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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、大会ライフ
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P56 お金を求めて冒険者ギルドへ

 どうも最近、お金を稼げていない気がする。

 いや、お金は稼がなくても一生を普通に暮らせるだけのお金はあると思う。ワーウルフ討伐に一体目のムカデ、そして何よりゲームでのお金を神様が変換してくれたお金があるからね。

 でも、それでも、お金を稼ぐに越した事はない。人生何があるか分からないからね。


 女神だと思われている事の欠点一つとして、お金が稼げないという欠点がある。キャンプの時の盗賊だって、冒険者ギルドを通していないから無償で捕まえたみたいなものだ。

 女神だから国を守護して当然、悪党を倒して当然みたいな流れが出来てしまっている気がするんだよね。

 二体目のムカデに関しては物々交換だったから、稼げてはいないけど節約にはなったけどね。


 世の中の神様はどうやってお金を稼いで得いるのだろうか。神様だから欲しい物は自分で作れたりするのだろうか。食べなくても生きていけているのだろうか。


 お供え物とか、お賽銭? 

 わたしがやるとしたら、詐欺になってしまうよね。だってわたしは偽物なんだから。

 お供え物に関しては、冒険者ギルドに行くと、お供え物ですと言ってカレンさんがお菓子をくれている。ただ単に、わたしの見た目が子供だから可愛がっているだけなのかもしれないけどね。


 っという事で何か稼げそうな依頼がないか、冒険者ギルドに来てみた訳だけども。


「まぁないよね」


 並んでいる依頼はいつもの依頼ばかりだ。森での魔物討伐、油スライムの捕獲に商人の護衛等々。


「相変わらず代り映えしない内容だね」


「そりゃそうですよ。女神さんが大物は倒してくださっていますからね!」


 依頼が貼られている掲示板を眺めていると、カレンさんに声を掛けられた。

 まぁそうか、ムカデみたいな魔物が再々出てくる訳ないよね。って思ったけど、ツズリランド作っている時に二体目が出て来たんだった。あれは番だからだろうけど、再々出て来たと言える。


「倒したくて倒している訳じゃなくて、わたしがいる所に大物が出てくるんだよ」


「女神さんともなると呼び寄せてしまうんですかね? 女神さんの強さを大物の魔物が感じ取っているとか」


「ちびっ子のわたしが一人でうろうろしているから、格好の的になっているだけじゃないかな」


 呼び寄せるとかそんなめんどくさい体質やめてほしい。わたしが街に住むだけでその街に危険が及ぶって事じゃないか。

 その都度わたしがパパッと倒せばいいだけなんだろうけど、危険な事が起きないに越した事はないよね。平和が一番なんだから。


 自分で言うのもなんだけど、わたしの今の身体は子供だ。ちびっ子だ。だから盗賊にも嘗められて、話し合いのはの字も無く襲われる事になった訳だからね。

 魔物も盗賊と同じ思考だったんだろうね。子供だから弱いとでも思ったんだろう。人を見た目で判断してはいけないという事だ。


「あー、確かにそうかもしれませんね。女神さん強さは兎も角、見た目は子供ですもんね。あ、お菓子いります?」


 だからと言って子供扱いはしないでほしいものだ。これでも中身は大人なんだからさ。


「……いる」


 まぁ、貰うんですけどね。貰える物は取り敢えず貰っておく。勿体ないからね。決してお菓子に釣られたとかではない。そう、決して。


「そう言えば、女神さんはもう知っていますか?」


「ん? わたしは女神だよ? ルルにこんな常識的な事も分からないんですかって言われるくらいには、何でも知ってるよ」


「何も知らないんですね」


 まぁそうだけどもさ。そんなにはっきりと言わなくてもいいじゃない。


「で、何かあったの?」


「実は最近、冒険者の中で噂になっているのですが、森が縮んだって話があるんですよね。木が独りでに歩いて移動しただとか、森そのものが魔物でその魔物が移動したんだとか、木を食べる巨大な魔物が現れたんだとか色々と噂になっているんですよね」


「森が縮むって、そんな事ある訳な――」


 わたしはその噂を笑いなが否定しようと思ったところで、どこかで見た現象だなと気が付いてしまった。わたしの記憶の片隅に、森が縮んでいる光景が何故か鮮明に浮かんでくる。まるで見た事があるかのように浮かんでくる。


 ……ツズリランドに持って行った時だ! 確かに森から飛び去るとき森が縮んでいた!

