で雑草を焼き払えばいいだけだから、こちら問題はない。魔法って便利だ。


 南にずーっと飛んでいると、遠くからでも目立つ街の壁とお城が見えてきた。


「おー、あれは懐かしのラライア城! って事は、ツズリランドはあっち側か。ツズリドラゴン! ツズリランドに向けてレッツゴー!」


 あの城の名前は絶対にラライア城ではないと思うけど、ラライア姫がいるお城だからラライア城で間違いない。そして、わたしが操作してわたしが作ったドラゴンだから、このドラゴンはツズリドラゴンなのだ。

 わたしの頭の中のリリナから、ネーミングセンスがないっていう声が聞こえてくるけど、見本パンチのシャロよりは上なので問題なし!


 ツズリドラゴンを操作して、ツズリランドに向かう。

 なんだかツズリツズリとややこしいな。一体誰がこんな名前を付けたんだ。もうちょっと考えた方がいいんじゃないだろうか。


 綺麗なブーメランを華麗に躱しつつ進むと、目的地が見えてきた。見えてきたのはいいんだけど……。


「なんか……発展してない……?」


 先ず目に入るのは、誰も通れないないようにしているはずの壕に、橋が架けられている。そして、橋の手前には門が設けられていて、所謂、関所が出来上がっている。


「誰だ橋なんて架けたやつは……。前に侵入してきたように盗賊がやったのかな。それとも、この場所を見つけた冒険者が探索でもする為に橋を架けたとか……?」


 どちらだとしても、関所まで作るとは思えない。なので、もっと別の人達だ。

 関所を必要とするのは街とかだと思うし、ここに街を作ろうとする人物が居るという事かな。そんな事をしそうな人物……、うん、心当たりが割とある。


「まーた、あの王か……」


 キャンプの時に騎士が来てしまった事があったから、その時に王にもこの場所の事が騎士経由で伝わったんだろうね。

 元々、ラライア姫がキャンプに行く時に、城を出る許可を得る為に王にキャンプの事は話してたと思うけども、場所まではバレてなかったはずだしね。


 ツズリランドの上空まで行って、木に囲まれた中を見てみると……、うんまぁ、何と言うか、村が出来てる。


「わ、わたしの秘密基地が……! 憩いの場が……! 侵略されている!」


 たった一ヵ月で、どうしてこうも変貌を遂げているんだよ、ツズリランド。ちょっと目を離した隙に、どうして成長しているんだい、ツズリランド。

 こうなってしまうと、もはやツズリランドですらない気がするけれども。別のなんたら村って感じになっている気がするけれども。


「あ、でも、わたしの家は取り壊されてないな。一割くらいはツズリランドと言っても差支えがないかも?」


 わたしが作ったのに一割って……。悲しすぎる。

 壊そうにも、壊せなかったが正しいのかもしれないけどね。あのムカデが下から湧いて出て来ても壊されない強度の家だから、シャロを連れてこない限りは壊れないと思う。

 ただ、窓はガラスだから、割られれば侵入を許してしまう。大事な物なんて何一つ置いていないから、別に良いんだけどね。

 この世界には収納魔法があるから、貴重品は常に所持する事が出来る。魔法って便利だね!


 魔法が便利がゆえに、たった一か月でここまで村に発展しているとも言えるんだけれども。利点もあれば欠点もあるのは、魔法も同じだ。


 問題点はまだあるんだよね。目を逸らしてたけど、一番の問題がまだ見えているんだよ。

 あの王の経由なら、わたしが家が壊されていないなとは思わなかった。仮にも女神の家なのだから、そんな勝手に壊したりはしないだろうからね。女神の土地には手を加えそうではあるけれども。


 何故、家の安否懸念したかというと、このツズリランドで今も村を作っている人達を見てみると、明らかに魔王軍なんだよ。

 黒い鎧を着た兵士だかが、沢山うろうろとしているんだよ。これは誰がどう見ても、魔王軍でしょ。黒い鎧だよ? 絶対魔王軍だ。間違いない。


 ラライア姫の国の騎士達の鎧の色は、青と白を基調としている鎧だ。そして、ここにいるのは黒い鎧を着た魔王軍だ。

 信じがたい事に、あの王が関与していなかった! わたしのツズリランドを侵略しそうな、魔王軍よりも第一に疑いが掛かるあの王の指金ではなかった!

 まぁ、疑われる方が悪いので、わたしは心の中ですらあの王には謝らないけどね。


「さて、どうしようかなこれ……」


 魔王軍だからと言って、むやみに敵と決めつけて攻撃するなんて事はしない。そもそも、魔王が悪い事をしているって聞いた事もないから、「魔王軍だ、倒せ!」とはならないよね。

 いや、現在進行形でツズリランドが侵略されているという悪事は働いているんだけれどもさ。


 追い払いたいのはやまやまだけど、ここまで発展していたら壊すのも気が引けると言うかね。折角頑張って作ってるんだから、勿体ないよね。

 上空から見ているわたしには、黒い鎧は蟻に見える訳で、その蟻が頑張って巣を作っている風景を見ているような気分。なんというか、奇しくも村の発展を女神視点で見ている気分になる。


「取り敢えず、話だけでも聞きに行こうかな」


 見た目通り悪い人達なら追い払えばいいし、そうじゃないなら話し合いで解決するかもしれない。最悪、別の場所に新たにツズリランドを作れば問題ないしね。

 この世界は魔物がいるから、大きい街で壁がある所周辺しか整地されていない。それ以外の場所は空き地だ。つまり、自由に使って問題ない土地で溢れているから、ツズリランドを作り放題だ。だからと言って、作りまくったりはいないけどね。


