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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、大会ライフ
64/144

P64 囮大作戦

 黒ゴブリンニ十体くらいと大きい黒ゴブリンが一体が新たに森の奥から現れた。


 うーん、黒ゴブリンのボスっぽいなぁ。ワーウルフ討伐の時にも黒いのがボスだったしね。

 黒ワーウルフを思い出すと、中々に強かったからあの大きいのも手強そうだ。黒系の魔物だから魔法も使ってくるんだろうね。


 黒ワーウルフの時は一対一だったし、尚且つ魔法をフルに使えたから、そこまで苦労せずに勝てた。けれど、今回は前とは違って、妖力が心もとない。


 勝てるかな……。刀だけじゃ辛そうだね。


 いざとなったら空を跳んで逃げる事は出来ると思う。

 でも、逃げるとか選択したくない……! ゲームで上位になるくらいのプレイヤーのわたしが逃げる何て言う選択なんて出来る訳がない……!

 ここはゲームではないから逃げても良いんだけど、このゲームからの身体で逃げるのはダメだって言う、わたしのどうでもいいプライドが邪魔をする。


 戦うなら勝つ……! それがゲームの頃からのわたしのプレイスタイルだ!


「いよーっし! 気合が入った所で第二試合と行きますか! リリナ弁当は絶対に死守するよ!」


 最初の三体はリリナ弁当目的かもしれないけど、目の前にいる黒ゴブリン軍団は仲間の敵討ちだろうから、弁当を死守する必要はないと思うけどね。

 守るって言っても収納魔法に仕舞ってあるから、弁当を守りながら戦う訳ではない。弁当守護クエストではない。


 下手に突っ込んでも多勢に無勢だ。群れ相手にはでかい魔法をまとまっているところに撃ち込むか、遠距離で対処するのがゲームでは基本だったけど、現状わたしには刀しかない。

 無理をすればでかい魔法を撃てなくはないけど、倒しきれなかったらわたしの負けが確定すると言っても良い。


 っという事で、相手の出方を待つ事にしよう。


 黒ゴブリン達はわたしが動かないとみると、一斉に魔法を放ってきた。

 まぁそうだよね。魔法が撃てるなら先ずは魔法で牽制してくるよね。知ってた。


 右に跳び、左に跳び、後ろにクルッと回転して左に飛ぶ。

 別に踊っている訳ではないんだよ。攻撃を躱しているんだよ。踊るように躱しているんだよ。


 しゃがんで、右に跳んで、上に跳ぶ。風床も駆使して立体的にも躱していく。躱しきれないものは刀で弾く。


 うーん、つらい。躱したり防いだりするだけで精一杯だよ。

 そりゃそうだよね。如何せんニ十体からの魔法攻撃が絶え間なく飛んでくるんだもん。反撃する隙が見当たらない。


 どうにかして、隙を作る事が出来ればいいんだけどなぁ。何かいい方法はないだろうか。

 わたしは躱しながら頭を回転させて考える。


 こういう時PTプレイだと、もう一人が囮になってっとか出来るんだろうけど、生憎とわたしはゲーム時代からの生粋のソロプレイヤーだ。囮になってくれるような人はいない。

 いや、待てよ。いないなら作れば良いじゃないか!


 妖力は極力温存をしておきたいけど、致し方なし。使うのは光魔法の虚像。光で出来た立体映像だ。

 人形の映像を作れば囮として使えるはず……!


 前に作ったのはコタビだけど、コタビを囮にするなんて事は出来ない。囮にしてもいい人を選ぼう。

 わたしの中で囮に使っても良さそうな人と言えば、そう、あの人しかいない。

 囮と言ったらあいつしかいないじゃないか!


「いでよ! パルパルデコイ君一号!」


 そう! パルパルだ!


 この時の為に出会ったと言っても過言ではない存在。

 そう! パルパルだ!


 囮になって攻撃をくらっていてもなんとも思わなくて済む存在。

 そう! パルパルだ!


