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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、異世界ライフ
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P4 ゲームとは違う

 わたしが戻ろうと来た方向に足を向け歩き出すとパルパルに呼び止められた。


「おい。向こうは任せても大丈夫だから、こっちのワーウルフの処理をするぞ」


「処理?」


「解体するんだよ。当たり前だろ?」


 そんな、なーに言ってるんだ、こいつみたいな目で見られても困る。

 そっかゲームだとお金とかアイテム、経験値として光になって消えてたから気にしてなかった。この世界では解体するんだね。

 森の中のゴブリン放置してきたけど良かったのかな。

 まぁあの時はそれどころじゃなくなったしいっか。


「わたし解体出来ないよ」


「え? あんなに戦い慣れた動きしてたんだから、今まで解体くらいしてきただろ? 出来ないのか?」


「無理」


 出来ないものは出来ない。

 ゲームに解体職なんてないからね。あってもやらないけど。


「戦えても子供って事か。はぁわかった。俺がやるから、まずあの土魔法のやつ元に戻してくれ」


 子供って、わたしは17才だから、そこまで子供って訳じゃないよ。

 ってか、魔法って発動して役目を終えたら勝手に消えないの?

 土魔法で倒したワーウルフの方に目をやると、確かに突き刺さったまま残ってる。

 元に戻すってどうやるんだろう。

 血が垂れてるからあんまり近づきたくない。

 いや近づく必要はないのか。発動と逆の事をイメージすれば出来るはずだ。魔法はイメージだ。


 地面に手を当て、発動とは逆に元の地形に戻るようにイメージする。

 すると、なんということでしょう。

 地面から生えた円錐型の土魔法がみるみる地面に吸い込まれて戻っていくではありませんか。


 おお、凄い。ちゃんと出来た。

 うーん。でも、戻すのめんどいから地形が変わる系の魔法も使い勝手悪いな。


「獣人なのに本当に魔法得意なんだな」


「魔法が好きで昔から極めてたからね」


 勿論ゲームでだけど。

 ゲームと同じように攻撃魔法が使えるなら、この世界でも極めてるのも変わらないから嘘ではない。

 ゲームと同じ処か、今のところちょっとした魔法ならイメージ通りに魔法が使えてるから、ゲームより自由度は高そうだけどね。


「ふーん、昔からねえ……。まあいいけどさ。じゃ、俺はこれ解体するから、お前は凍ってるやつを解体しやすいように溶かしといてくれ」


 何か変なこと言っただろうか。

 とりあえず、凍ったワーウルフを溶かす作業をする。


 どうやって溶かそうか。炎魔法?

 うーん。ワーウルフも一緒に燃えちゃうと困るしなぁ。ゴブリンの時みたいに悪臭を放たれるのは嫌だ。

 あ、冷たい水だして飲めたんだからお湯も出せるよね、きっと。

 よし、やってみよう。


 イメージだ、イメージ。

 水弾の水を、熱々のお湯で出来た水弾をイメージする。

 勢いよくぶつけたらお湯が飛び散ってわたしまで熱い思いをしてしまうから、それはダメだ。わたしはそんな事をするほど馬鹿ではない。

 ゆっくり放つイメージだ。


 お湯の水弾はふわーっと凍ったワーウルフまで飛んで行き、当たるとバケツで水を掛けたみたいになった。


 よし成功だ!

 でもこれ、溶ける頃には辺りがびっしょびしょになっちゃうよね。

 どうしたものか。

 うーん。そもそも放つという工程が必要ないのでは?

 凍ったワーウルフをでかいお湯の水弾で覆ってしまえばいいのでは?

 うん。この作戦でいこう。


 凍ったワーウルフの近くまで行って、でかいお湯の水弾を創り出して、そのまま覆い維持させる。

 よし、溶けてる溶けてる。これで解凍作業は完璧だ。


 3体解凍し終わる頃にはパルパルは2体目の解体に入っていた。

 解体のこと考えると凍らせるのも後々めんどくさいな。


 する事がなくなったので、パルパルの作業を見てみる。

 うわぁ、これ絶対わたしには無理だ。

 血とか色々な物が色々と……。

 見て後悔したよ。最悪だ。

 パルパルに任せて休んでいよう。そうしよう。


 ギュウウウウ


 あ、落ち着いたらお腹が鳴った。

 色々あったけど結局こっちに来てから何も食べてないからね。

 お腹空いたなぁ。馬車に戻ったら食べ物置いてないかな。分けてもらおう。死んでしまう。


「お前、お腹空いてるのか?」


 聞こえてたのか。恥ずかしい。


「うん。ずっと食べてなかったから」


「そうか。ほらよ。食べていいぞ」


「え!?」


 パルパルが何もない空間からパンを取り出して差し出してきた。

 もちろん、手袋を脱いでね。戦いとか解体で汚れてるからね。

 いや、そんな事よりもだ!

