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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、大会ライフ
87/144

P87 やらかしたのはわたしではなくシャロのせい

書きたい所まで書いたらいつもよりちょっと長い。

 久々にお風呂を楽しんだ翌日の早朝、わたしは帰る事にした。

 長々とこの街にいても仕方がないからね。目的を達したのなら、次に行かないとね。

 まぁ、ただ単に早くルル達と会いたいからなんだけれども。


「本当にもう帰っちゃうの? ツズリちゃん」


「うん、わたしを待ってる人達がいるからね。早く帰って、顔を見せてあげないとね」


「あー、幼学年のお友達たちね! 学年では調子に乗ってたみたいだけど、シャロに負けちゃったから今後は威張らないようにね!」


「あ、うん、そうだね」


 そう言えば、シルフさんの中ではそんな設定だったね。

 シャロに負けたからと言っても、幼学年が大人の大会で二位なんて、威張っても怒られない成績だと思うけれども。寧ろ、あのシャロと対等に渡り合ってたんだから、威張っていいでしょ。

 なんだったら、シャロに辿り着くまでに獣王を倒しているんだから、獣人族の中ではトップと言っても過言じゃないよね。まぁ、倒したというか、獣王さんが神獣と崇めてきて勝手に自滅したんだけどもさ。


「わしも目的の賞金をあっさりと勝ち取った事じゃし、そろそろ帰るとするかのう」


 シャロも帰る事にしたらしいが、一つ反論しておかなければならない事がある。


「いやいやいや、全然あっさりじゃなかったでしょ! 拮抗してたでしょ!」


「そうじゃったかのう。わしは余力が有り余っていたのじゃが、ツズリはわしが運んでやらんといけないくらい、消耗しておったじゃろ」


「集中力が切れただけであって、大会じゃなければまだまだ戦えてもーん!」


「負け犬の遠吠えじゃのう。犬だけに」


「犬じゃなくて狐ですぅ!」


 試合には実際に負けたわけだから、このくらいで許してやろう。

 次に戦う機会があれば、今度こそ最後まで集中力を切れさずに戦おう。ゲーム感覚に深く潜り過ぎないようにしながら、やり過ぎないように戦おう。


「シャロもツズリちゃんも居なくなっちゃうのね。寂しくなるわ」


「また近いうちに来てやるのじゃ。そうじゃのう、千年以内にはまた来るかのう」


「ふーん、そう。結構早く来るのね。待ってるわ」


 千年って全く早くないよ! わたしが十人くらい死んでるよ!

 こういうところは、長寿のエルフならではの時間間隔なのだろうか……。わたしには一生理解出来なさそうだ。理解出来たとしても、それは幽霊としてだろうね。

 うん、幽霊になるくらいなら理解しなくてもいいか。


「わたしは次の大会に出られたら出たいし、四年後くらいにはまた来るよ。他の用事が出来たら、その時はここに泊まりに来るね」


「うん、待ってるわ! 元気でね、ツズリちゃん!」


 っと言って、涙ぐみながら膝をついてわたしの高さに合わせてから、抱きしめてくれる。

 そんな今生の別れみたいにされても困るんだけれども。寂しくて泣いてくれるのは、出発の時にルルとリリナにされたい事だったんだけれども。


「わしの時と態度が全然違うではないか! わしには涙どころか、ふーん、そう、って終わっておったじゃろう!」


「当たり前でしょ。シャロとツズリちゃんと寂しさの差が違うもの」


「ぬぬぬー……。こうなったら、二千年くらい来てやらんのじゃ!」


 千年単位で増えるとかスケールがでかすぎる。でも、二千年経っても会いにはくるんだね。それはそれで仲が良いような。


「どうせ、お金が無くなったらくるでしょ。実際、今回だって前回からたったの百年しか経ってないんだから」


 たったの百年は人一人の一生分だよ! 全然たったのばないよ!

