P52 リリナに襲い掛かる美少女達
盗賊は騎士門から入って直ぐの広場に輸送した。門から入ったって言っても上空から入ったから門は通ってないけどね。
その辺にいる騎士に声を掛けて、檻魔法を解除。最初は解除せずにそのまま置いていこうと思ったけど、檻を壊せないだろうからちゃんと解除する事にした。
盗賊を開放したら暴れだすかなと思ったけど、数人気絶してたり呻いたまま横にへなって倒れてたりで全く暴れだす気配はなかった。どうやら、空の旅で疲れたらしい。
歩くよりも数倍楽だろうに、盗賊団は鍛え方が足りないね。
「ドラゴンに引き続き、盗賊団まで捕まえてくださるとは! 女神様は働き者ですな! 感謝しますぞ!」
「あー、うん。どうって事ないよ」
第二騎士団長のゼブランドさんがそう言って感謝してくれるけど、わたしは働きたくて働いている訳ではない。ムカデも盗賊も向こうから勝手にわたしの所にやってくるだけだ。飛んでくる火の粉を振り払っているだけなんだよ。
ゲームのイベント事は好きだけど、向こうから勝手に来るのはイベントではなく厄介事だ。この世界はその厄介事に巻き込まれる事が多すぎて困る。
巻き込まれるというか、わたしのとこにやって来るという感じだ。そう思うと、わたし自身が厄介事を引き連れているみたいに聞こえるな。わたしは特に何もしてないというのに。
盗賊を騎士にプレゼントしたので、わたしはそそくさとツズリランドに戻る。
早く戻らないともしかしたら別グループの盗賊か魔物でも来てたらいけないからね。わたしが皆を守るって言ったんだから怪我でもさせたら大変だ。
家の中は安全だけど、こんな世界だから何が起こるか分からない。警戒は必要だ。
「戻ったよー! 皆無事!?」
「お帰りなさいなの! 無事なの!」
「無事ですわ! 皆で神々の遊戯、リバーシで遊んでおりましたのですわ!」
「こっちは何事もなかったみたいだね。良かった良かった」
リバーシはこの家にも置いてあるのでそれで遊んでいたらしい。盗賊が攻めて来たというのに悠長な事だね。それだけわたしを信用してくれてるって事かもしれないけどね。
「ツズリ! 敵襲はどうだったんですか!?」
「二十人くらいの盗賊団だったよ。なんかここをアジトにしようって企んでたみたいだから、パパッと捕まえて騎士に差し出しといたよ」
「流石ツズリ様なの!」
「ツズリは怪我しなかったですか!?」
ルルとコタビ、二人の反応の差が露骨に出てる感じだね。
コタビは女神が盗賊になんてやられる訳がないっていう圧倒的信頼をもって倒せるのは当然と思っている。
ルルは慈愛に満ち溢れたその優しい心でわたしが怪我をしていないかの心配をしてくれている。
信頼と優しさ、どっちの反応もわたしは嬉しいよ。
「全くの無傷だから大丈夫だよ。あれだったらワーウルフの方が手強かったね」
「ツズリは強いですが、見た目はわたし達と一緒の子供なので、やっぱり心配になります。怪我がなくてよかったです!」
「心配してくれてありがと……」
子供ってところに引っ掛かりはある物の、心配してくれた事への感謝は伝えておく。ルルもわたしの事を女神だと思っているはずだけど、子供……。まぁいいけどさ。
「あたしも心配した」
「えっ!? リリナがわたしの心配してくれたの!?」
いつも辛辣に扱われているけど、なんだかんだ言ってリリナにも優しい所があるんだね。
「尻尾の毛を斬られてもふもふ度が下がってないか心配だった。ツズリから尻尾のもふもふをが無くなったらツズリじゃなくなる。でも、それも杞憂。十分のもふもふ具合の維持を確認」
「でーすよねー」
わたしの尻尾をもふもふと触りながらリリナが尻尾のもふもふの存在を確認している。
あー、うん。知ってた。どうせそんな事だろうと思ってたよ。
わたしから尻尾のもふもふを取ったら、わたしじゃなくなるらしい。まぁ確かに狐っ娘のこのキャラからもふもふ尻尾を取ったら、狐っ娘ではなくなるけどさ。耳だけじゃ物寂しいもんね。
「ふふふ、素直ではありませんわね。一番心配してたのはリリナですわよ。部屋の端から端を行ったり来たりして、そわそわそわそわと落ち着きがありませんでしたもの」
「ほほーん。リリナも可愛いらしいところがありますなぁ」
ラライア姫からのリークを聞きわたしは笑顔でリリナを見つめる。
「な、なにそのニタァっとした笑顔。悪い事でも考えてそうな笑顔。怖い」
失礼だな。才色兼備たるこの女神スマイルに対して怖いとか。鬼も照れる可愛さだっての。いや、自分で言う事ではないんだけどね。
それに、悪い事ではないけどリリナにとっては悪い事になるだろう事は考えている。
「心配してくれてありがとー! リリナ!」
もふもふと尻尾をもふっているリリナに対してわたしはぎゅーっとお礼の抱擁をしてあげた。
いつまでも尻尾を触っているから逃げられないんだぞ。そもそも、わたしの速度からは逃げられないだろうけどね!