 なんて事だ。まさかわたしが木を持って行った事でそんな噂が流れていたとは……。この街の噂の発生源って大体わたしな気がするな……。

 でも今回は大丈夫。わたしではなく魔物の仕業になっている。存在しない魔物が身代わりになってくれている。


「森が縮むなんて不思議な事もあるものだね。もしそんな魔物が見つかったらわたしが討伐するよ」


 そんな魔物はいないので、発見される事はないだろうけどね。なんてったって森を縮めた噂の魔物はわたしなんだから。

 いや、わたしは魔物じゃなくて人なんだけれども。獣人なんだけれども。


「森位の大きさの魔物でも、女神さんだったら倒せそうですね! よろしくお願いします! 新しい情報が入り次第女神さんにご報告しますね!」


「う、うん。任せといてよ」


 わたしに辿り着く事はないだろうけどね! ふはは、頑張って情報を探してくれ!


「ところで今日は何しに来られたんですか? また、冒険者の訓練でも行うんですか?」


「いや、それは早朝の運動がてらやっているだけだから、冒険者が依頼を行っている時間帯にやる事じゃないよ」


 まぁ、チラホラと今日は仕事をする気分じゃないのかギルドでたむろっている人達はいるんだけどね。仕事する気分じゃないのなら、訓練する気分でもないのだろう。

 冒険者業の良い所はこうやって働くか働かないかを自由に決められるところだね。魔物が見つかるかどうかで収入が安定しなかったりする欠点はあるけど。


「確かにそうですね。訓練する人がいないと訓練になりませんもんね」


「別にわたしはカレンさんを訓練しても良いんだよ?」


「私は事務員なので訓練する必要がありません! 遠慮しておきます!」


 っと、声を高らかに宣言したカレンさんの後ろに筋肉の魔物が……じゃなくてギルマスであるガイラさんが現れた。


「あらぁん。事務員でも筋肉は必要よぉん。カレンもそろそろ、アタシみたいに筋肉を付けなけらばならないんじゃなくてぇん?」


「受付に筋肉なんて必要ありませんよ!」


「そんな事ないわよぉん? 冒険者同士のいざこざを止めに入ったりしなければならないものぉん」


「それはギルマスの専用の仕事ですよ! ギルマスの筋肉の唯一の使い道じゃないですか!」


「筋肉は使うだけのものではないわよぉん。見て良し触ってよし聞いてよし、そして魅入られても良しの素晴らしい筋肉美! よぉん!」


 聞いてよしってなんだよ。筋肉を聞くって分かんないよ。


 自慢の筋肉をアピールしながら、ガイラさんがカレンさんに筋肉の必要性を説いている。それに対してカレンさんは絶対に必要ないと断固拒んでいる。

 まぁ実際問題、受付に筋肉成分はいらないと思う。冒険者も受付に寄って来なくなりそうだ。

 それに、カレンさんには筋肉とは別の肉が既にもう胸に付いている。わたしが見て来た中で一番の大きさの物を二つ取りつけているのだから、筋肉なんて必要ない。

 一体どうやったらあそこまで大きくなる事が出来るのか、それをわたしにご教授願いたいものだ。


 それにしても、こうも平和だと女神としてでなくてもBランク冒険者としても受ける依頼がないから、当初の目的のお金を稼ぐって事が出来ないな。

 他のBランク冒険者の人ってどうやって稼いでいるんだろうか。


「ねえ。高ランク冒険者ってどうやってお金を稼いでるの? 高ランクの依頼何てそうそうないよね?」


「高ランクの人らは色々な場所に行き旅をしているわぁん。ここらにはいないけどぉん、上級の魔物が住んでいる地域とかに行けば稼ぐのに苦労はしないからねぇん」


「なるほど。自らが上級の魔物を求めて旅に出ているんだね」


 何て言うかゲームと同じ感じだね。言わばこの街を初心者がいる街とすると、レベルが上がって高レベルになっている人達は、自分に見合ったレベル帯の街に移動するって感じかな。


「そもそも、普通は高ランクになるになる為にはそういう魔物がいる所に行かなければ上がれないのよぉん? 女神ちゃんは珍しいルートでBランクに上がったって訳ねぇん」


「そうなんだ。運が良かったような悪かったような微妙なところだね」


 ワーウルフのお陰でBランクに上がれたけど、ワーウルフのせいでBランクになったから受ける依頼がない。それプラス自業自得の女神という役職が加わった事で更に受ける依頼がない。