 エルフ基準の会話を聞いていると、頭がおかしくなりそうだ。


「せ、節約に節約を重ねて、千年持たせるのじゃ……」


「ぼっちのストレスで爆買いに走るのが目に見えてるわよ。そろそろ、シャロも旅なんてせずにここで暮らせばいいじゃない」


「それは出来ぬのじゃ。わしにはわしの役割があるからのう」


「またその言い訳? シャロの役割何て自分のストレス発散してるだけでしょ。はぁ、一人が好きなのをこじらせるとシャロみたいになるから、ツズリちゃんは友達と仲良くするのよ?」


「う、うん、そうだね。仲良くするよ」


 わたしもシャロと同じくぼっち属性な訳だけれども……、それはゲームの頃の話であって、今は奇しくも見た目的には同年代の友達が出来ている。

 魔物対峙や戦闘では、今も一人がいいと思ってるけど、普段の日常では皆といるのが楽しいと思えてる。なので、シャロみたいにこじらせたりはしないともさ。


「さて、それじゃ帰るかのう。ずっと帰っておらぬから、家が埃だらけになっておるやもしれぬわい」


「あー、そうだね。わたしの家も埃が積もってるかもだ。こういう時、メイドさんとか雇ってれば綺麗さを保ってくれるのかな」


 メイドさんと聞いて思い浮かぶのはノリスさんとスインさんだけど、スインさんだけは勘弁願いたい。あのあわわわメイドに任せてたら、家が壊滅していそうだ。


「それはいい考えじゃのう。どうじゃ、わしのメイドになるぬか? ツズリよ」


「やだよ! メイドも勿論ペットもお断りだよ!」


「わしが勝ったらツズリはわしのものになるって約束じゃったじゃろうが」


「そんな約束してない! 勝手に約束を結ばないでよね!」


 相変わらず強引に仲間に引き入れようとしてくるんだから、油断も隙もありゃしない。これだから、誰もシャロに付いて行かずにずっとぼっちなんだよ。ソロプレイヤーを、文字通り死ぬまで続けていたわたしが言うのもなんだけれども。


「そうよ。ツズリちゃんはシャロのものじゃなくて私のものなんだから、勝手に自分のものにしてほしくないわ」


「シルフさんのものでもないよ! わたしは誰のものでもないの!」


 わたしが可愛くて有能なのは分かるけど、誰かのもになる事なんてないんだよ。自由気ままに異世界を楽しみたいんだよ。


「ふふふ、冗談よ。長く引き留めても悪いし、私も仕事が始まっちゃうからこの辺にしておこうかしらね。また遊びに来てね、ツズリちゃん。と、ついでにシャロも」


「うん、勿論だよ!」


 シルフさんに手を振りながら、わたしとシャロは宿を後にした。


「わしはついでか」


 街の出口までの道中、シャロは納得いかなさそうな不満ありげな顔をしながら、呟いている。


「ああいう扱いされるのって、仲の良い証拠だと思うよ」


「そう思ってるのなら、素直に寂しがってくれた方が嬉しいのじゃがのう」


「まぁ、それは確かに。わたしも分かるよ、その気持ち」


 親しき中にも礼儀ありって言うし、雑に扱ったりツンツンしたりばっかりしてないで、たまには素直になってくれてもいいよね。

 リリナ、君に言っているんだよ! いつも辛辣な扱いばっかしてないで、たまには素直な気持ちを伝えてもいいんだよ!

 この思いは届く事がない思いだけどね。


「ところでツズリよ」


「ん? どうしたの?」


「なんで、わしの腰にべったりとくっついて、顔を隠して歩いておるのじゃ」


 宿を出発した時は早朝だから人が少なかった。でも今は、皆起き出して働き始めているので、人が多いのだ。つまり、決勝戦とお姫様抱っこで街中を闊歩した有名なわたし達は注目を浴びるという事だ。

 そりゃもう、そんな視線を浴びるくらいならくっつきツズリモードになるしかないよね。


「哀れなわたしを見る視線に、攻撃されているからだよ! シャロで視線を切る、シャロガード発動中だよ!」


「人を盾として使うでないわい」


 そう言うと、シャロに首根っこを掴まれて引き剥がされる。まるで親猫が子猫を運ぶ時に、咥えるかのように掴まれる。


「いいじゃんか、ケチ! お金の事以外でもシャロはケチなんだね! 心が狭いよ! 建物と建物のあの間くらい狭いよ!」


 わたしは丁度真横に合った、猫なら通れるくらいの狭い隙間を指さして言った。


「そこまで狭くはないのじゃ! わしの心は今歩いておる道くらい広いわい! ごたごた言ってないで、離れて歩くのじゃ」


 ぽいっと地面に投げ捨てられ、盛大にお尻で不時着した。

 着陸は失敗したけれども、巫女服のお陰で痛くはない。痛くはないけど、周りからの姉妹で喧嘩してて可愛いわねっていう視線が痛い!


