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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、キャンプライフ
48/144

P48 どうせ名前はツズリハウス

 ルルの街勢と王都勢の紹介も終わり、わたしたちはキャンプ場に到着した。

 上から見ると綺麗な円形に木が立ち並び、その中心には池と家が目立っている。


 うん、何回見ても我ながら良い出来だね!


「いよーっし! 到着! この下にあるのがわたしが作ったキャンプ場のツズリランドだよ!」


「ここがツズリ様が作られた聖地なのですわね!」


「神が創りし神聖なる地なの!」


「普通の一般的な土地だよ」


 ラライア姫とコタビがまた大げさに誇張して奉り上げている。

 いや、だからそんな神々しいものじゃないよ。シミュレーションゲーム感覚で作ったただのキャンプ場だよ。

 でもまぁそう見えちゃうくらいの素晴らしい出来てっていう意味なら間違いなくそうだね!


「これをツズリが作ったんですか!? こんなのを作れるなんて凄いです!」


 ルルが驚いた表情をして絨毯からツズリランドを見下ろしている。


「そうだよ! もっと褒めてくれてもいいよ!」


「凄いけど、ツズリランドっていう名前がダサい」


 ルルの横で一緒に見下ろしていたリリナがそう答えた。

 リリナはいつも辛辣だ。わたしのネーミングセンスがダサいのは知ってるよ! でも、折角作った場所なんだから付けたいでしょ!


 いつまでも上から見ていても仕方ないので高度を下げて、地に降り立つ。


「ようこそ! ツズリランドへ!」


「上から見ていると小さく見えてましたけど、地上で見ると広いですね」


「小さい村一つ分くらいは余裕でありそうですわ」


 皆周りをきょろきょろと見回している。

 ランドって言ってもジェットコースターとか観覧車がある訳じゃないから、遊ぶものはない。ただ風景を眺める程度だ。


 先ずは、周りの池やら花畑を案内した。

 折角、綺麗に作ったから見てほしくて仕方がないんだよ。


 池が初めからある所に作ったとか森の真ん中をくり抜いたのかって聞かれたけど、全部わたしが作ったり持って来たって言ったら、かなり驚いていた。

 まぁ、そりゃそうだよね。いくら魔法の世界だからと言って、普通は木を数百本移動させたり池を作ったりはしないよね。


 池に掛けた橋の上で景色を見ながらしばし休憩する。あんまり歩き続けるとラライア姫の体力が持たないからね。


「ここが元々平原だったなんて思えない。自然豊かなオアシスと化している」


「流石、ツズリ様なの! 傷を癒すだけじゃなく自然を使って心も癒してくれるの!」


 そんなつもりで作った訳ではないけどね。ただただ自分の自己満足で作り上げた自然だ。

 作ったから自然っていうのか微妙な所だけど、自信作の自然の景色だ。


「自然に囲まれているっていいよね。のんびり平和な感じがして、和むっていうかさ」


「分かります。街は壁で覆われて安全って面ではいいんですけど、閉じ込められてる感があるんですよね」


 城ぐらい高い所から見るなら開放的だろうけど、普通の家や屋敷なら壁の外の景色は見られない。だから閉じ込められている感じは多少感じるだろうね。

 でも、生きる為には仕方がない事だ。いつ魔物や盗賊に襲われるかも分からない世界なのだから。

 この前のムカデみたいに地面からいきなり現れたらどうしようもないけど、そんな事は滅多にはない事だから気にしても仕方がない。いつ起こるか分からない自然災害と同じだ。

 対策は出来ても、予測は出来ない。


「わたくしはお城から出るのも初めてなので、花瓶に刺さってある花以外の自然に触れられてとても嬉しいですわ! ありがとうございます! ツズリ様!」


 病弱で寝込んでいたラライア姫は街の壁どころか城に閉じ込められていたみたいなものか。

 閉じ込められていたっていう言い方はちょっと違うかもしれないけど、まぁ似たようなものだよね。城から出たくても体力的に出られなかったんだから。


「お礼を言うのは早すぎるよ。キャンプは始まったばかりなんだから、これからが本番だよ!」


「そうですわね!」


 周りを見て回ったので家に入る事にする。いつまでも外にいるのもいいけど、折角作った家なので是非とも見てほしい。

 わたしが作っただけで、デザインとか間取りとかは前の家のままな訳だから、わたしが考えてないし自慢する事じゃないけどね。でも、魔法で作ったのは間違いなくわたしなので、やっぱ自慢したい。


「そして! ここがわたしが作った別荘だよ!」


 現在ルルの屋敷に居候していてルルの屋敷がわたしとしては本宅なんだけど、居候の身で本宅扱いは出来ないよね。だから、ここが初めてのわたし自身の家だから、別荘って言うか微妙な所だ。