 つまり、全てワーウルフのせいだ。許すまじ。


「私からすると断然運が良かったと言えますね。女神さんがいなければ大変な事になっていたことは間違いないですし、女神さんがいた事は運が良かったと思ってますよ!」


「そうねぇん。あの時は女神ちゃんの加護のお陰で困難を突破出来たわねぇん」


 そう言いわれるとなんかちょっとだけ照れくさい。わたしは褒められる事にはあまり慣れていないんだよ。

 このままこの話を続けていたら顔が真っ赤になりそうなので、話題を逸らす。


「その上級の魔物ってどこにいるの? この辺にはいないんだよね?」


「滅多にいないわねぇん。魔族の領域に近づくにつれて魔物が凶悪化するのだけどぉん、ここは魔族領からかなり離れているから、そこまで強い魔物はいないのよぉん」


 魔族領かぁ。何か前にリリナが魔族がいるとか何とか言ってた気がする。確かこの世界には魔王がいて、何年かに一度勇者が云々言っていた気がする。


「そんな強い魔物が居ても困りますけどね。安心して暮らせませんよ」


 そりゃそうだ。高ランクの冒険者が沢山いる訳でもないし、それこそ勇者が常に滞在している訳でもないのだから、上級の魔物がこの辺りでうじゃうじゃ居たらとても暮らせたものじゃない。商人も危険を冒してまで物資を届けるって事もしないだろうし、食糧問題にも頭を抱えてしまうね。

 ここが魔族領の近くじゃなくて良かったよ。まぁそもそもそんな場所に街なんて作らないだろうけどね。作らないというか、作れない。


「そっかー、じゃあ旅にでも出ないと稼げないのか」


「あらぁん? 女神ちゃんはお金に困ってるのかしらぁん?」


「困ってはいないんだけど、減っていくだけってのは面白くないからね」


 お金と時間は有限だ。時間は増やせないけど、お金は増やす事は出来るのだから増やせる時に増やしておきたい。


「えっ!? 女神さん、旅に出るんですか!?」


「いや、旅に出るってほどお金を稼ぐ事に執着していないから旅には出ないよ。冒険者として稼ぐならどうすればいいのか気になっただけだよ」


 それに、わたしが旅になんて出たらルル達が悲しむだろうからね。死に別れる訳ではないけど、一時の別れでも悲しい物は悲しい。それは変わらない。


「はぁびっくりさせないでくださいよ。女神さんはすっかりこの街の象徴みたいになっているんですから! いなくなるなんて言わないで下さいね! 皆、悲しみますよ!」


 確かに、ルルとリリナに頼まれてこの街の領主の屋敷の門前に狐の置物を置いたり、この街一番の料理が出る宿の前にも狐の置物を置いたりしたよ。でも勝手に街の象徴にはしないでほしい。名物狐にしないでほしい。


「お金に困っても助けになれる事はないだろけどぉん、筋肉に困ったらアタシに言うのよぉん? ムッキムキになる方法を教えてあげるわぁん」


「それはわたしも全力で拒否させてもらうよ。わたしにはムッキムキよりも、このもっふもふの方が性に合っているからね。それに、同じ肉関連ならわたしはカレンさんに教わりたいよ」


「私に筋肉はありませんよ!」


「筋肉の話はしていないよ! その胸にある脂肪の塊の事を言っているんだよ!」


 わたしはカレンさんのぽよんっと強調されている大きい胸を指さして指摘する。

 カレンさんに筋肉は求めていないし、わたし自身も筋肉を求めてはいない。筋肉を求めているのはガイラさんただ一人だけだ。


「あらぁん。胸ならアタシにだってあるわよぉん?」


「それは胸筋だよ! わたしが求めてる胸じゃないよ!」


 ガイラさんが胸を強調してくる。ぽよんっじゃなくてムキッと強調してくる。

 まぁ強調できるだけいいよね。わたしなんてぽよんもムキでもなくて、ペタンだもの。って、やかましいわ!


「胸が気になるとか女神さんも女の子ですねぇ。胸を大きくする為にはですね」


「うんうん!」


 気になる。これだけ大きくなる方法、凄く気になる……!


「ズバリ、睡眠ですね! 寝る子は育ちますよ! 仕事中でも隙あらば寝ている私が言うので間違いないですよ! この前もサイズが合わなくて下着を大きいのに変えましたからね!」


 な、なんだと……! この期に及んで更に大きく成長したというのか……! 睡眠……恐るべし効果!


「へぇ……。カレン、あなた仕事中に寝ているって言ったかしらぁん?」


 ガイラさんは聞き逃していなかった。カレンさんがついつい言ってしまった事を。

 ピキピキと、いやムキムキと怒りを露わにしている。


「いやーそれは言葉の綾と言いますか、何といいますか。はははー」


 引きつった苦笑いで誤魔化そうとしているけど、まぁ無駄だろうね。


「カレンはやっぱり鍛える必要があるわねぇん。さぁ、裏で特訓でもしましょうかぁん?」


「いーやーですー! 離してくださーい!」


 カレンさがガイラさんに担ぎ上げられて連行されてしまった。

 さらばカレンさん……。あなたの事は、あなたの胸の事は忘れないよ……。わたし、ちゃんと睡眠を取るね。


 冒険者としての仕事は特に見つからなかったので冒険者ギルドを後にする。

 女神って、稼ぐの大変だね。何か対策を考えなくちゃ。




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