 突然現れた映像パルパルに黒ゴブリンの魔法攻撃が向かって行く。当たっても、映像なので通り過ぎるだけだから消える事はない。

 よし、作戦成功だ。半分はパルパルデコイ君一号がヘイトを引き受けてくれている。


 この隙に残りの十体をパパッと何とかしなければならないね。まぁ、十体ならばどうとでも出来るかな。さっきのニ十体の猛攻撃に比べたら、どうって事ないや。


 パルパルデコイ君一号が狙われている隙にわたしは残りの十体に接近する。半分に減った魔法の弾幕を掻い潜り、先ずは一体斬って凍らせる。

 そのままの勢いで二体、三体と刀を振り凍らせていく。


「魔法に頼ってばかりじゃ、接近された時に対処出来ないよ。わたしみたいに近接も出来る魔法職にならないとねっ!」


 注意してあげつつ四体目に刃を下す。注意しても言葉は通じないし、凍っているから意味はない。ただ何となく言ってみただけ。

 っと思ってたけど、棍棒を収納魔法で取り出した黒ゴブリンが迫って来た。


 あれ? もしかして言葉通じてるの!?

 いや、そんなはずはないよね。恐らく、他の仲間が成す術もなくやられているのを見て、学んだんだ。

 ゴブリンはずる賢い。何故賢いか。それは人をの真似をして学習するから。人の知識を取り込み学ぶからだと思う。

 動物で人に近いのは猿だけど、魔物で人に近いのがゴブリンなのだろう。猿も人の真似をして学ぶ事がある。ゴブリンも一緒だ。

 まさか収納魔法まで扱うとは思ってもみなかったけどね。


 棍棒を持ってわたしに迫ってくる黒ゴブリン。

 うん、実にゴブリンらしいゴブリンだ。ゴブリンと言えば棍棒を持っているというイメージがある。


 ゴブリンが棍棒を持ったからって負けるわたしではないよ。達人級に棍棒を扱うゴブリンならいい勝負が出来るかもしれないけどね。

 棍棒の軌道を刀で逸らし、体勢が崩れた所を狙って刀を振るう。


「よっし! これで、五体目! って、あぶなっ!?」


 意気込んだところに、魔法の弾幕が飛んできて、寸前のところでわたしはそれを躱した。

 攻撃をしてきたのはさっきまでパルパルデコイ君一号に攻撃をしていた黒ゴブリン達だ。パルパルデコイ君一号が何もしないし、攻撃をしても意味がないと分かったのか、パルパルデコイ君一号に行っていたヘイトがわたしに戻って来たのか。


「もうちょっと時間を稼いでよ! 全くぅ、パルパルは役に立たないだからぁ」


 ぼけーっと突っ立っているだけのパルパルデコイ君一号は、残していても仕方がないので消しておく。次の機会があればもっと活躍する事を願う。


 残りは黒ゴブリン十五体とボス一体。今のところボスは何もしてこない。好都合だ。

 ヘイトが戻って来たけど、折角接近しているのだから、ここで引いてはダメだね。このまま押し切ろう。


 わたしの近くにいる黒ゴブリンは魔法を諦め、棍棒を取り出している。そして後方からは魔法が飛んでくる。

 なんだろうこの状況……。黒ゴブリンが連携が良く出来ている冒険者PTで、わたしが狩られている魔物役みたいな気分は。

 ゴブリン目線からしたら、まんまその通りなんだろうね。わたしは敵で狩られる側だ。


 パルパルが働かなくなったから、またわたし一人でどうにかしないといけない。パルパルデコイ君二号を召喚したとしても、この黒ゴブリン達にはもう効かないだろうね。


 強い魔法はその分妖力も使うから、ボスまで残しておきたい。ボスが参戦する前にパパッと取り巻きを片付けないとね。

 先ずは近接に切り替えている黒ゴブリンからだ。


 切り替えているのはさっきわたしが戦ってた残り五体だ。近接相手の五対一。それに加えて隙あらば魔法を撃ってくる後方部隊。

 まぁ勝てなくはないね。わたしが何年ソロプレイヤーをやってたと思っているんだ。モンスターの群れに独りで出向く事なんてあるあるだよ。魔法が使えなかった場面だって多々あったよ。