「暑苦しいからへばりつかないで!」
「またまたぁ。そんな事を言いつつ実は嬉しいくせにー!」
「やーめーてー!」
そんなこんなで盗賊騒ぎは一件落着した。騒ぎって程の騒ぎでもなかったけどね。
盗賊からしたらここに入ってしまったせいで捕まったみたいなもんだし。そう思うと、ここがゴキブリホイホイみたいに聞こえてしまうな。ゴキブリじゃなくて盗賊ホイホイか。
そんなホイホイと盗賊が来てしまうと、わたしの仕事が増えてしまうので、やっぱり何かしらの対策はしておかないといけないね。
それから皆で晩御飯までゲームをして、晩御飯は外でバーべキューではなく普通にキッチンでリリナに料理を振るってもらった。
そしてわたしがこのキャンプで一番楽しみにしていた時間になる。そうそれは――
お風呂、である!
この世界に来てたからいつかは絶対に作ろうと思っていた。そして、元の世界のこの家を建てたって事は勿論お風呂も作っているという事だ!
念願の! お風呂!
この世界には清潔魔法があるから、お風呂という習慣がない。確かに清潔魔法万能だ。尻尾と耳の毛ももっふもふを維持出来ている。
でも! でも違うんだよ! お風呂は身体を綺麗にする為だけの物ではないんだよ! 心を休ませられる場所でもあるんだよ!
「っという事で! 寝る前に皆でお風呂に入ろう!」
わたしがそういうと、「オフロ?」っと皆はてなマークを頭の上に浮かべている。
まぁ知らないよね。お城にもないんだから、偉い人だけ使ってるって訳でもないからね。
「だからどういう事ですか。説明がないと分かりませんよ!」
「相変わらず説明不足」
説明はしたよ。上の方で。説明というよりはただの思考だけども。
「ツズリランドでは一日の終わりにお風呂に入って、一日の汗を流し、身体と心を清めるってルールがあるんだよ!」
わたしが作った場所なのでわたしがルールだ! わたしに都合が良いようにこのランドは出来ている!
「天界の決まりなら従うしかないの! オフロに入るの!」
「昔から天界の掟には身を委ねよって言われてますわ! ツズリ様が作られたこの簡易天界地域内ならばオフロに身を委ねるしかありませんわ!」
流石王都勢、お風呂がどんなものなのかも分からないのに、すぐに従ってわたしに賛同する。
「あ、オフロってツズリが初めて屋敷に来た時に言っていたオフロですか? ヨクシツが云々言ってましたよね」
「そうそう! よく覚えてたね。その時に言ってたやつを作ったんだよ。やっぱお風呂に入らないと一日の疲れとか、心の休まりがないからね!」
「オフロとは、心を休めて疲れを取る場所って事?」
「リリナ正解! その通りだよ! 清潔魔法があるからお風呂に入らなくても身体は清潔に保たれるし、睡眠をとれば疲れが取れるかもしれないけど、心までは休まらないでしょ! そんな時にこそお風呂なんだよ!」
わたしはお風呂の大切さを力説した。
この世界に来てから一回もお風呂に入れていない。お風呂を作ってからキャンプをするまでに入れる時間はたっぷりとあったけど、そこはやっぱ皆で入りたいから入らなかったんだよね。
入っていないからと言って身体が臭ったり汚かったりは決してしないけれど、お風呂は身体を洗う為だけにある物ではないからね。
「わたしはツズリの尻尾をもふもふすれば心は安らぎますよ!」
っとルルがそんな事を言っているが、そういう問題でもない。そもそも、それだとわたしが安らいでない。
「それで安らぐのはわたし以外だよ! わたしの尻尾をもふって安らぐなら、代わりにルル達のほっぺとお腹を小一時間ぷにぷにするからね!」
「えー! それはちょっと遠慮します」
「そのぷにぷに役はルル様だけにしてほしい」
「ツズリ様にならいくらでも身を捧げるの!」
「わたくしの身体はツズリ様に病気を治してもらったお陰で存在していますので、どうぞご自由にぷにって下さいですわ!」
拒否するルルと、ルルを犠牲にするリリナ。そして、身を捧げてくる王都勢。
うん、まともな人がルルしかいない気がする。様って付けながら自分の街の領主の娘を売るリリナも若干アウトだ。
「じゃあまぁ、早速、我が家の浴室に案内するよ!」
案内すると言っても城みたいに広い訳ではないから直ぐそこなんだけどね。
王都勢は楽しそうについてくるけど、ルルの街勢は渋々といった感じだ。
まぁ、お風呂に入ればきっと気に入ってもらえると思う。女の子はお風呂が好きって相場が決まっているからね! 検証はわたしのみだから百パーセントの相場だよ!