 ルルの街からも王都からも離れた小島みたいなこの場所で一人で暮らすのは何だか寂しい。

 元の世界だと一人で暮らしてる方が良かったけど、この世界に来てからというもの、ずっとルルや他の人達と一緒だったから今更一人にはなれないよ。

 絨毯で飛んでいけば距離は気にならないけどね。でも距離の問題ではいんだよ。

 メインで住む訳ではないし、やっぱ別荘だ。本宅は後から街にでも建てれば問題ない。


「ここに来た時から気になってたの! ツズリ様が作った家、つまり本物の神殿なの!」


 コタビが誰よりも早く、目を輝かせて真っ先に食いついた。


「神殿じゃないよ、別荘だよ」


「別神殿なの!」


 別神殿ってなんだよ。本神殿すらわたしにはないよ。わたしが住む建物をイコールで神殿にしないでほしい。


「珍しい外見の家ですね。わたしの街でこんな家見た事ないです」


「王都でも見た事がありませんわ」


 まぁ、そうだろうね。だって日本と外国ってだけでも家の作りが違ってくるのに、国どころか世界が違っているんだもの。

 わたしが見たルルの街と王都に限りだけど、この世界の家は外国チックだ。基本土足ってところもそうだけど、窓も上下スライドとか観音開き式だし、そこまで広くない。

 けど、この家は横スライドの全面ガラス張りの窓だ。日本で言う普通の窓だ。


「わたしの故郷の家を再現したからね。見慣れないのも仕方ないよ」


「おー! 天界のお家なの!」


 わたしの故郷は天界ではないけどね。日本だけどね。

 まぁそんな事をコタビ達は知り得ないし、女神だと思っているからそう思っても仕方がない。


「天界の家で豪華な見た目だけど、どうせ名前はツズリハウス」


「そ、そんな訳にゃ、ないでしょ」


 ルルに心に秘めていた事をズバリと当てられて動揺して噛んでしまった。

 確かに、名前を付けるならツズリハウスだなって思っていたけど、流石に家に名前を付けるとペット小屋感が出るから止めてたのに。


 こいつ……! さては心を読む魔法を使っているな!?

 わたしにも是非その魔法を教えてくれ!


 でも、心を読むと知りたくない事まで知っちゃいそうで使いたくないな。ルルとかに本当は嫌われてたりしててそんな事を知っちゃったら、わたしは闇落ちするよ。

 皆良い心の持ち主だから、絶対ないと思うけどね。


「一つ気になるんですけど、家の前の両側に立っているこの置物は何なんですか?」


 ルルが家の前に飾ってある狐の狛犬を片方を撫でながら聞いてきた。

 台座の上には置いてなく地面に直置きで、大きさも実物の狐が座っているくらいなので、子供のわたし達でも頭を撫でる事が出来る高さだ。


「わたしの家だよっていうアピール的な目印的な意味を込めて作った狐の置物だよ。中々可愛く出来てるでしょ?」


「はい! 凄く可愛いです! わたしの屋敷の門前にも欲しいくらい可愛いです!」


「あたしの宿の入り口にも欲しい」


 二人が目を輝かせて期待なの眼差しを向けてくる。

 そう言えば、王都勢にはミニチュア版をあげたけど、ルルとリリナにはあげてなかったな。家の中にも何体かポーズを変えた小さいのを置いてあるし、プレゼントしようかな。

 土魔法でパパッと作れるから何体でも量産する事が可能だ。


 ふむ、量産出来るなら売ってもいいな。女神のお守り的な……。

 材料費ゼロだからいくらで売っても儲ける事だ出来る。詐欺してるみたいで嫌だし、現状お金に困っていないからやらないけどね。

 もし、金銭面でピンチな時があったら実行するとしよう。


「作るのは勿論いいけど、ちゃんと親の許可は取ってね?」


「はい、分かりました!」


「商業の女神の置物なら母さんもきっと喜ぶから問題ない。この置物の首にペット厳禁の看板を掛けるのに使わせてもらう」


 なんだ商業の神様って……。七福神でそういう神様いたよね。恵比須様だったっけ。わたしは恵比寿様じゃないよ。商売繁盛はしないよ。

 いや、わたしがあの宿の料理を食べに通っていたから繁盛したって考えると、あながち間違っていないような……。

 っていうか、それよりも気になる事を言っていたな。

 ペット厳禁の看板掛けに使うって酷いくない!? それわたしに対してのメッセージになってない!?