 戦闘に関してはゲームだ。ゲームの感覚を思い出せ。

 わたしの身体はゲームの頃のままだ。ゲームでの戦闘経験を思い出せ。


「……よし。いくよっ」


 一体目にグッと素早く近づく。近づかれた黒ゴブリンは勿論棍棒で防ごうとしてくるけど、わたしが狙うのはこいつではなく、その隣のやつだ。

 まさか自分に来ると思っていなかった黒ゴブリンは、ガードが間に合わずに刀に斬られ凍っていく。


 それを見て他の黒ゴブリンが棍棒を振り上げ攻撃してくる。わたしはそれを躱すがその隙を付いて魔法が飛んでくる。だが、その魔法は凍ったゴブリンに当たってわたしには当たらなかった。

 子供と間違われるような小柄な身体の利点はこういうところだよね。氷像となったゴブリンを盾にする事も出来るんだから。


 そしてわたしはまた接近していく。後方の魔法部隊は仲間の黒ゴブリンとわたしが近い事でなかなか攻撃に転じる事が出来ていない。

 黒ゴブリンの仲間意識が高くて助かった。このままパパッと残り四体の棍棒ゴブリンを倒そう。


 そう意気込んだ時、ボスゴブリンが魔法を放って来たのが目の端に捉える事が出来た。


「うっそ!? 撃ってくるの!?」


 仲間意識はどうしたんだよ。ボス的にはぐずぐずと戦っているのに嫌気がさしたのか?

 ポンコツなのが上司だと大変だね。まぁわたしには関係ないけど。


 ボスゴブリンが放った魔法は炎魔法の弾系だ。普通の黒ゴブリンの魔法よりも一回り大きい。

 ボスなだけあって他の魔物よりも魔力が高いって事か。でもまぁ、わたしは躱すだけでいい。ボスにこの黒ゴブリン達を倒してもらおう。


 っと思ったけど、何故か炎の弾が止まった。わたしと黒ゴブリン達が戦闘をしている真ん中で静止した。


「え? 何これ?」


 ぶつかったらダメージを受けるオブジェクト的なやつ?

 確かにこれがこんなところにあったら戦いにくいけど、それは敵も一緒だと思う。設置する意味が分からない。


 停滞している弾がカッと光った時にはもう遅かった。逃げるという反応が間に合わなかった。


「あ、やばっ!? これ爆破まほ……にゅふんっ!」


 ボスゴブリンが放って停滞していた弾が爆発した。ただの炎の弾ではなく、爆発魔法だった。

 わたし含め、黒ゴブリン諸共爆発に巻き込まれた。


 爆風によりわたしは吹き飛ばされ、地面にコロコロと転がった。でも、衝撃だけで痛さは全くない。ダメージを受けていない。


 この巫女服、超優秀過ぎない!? ゲームでこんなの防具実装されてたらぶっ壊れだよ!