 もう、怒った! こうなったら最終手段だ!


「シャロお姉ちゃん! わたしを守って?」


 わたしは出来うる限り可愛く、アピールした。

 ふ、シャロはお姉ちゃん扱いされるのに弱いはずだ。そして、わたし程の可愛さなら、そりゃもういちころよ!


「……いやじゃ」


 なーにをいっとるんじゃこいつはっと言わんばかりの冷たい目で、シャロがそう答える。

 そして、わたしは膝から崩れ落ちて、両腕を地面に着いた。


 き、効かない……だと……!? そんなばかな!?

 わたしの恥を忍んでの超必殺技が無効化されているとでも言うのか……!?


「ほれ、遊んでないで早く行くのじゃ」


 遊んでる訳じゃないのに。本気でやってるのに。

 しぶしぶ立ち上がり、さっきのやり取りで更に生暖かい視線を浴びながら、シャロの横を歩く事にした。


「ねぇシャロ。本当に帰るの? わたしはシャロに付いてはいけないけど、シャロがわたしに付いてくるって選択肢もあると思うんだけど」


 折角、仲良くなれた訳だし、ここで別れるのも名残惜しい。わたしと同等かそれ以上の強さを持ってるってだけでも、貴重な逸材だと思う。


 正直、わたしってどう考えても「普通」じゃないからね。転生している時点でそうなんだけど、明らかに人とも違うし、獣人という括りではあると思うけれども、希少種とか言われてるしね。そして、シャロも「普通」じゃない。エルフの希少種らしいけど、それを念頭に置いて考えても普通じゃないと思う。


 わたしとシャロはどことなく似ているのだ。そう考えると、もしかしたらシャロも転生とかしていたりするのかもしれない。同じ異世界から来たのかもしれない。

 神様から怪力と血魔法の能力を貰ったとか……、いや、そんな能力を授けるのは神様じゃなくて悪魔だな。間違いなく。

 わたしみたいにゲームでの設定がそういう設定だったとか、そんな感じかもしれないね。


「それも楽しいかもしれぬが、人間とは仲良くなれぬわい。理由はいくつかあるが、そうじゃのう……」


 シャロは一度間をおいてから、再び話し出した。


「人間は時間の流れが短すぎるのじゃ。長くて百年、わしにとってはあっという間じゃ。仲ようなっても、先に旅立たれれるのは目に見えておるからのう」


「あ……、そうか、そうだよね。ごめん」


 よく、不老不死になりたいって言うのを聞くけど、自分は不死だとしても周りが同じ不死じゃなければ、自分は一人になっていく。仲良くなっても、老いて死ぬのを見届けなければならなくなる。そして、自分はいつまでも生き続けてしまう。また新しく仲良い人が出来たとしても、それの繰り返しだ。


 長寿には長寿の辛い部分があるのだ。ちょっと考えれば分かる事だった。シャロが一人でいる理由は、そういう理由だったんだね。

 いや、でも待てよ。自分で拉致までして仲間を増やそうとしているし、わたしも引き入れようとしていたから、別にそうでもないのかもしれない。


「気にする事ではないのじゃ。長年生きておると、そういう別れも慣れて来てしまうものじゃ。それに、同じ長寿どうしなら気にする事も無しいのう」


 確かに、エルフがいる世界だから絶対に独りになるって訳でもないか。普通の人と仲良くならなければいいだけだしね。

 エルフって森の奥地に住んでいるって印象だったけど、そういう理由があって関わらないようにしてたのかな。まぁ、この世界ではエルフは国に籠ってるって事はないみたいだけどね。でも、エルフの国自体は、もしかしたら鎖国とかしてるのかな。