 操っているツズリドラゴンの高度を下げて、地上に近づいていく。頭からグングンと降下していく。

 下にいる人達も流石にわたしに気づいたのか、何やら慌てふためいている。そして、弓を構えたり、魔法を発動したりと攻撃態勢になっている。


「むぅ、いきなり攻撃をしようとしているなんて、やっぱ魔王軍だから気性が荒いのかな。わたしは話し合いに来たのに」


 地面が近づくにつれて、騎士達の顔がはっきりと見えてくる。


「あれ、この顔見た事あるって人がちらほらと……」


 どっからどう見ても顔見知りの騎士達だ。ムカデの時に出張っていた騎士達だ。魔法部隊もいる辺り、魔法で村を作ってたって事が分かるね。

 っじゃなくて、魔法で村を作ってたなんて推測はどうでもいいんだよ。どうして王都の騎士が魔王軍にって話だよ。もしかして、攻められて乗っ取られた……とか?

 洗脳とかされてたりするのだろうか。何にしても話を聞いてみないとね。


「せ、攻めてきたぞー!」

「神聖なる女神の地を守れー!」

「魔法部隊! 弓部隊! 放てー!」


 構えていた弓と魔法をわたしに向けて放って来た。

 いやいやいや、その地を整地した神聖なる女神はわたしだよ!? 言ってる事とやってる事が矛盾してるから!


「矢はどうって事ないけど、魔法は当たりたくはないから打ち消させてもらうね!」


 放って来た矢と魔法を、風魔法で全てを相殺する。魔法でわたしに勝てるとは思わない事だね!


「うおおおおおおお! 我らが愛しき、小さき獣の女神様の土地を守るぞー!」

「「「おおおおおおおおおおお!!」」」


 この熱血ファンの感じ! やっぱり第二騎士団の人達じゃん!

 最初は一人だったと思うけど、いつの間にか人数が増えて、第二騎士団=わたしのファン、親衛隊みたいになっている人数になっている気がする。


 ただ、残念ながら第二騎士団の人達は剣士の部隊なので、熱血ファンである事しか伝わってこない。攻撃手段が一切ない。


 っていうか、ファンのくせになんでわたしからわたしの土地を守ろうとしているんだ。やっぱ、魔王軍に洗脳されていて、わたしが魔物か何かに見えるようになっているのかな。

 ん? 魔物か何か……?


「あ、わたし今ドラゴンだ!」


 ついさっき街に近づくときは絨毯に乗り換えるって考えてたばっかりなのに、ツズリランドが侵略されていたからすっかり頭から抜けていた。そういえば、わたしって、今ドラゴンだった。


 そりゃ、騎士達も慌てふためくし、攻撃を仕掛けてくるのも当然だよね。

 あの大きいムカデ相手にも怯まずに立ち向かっていた騎士達だから、本物のドラゴンがこうして出て来ても、怯まずに攻撃を仕掛けてくるはずだ。

 いや、本物のドラゴンではないんだけどね。


 洗脳とかではなく、ただただ、わたしがドラゴンだから攻撃をしてきたって訳か。

 うーん、だとしても、王都の騎士達が魔王軍の格好をしている説明にはならないよね。いったい、なんで魔に堕ちているのだろうか。

 まぁ、あの王はわたしからすると魔で間違いないんだけれどもさ。あ、魔王の魔とか悪魔の魔じゃなくて、邪魔の魔、ね。


「怯まずにどんどん放てー! 近づく隙を与えるなー!」


 なんだこいつら! 嵐の如く怒涛の攻撃を仕掛けてくるじゃん! わたしは崇められているはずの女神なのに!

 いや、洗脳されて魔王軍側になっているなら、女神は敵って事で間違いないけどさ! どっちにしろ、今はドラゴンだから間違いではないか。


 怒涛の攻撃だけれども、威力はそうでもないので風魔法の壁を張ってればわたしに届く事はない。顔見知りの騎士って事もあって、むやみに反撃する事も出来ない。

 だからと言って、「実はわたしでしたー!」ってドラゴンを消して出て行ったとしても、それはそれで問題が残る。


「女神様ってドラゴンの化身だったんですか!?」


 って思われてしまって、狐なのかドラゴンなのか、はたまた別の何かなのか……、兎に角、変なオプションが付くのは間違いないだろうね。

 そんなめんどくさい事になるのは目に見えているから、出て行きたくないんだよね。


「っという事で、帰るか!」


 現状のツズリランドをどうにかしようにも、ドラゴンを戻してからじゃないと話も出来ないよね。っというか、ここまで村に発展しているのなら、もうどうしようもないんだけども。

 勝手にわたしが作ったツズリランドに、勝手に村を作られたからって村を壊滅させる程、わたしも鬼じゃないからね。


 ドラゴンの身体を翻して、ツズリランドから離れる事にする。


「ドラゴンが逃げていくぞー!」

「我々の勝ちだー!」


「うおおおおおおおおおおおお! 愛しき女神の地を守ったぞー!」

「これでもふもふ神のもふもふのご加護が受けられるかもしれない!」

「うおおおおおおお! もふもふの加護ー!」


 逃げる訳じゃないから、そっちの勝ちじゃないよ!

 あと、熱血ファンの人達は剣を構えてるだけで、何もしてないじゃん! なんだよもふもふの加護って、そんなのあっても君達には授けないよ!




誤字報告等いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ツッコミ不在の恐怖再び。 この国(の王都)、ボケしか居ないのか? ハタから見てると、そうとしか思えないレベルで深刻だ。 兵士(と言うか騎士)達は至極大真面目にやってるのは分かる。 分かる…
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