 ゲームだけではなく、寧ろ、この魔法の世界という現実世界の方がこの装備はぶっ壊れ性能か。


 もはやこれを着ていれば、どこで何に襲われていようと気にせずに寝ていられるのでは……。

 いや、それはないか。ゴブリンみたいに賢い魔物なら脱がして攻撃してくるかもしれない。脱がされてしまえば装備の効果は発揮されないから、ひとたまりもないね。

 それに、昨日の鼠だってそうだ。あいつらは魔力を食べるから装備していようが関係なさそうだ。


 欠点があろうが今は関係ない。この巫女服に助けられた事に変わりはない。


 わたしは起き上がり、再び黒ゴブリン達を見据える。

 先ほどまで戦っていた棍棒を持った黒ゴブリン達は氷像含め消し飛んでいる。


 ま、まぁボスゴブリンにゴブリンだけを倒してもらおう作戦は成功だね。結果的にそうなったのだから成功だ。うん。


「ゴブリンだからって甘く見てたよ。そりゃもうケーキのように考えが甘かったよ」


 まさか爆発魔法なんて使ってくるとは思っても見なかった。爆発は流石に刀じゃどうしようもない。

 黒いワーウルフを倒した事があるからと言って、今回も簡単に倒せると思っていた部分もあった。ゴブリンなて初級モンスターだからってなめていた部分もあった。

 見通しが甘々だ。


「妖力温存何て言っている場合じゃないね。ここからは本気でパパッと終わらせにいくよ」


 爆風で距離を離されたのは好都合だ。ここからは魔法を使って戦おう。

 ずっと刀で戦ってきたから、向こうはわたしが魔法を使って戦う方がメインだとは思ってもいないだろうね。


 先手必勝っという事で氷の槍を黒ゴブリンに向け放つ。

 何体かには当たったが、ボスゴブリンには爆発魔法で相殺されてしまった。爆風で数発、わたしの攻撃が砕かれた。


 反撃とばかりに生き残った黒ゴブリン達とボスゴブリンが魔法を放ってくる。

 数的にはまだまだ不利な状況だけど、魔法なら相手の数が百だろうと負けはしない。今度はわたしが全て相殺してやった。

 でも、相殺し合うだけじゃ意味がないよね。ただただ妖力を無駄にしているだけだ。余裕がある間に確実に倒せるでかい魔法をかますしかないね。


 ムカデを倒した時の電撃でもいいけど、あれは水魔法も使うから実質二つの魔法を使う事になるからダメだ。とすると、やっぱ氷魔法かなぁ。ここまで氷しか使ってないから氷縛りでいいかもしれない。

 炎魔法でも良いけど、森ごと燃えるからね。それに爆発魔法を使うんだから炎体制とか高そうだ。

 氷魔法は同じ黒系魔物の黒ワーウルフには効かなかったから、ちょっと不安要素はある。けど、合成魔法を使える妖力は残ってないし、単体の属性で一番強いのは氷だ。


 炎魔法が高いボスだと考えて氷体制じゃないって博打を打つしかないね。外れたらその時はその時だ。


 よし、先ずは接近しよう近い方が火力が高い。

 ボス向けて氷の槍を放つ。ボスは勿論、爆発魔法で相殺してくる。それでいい、それが狙いだからね。

 爆風で視界が土煙で見えづらくなっている隙に、煙に紛れて一気に距離を詰める。ボスの真ん前まで一気に詰め寄る。


 そこでテリトリーを黒ゴブリンを囲える範囲だけ発動する。無駄に広くする必要はない。

 そしてテリトリー内の全てを凍らせる魔法を使う。ワーウルフ討伐の時にお世話になった魔法だ。

 真ん中に近いほど、つまりわたしと距離が近いほど威力は高い。だから、確実に仕留める為に近づく必要があった。


「世界よ! わたしの冷気で凍れ! ……なんつって」


 自分で言って恥ずかしくなった。いや、必殺技的な場面って何か言いたくなるじゃん。


 テリトリー内の黒ゴブリンはボス含め凍り付いている。

 しばらく眺めていても、ボスゴブリンは黒ワーウルフのように氷を割って復活はしてこない。


 わたしは妖力を使い切った疲労でバタンッと背中から地面に倒れた。


「はぁ……。なんとか勝てたぁ。もう一歩も動けないよ」


 疲れてぼやけてきた目で空を見上げる。気持ちいい青空だ。

 大会に出る為だけの移動の旅だったのに、何でこんな事になっているんだか。


 ぼーっと、空を見ていると、空に影が出来ている。曇っている訳ではない。雲ではない。

 その影は段々と大きくなってくる。そして、その影の正体がぼやけた目でも正体が分かった。


 鳥だ。物凄く大きな鳥。

 真っすぐわたしの方に向かって、降りてきている。


「ま、まじかー……」


 もうそれしか言葉が出ない。わたしには戦う妖力も戦う体力も残ってないよ。


 絶望に打ちひしがれている、そんなとき、横から更に別の影が跳び出してきた。


 そこでは確認して、わたしの意識は途切れた。




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