 まぁ使い方は別に自由にしてくれ良いけどさ。良いんだけどさ。


「ま、まぁ設置したら大事に使ってね……」


「わたくしの部屋にも欲しいですわ!」


「王都の神殿にも欲しいの!」


「あーはいはい、その内設置しに行くよ……」


 神殿は兎も角、部屋にってどうなんだろうか。床とか抜けないかな。城は頑丈に出来てるだろうし大丈夫か。

 万が一の為に中身を空洞にすれば軽くなるだろうし、置くとしたらそうしようかな。


 狐の狛犬を後にして、四人を連れて家の中へと入る。


「あ、この家は土足禁止だから、ここで靴は脱いでね。上がったら並べてあるスリッパを履いてね」


 これを言っておかないと、皆土足で上がろうとしてしまう。


「え? 脱ぐんですか?」

「見た事ない変わった履物」

「歩きにくいですわ」

「おー! 天界の仕来りなの! 分かったの!」


 コタビ以外は初めての事で戸惑っているみたいだ。そりゃ初めては誰だって戸惑うものだ。

 でも、コタビは例外だ。わたしが行った事を愚直に信じて、何も疑わない忠犬だからね。多分、炎に飛び込んでも熱くないよって言ったら飛び込むんじゃないかな。

 そんな事は絶対に言わないけど。


 実はこのスリッパ、デパート城にも置いてなかったんだよね。だから、ルルの街の靴屋さんに頼んで特注で作ってもらったんだよね。

 女神って事を利用している訳ではないけど、わたしが頼めば快く引き受けてくれるんだよね。窓ガラスだってそうだった。


「女神様の頼みとあらば断れないね。どんな履物でも作ってあげるよ。それに女神様が利用してくれたってなると、売り上げが伸びるからね!」


 っと、靴屋さんのお姉さんが言っていた。

 女神である事を利用してはいないけど、利用されてはいるみたいだ。まぁ、わたしとしては物が手に入りさえすればいいので特に気にする事ではない。

 リリナの母親に商業の女神だって思われているらしいから、商売をしている人からはそう思われているのかもしれないね。


「城や屋敷に比べると狭いけど、家具類は一通り揃ってるからゆっくりしてね」


 城みたいに探検出来る程広くはないけど、テラスやバルコニーがあるのでそこからの景色を眺める事くらいなら出来る。

 元の世界の家なら、ゲーム部屋にゲームが沢山置いてあったけど、この家に電子のゲームは何もない。あるのは王都で作ったリバーシくらいだ。


「この家具……高級品の匂いがする」


 リリナがソファーに座りながら高級品の匂いを嗅ぎつけた。

 匂いで嗅ぎ付けるのがコタビだけにしてほしい物だ。コタビの嗅覚は主にわたしに対してだけだけどね。


「そりゃ高級品だよ。だって、城から貰ってきたやつだからね。王族が使うようなやつだよ」


「えっ……」


 座っていたリリナがソファーから飛び上がって驚いている。

 高級と言っても王族が使う程の高級さだとは思っていなかったんだろうね。この中だとリリナだけ一般の部類だから仕方ない。

 あ、わたしも女神扱いされているけど、一般の冒険者だった。訂正しよう。リリナとわたしだけ一般の部類だ。


「ドラゴンと交換した時のですわね!」


「そうそう、あの時貰って行ったやつ。必要な物が殆ど揃ったから助かったよ」


「ツズリ様がこの国を守ってくださっているので、お互い様ですわ! また何か困った事があったら城に来て下さいですわ」


 あのムカデは両方わたしを狙って来てたから、国を守ったというか、自分の身を守っただけだ。

 わたしがいなかったらムカデは出てこなかったかもしれない。


「という事は、ここにある物は全部高級品……今踏んでいる絨毯も……」


 リリナが高級品に囲まれるのに慣れていないからか、顔を青ざめて立ち尽くしている。


「リリナ、大丈夫? 二階にベッドあるからそこで休む? 勿論ベッドも高級品だけど」


「ゆ、床で休む」


 リリナが床に直座りしてしまった。

 普段辛辣に言われているから、やり返しという意味で付け足した冗談の一言だけど、リリナはそれどころじゃないらしい。


「床は冷たいから座布団渡すからこれに座って。これは街で特注して作ってもらったものだから高級品じゃないからさ」


 座布団も城デパートには置いていなかったので作ってもらった物だ。

 畳がないから和室はないけど、座布団も一応用意しておいたんだよね。収納魔法にいくつか予備も常備している。

 座布団が置いてある部屋に取りに行くのもめんどくさいので収納魔法から予備をリリナに渡した。


「ありがとう。落ち着く匂い」


 そのありがとうはわたしに対してなのか、それとも匂いに対してなのか……。

 まぁどっちもなのかな。


「また見た事がない物が出てきましたわ!」


「床に座る為の布団……だよ」


 座布団。そのままである。


「きっと天界特有の物なの!」


 コタビ直ぐに天界と結び付けてくる。日本の文化イコール天界の文化になりつつある。きっとお箸とか出しても同じ言が帰って来るだろう。


「ここの家と言い、スリッパと言い。ツズリはホームシック、いや、天界シックなんですか?」


「違うよ! 何シックでもないよ!」


 なんだ天界シックって。変な言葉を作り上げないでほしい。




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