「ツズリも人間と深く関わっておるみたいじゃが、気を付けるのじゃぞ。後々に後悔する事になるやもしれぬからのう」


 わたしはその逆か。獣人は寿命が短いとか言ってた気がする。つまり、わたしの方がルル達より先に死ぬから、悲しい思いをさせて後悔するなって事かな。

 うーん、まぁそれなら別に良いかなぁ。先に立たれて、わたしが悲しむ方が嫌だ。辛い思いするのは、ルル達に譲るよ。


「アドバイスどうも。まぁその時になったら考えるよ」


「ふむ、そうか。まぁ、辛くなったらわしがツズリを面倒見てやるから、わしに会いに来るとよい。ペットとして飼ってやるからのう」


「それはやだ!」


 なんでペットとして死ななきゃいけないんだ。そっちの方が精神的なダメージでかいでしょ。そんな思いで死んで生まれ変わったら、次の人生は完全なる小動物だよ。まごう事なきペットだよ。


「因みにだけど、シャロって一回死んだ事ってある?」


「はぁ? 何を言っておるのじゃ。死んだらここにおらんじゃろうが。そんな常識的な事も分からんのか」


 うん、そりゃそうだよね! いや、分かってたよ、そんな常識的な事!

 でも、実際その非常識な事がわたしに起こってるんだよね。気が付いたらゲーム身体のままで森にいたから、死んだ記憶はないんだけれども。


 シャロもわたしみたいに転生したとか思ってたけど、そうではないみたいだね。ここは異世界だし、神様得点なんかなくても、シャロみたいに素で強い人はいるって事か。

 そうじゃないと、魔物やドラゴンやらがいる世界で人が生きていけないよね。


 そんな話をしていると、街の切れ目が見えてきた。結界が張ってある街の端だ。


「あ、結界ってあの黒いマント着ないといけないんだっけ? 耳と尻尾がきついし、裾が長いから来たくないんだよね」


 シャロに後ろを踏まれてこかされたりもするし、出来れば着たくはない。結界を通る瞬間だけでいいから、着るのは一瞬だけなんだけれども。

 シャロはいつも着ているからいいけど、わたしはこれを常に着とくっていうのは無理だ。


「んー、大丈夫じゃろ。外からは防ぐが、内からは魔物を追い払って外に出すために通れるはずじゃ」


「なるほど。内側に魔物が居たら、街で戦う事になっちゃうもんね」


 戦うなら被害が少ない外側で戦うのがベストだ。結界を通り抜けないと外には追い出せなくなる。

 っという事なので、わたしとシャロは結界を余裕のスルーだ!


 結界を通り抜ける事は出来た。通り抜ける事だけは。

 ただ、わたしが通った瞬間に、結界が赤く光り、ビービーっとまるで警告音のような、緊急事態のような音が鳴り響いた。


「ええ!? なんで!?」


「しまったのじゃ! 通る事は出来ても、魔物と似た魔力を持つツズリが通ったって事は、魔物が通ったと思われて警報は鳴るのじゃ!」


「問題ないって言ったじゃん! シャロの嘘つきー!」


「す、すまんのう……。慌ただしい別れになるが、このまま逃げるのじゃ! 早くしないとゴーレムと街の騎士が押し寄せてくるのじゃ!」


 襲ってきたとしても倒せると思うけど、そんなめんどくさい事はしたくない。


「そそ、そうだよね! 逃げるしかないよね! また、どこかで会おうね!」


「うむ! その時はツズリをペットにして見せるのじゃ!」


「だからやだよ! じゃあね!」


「またの!」


 慌ただしい最後になってしまったけど、わたしとシャロは別々の方向へと走った。もとい逃げた。

 シルフさん辺りは、シャロがやらかしたとでも思ってるんじゃないかな。実際はわたしだけど、シャロが嘘付いたせいだから、実質シャロのせいで正解だ。




誤字報告等いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >名前:ツズリ >種族:妖怪(妖狐) 獣人じゃ、ないんだよなぁ(白目) 本人は獣人と自認してるけど、寿命は絶対に獣人より長い。
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