「っと! 浴室の前に脱衣所で服を脱いでね!」
「え? 脱ぐんですか?」
「そりゃ脱ぐよ。身体と心を清める為には必要不可欠な工程だよ!」
まぁ着衣水泳があるし着衣風呂もあるのかもしれない。けど、着衣水泳は水難事故の時の為の対応策も兼ねているけど、お風呂でわざわざ水難事故の対応をする必要はないので脱ぐのが妥当だ。
というかこの巫女服でお風呂なんて入りたくないよ。水を全部弾いてお湯に浸かってる感覚に慣れないよきっと。神様謹製の超防水性だもん。
「ツズリ様の言う通りなの! 脱ぐのー!」
「脱ぎますですわー!」
王都勢はもう流石としか言いようがない。従順なツズリ信教である。
「はぁ、ラライアちゃんやコタビちゃんがツズリに従うなら仕方ありませんね。姫様方だけを犠牲にする訳には行けません。旅は道連れ、友も道連れって言いますからね!」
犠牲って……。まぁ未知のお風呂だから疑って怪しむのは当然かもしれないけどさ。あと道連れにしすぎだよ。情けどこいったんだよ。
「服はそこの棚の籠に自分のを別けて入れておいてね。あとで清潔魔法で綺麗にしておくから」
「はいなの!」
「はいですわ!」
「分かりました」
「……分かった」
その言葉を合図に各々服を脱ぎだした。
今思えばこの巫女服を脱ぐって初めてかもしれない。パンツはトイレで脱ぐけど全部ではない。裸でトイレはしないからね。
どんな攻撃からも守ってくれるこの巫女服装備。脱いでしまうとわたしは普通の女の子だ。無防備だ。今魔物に襲われたら一回も攻撃をくらってはダメだね。
まぁそもそも、裸のままでなんて戦えないというか、戦いたくないので是が非でも巫女服は着るだろうけどね。
皆脱ぎ終わったかなと思ったけど一人だけまだ服を着ている子がいた。
「なーにやってるの、リリナ。早く脱がないとお風呂入れないよ!」
「……わたしは、心が疲れないから、やっぱりオフロは遠慮……する」
「はっはーん。恥ずかしいんだね? 女しかいないんだから恥ずかしがる事なんて何もないよ! ほら脱いだ脱いだ!」
「……やだ」
それでもリリナはもじもじとしてる。
階級的にはわたしと一緒で一般人のリリナだけど、これまた姫にも負けず劣らずの可愛さを持っているリリナ。普段、ツンと辛辣な事を言ってるからか、もじもじと可愛らしい仕草がギャップで更に可愛さが溢れ出している。
「脱ぎ方が分からないんだね! 全くもう仕方ないなぁ。さぁ、裸部隊! リリナの脱衣を手伝ってあげて!」
裸部隊とは、リリナ以外のキャンプメンバーである。
「ツズリ様からの命なので、お許しくださいですわ!」
「天命を授かったの!」
「さっきわたしを売った罰です! 逃がしませんよ! リリナ!」
従順な王都勢とぷにぷにの件で売られた事を根に持っていたルルがリリナを捕えた!
「いやー! やーめーてー!」
三人の美少女がリリナの服を奪って一件落着したところで、観念したリリナとわたし達は脱衣所を後にして浴室へと足を踏み入れるのであった。
いよーっし! やっと待ちに待ったお風呂だー!