 何もない空間からパンが出て来たよ! どうなってるの!?

 これも魔法なのかな? わたしも使いたい! 覚えたい!


「ど、どうやったの?」


「え? 何が?」


「どうやって、どこから取り出したの!」


「そんな輝いた眼をして急にどうしたんだよ。収納魔法くらい誰でも使えるだろ? 獣人だろうが種族関係なく誰でも。子供の頃に教えて貰って使えるだろ。お前だってあれだけ魔法使えるんだから出来るんじゃないのか?」


 収納魔法! なるほど!


「収納魔法! 発動!」


 シーン。


 どうして!

 ポーズか!? ポーズがダメなのか!?


「発! 動!」


 シーン。


「どうして! どうして出来ないの! パルパルどうして!」


「何なんだよお前こえーよ……。あれだけ魔法使えるくせに収納魔法を親に習わなかったのか? というかどうして子供1人で森の中に……あ、いや、いいや。これは戻ってから話してくれ。それよりパン食っとけよ」


 わたしがパンを受け取るとパルパルは解体の続きに戻っていった。

 貰ったパンを食べながら考える。

 固い。パサパサだ。作ってから時間が経ってるのかな。ちゃんと包装しないからだよ。この世界に袋があるか分からないけどさ。


 そんな事よりもだ。収納魔法なんて親に習ってないよ! 習えないよ! この世界に親なんて居ないんだから!

 このゲームキャラを作ったのはわたしだ。という事はわたしが親か!?

 教えてわたし! 収納魔法のやり方を!

 ま、わからないよね!

 いやいや、落ち着けわたし。魔法はイメージ力だ。

 収納魔法とはなんだ。パルパルはどうやって取り出していた。

 異空間? 異次元? そういう類に繋ぐのだろうか。

 うーん。あ、ゲームのアイテムボックスみたいなものだろうか。

 どこに持ってるんだよってツッコミを入れたくなるくらい持ち運べるからね。

 ゲームだからそういう仕様なんだって言われればそうなんだけども。


 アイテムボックスか。

 メニュー開いたときはステータスしかなかったけど、あると便利だよね。

 というかメニューってなんだろう。

 ここが現実なら何故メニューが開けてステータスがあるんだ。

 実は、限りなく現実に近いゲームなのか?

 なんかもうわからなくなってきたよ……。

 いや、お腹減ってパン食べてるんだから現実か。ゲームじゃ減らないしね。


「おい、パルマ! もう倒したのか?」


 あれ、長剣さんだ。

 向こうはもう終わってこっちに来たのかな?


「ああ、終わったよ。全部その子が倒した」


「はぁ? 何言ってるんだ。こんな子供が倒せるわけないだろう。かと言ってパルムが4体も倒せるとは思えないが……」


「いや、ほんとにあの子が全部倒したんだって。聞いてみなよ」


 長剣さんが疑わし気にわたしに目線を向けてくる。


「本当だよ。魔法でパパッと倒したよ」


「魔法でって……ああ、そうだったな。ゴブリンも魔法で倒したとか言っていたな」


「解体終わったから、話は戻ってからな」


 解体が終わったみたいだ。

 素材とか手に持ってないところをみると収納魔法とやらにしまったのかな。

 ふん! いいさ。そのうち自分で習得してやるさ。

 わたしの魔法への探求心を舐めないでほしい!






 戻ってくると、解体も終わっていて皆休んでいた。

 知らない人が2人増えてる。

 多分、馬車の中に居た人だろう。つまり領主とその子供?かな。

 領主と思われる人は何ていうか幸薄そうな男性で、子供の方は茶髪の可愛い女の子だ。


「戻ったぞ」


「あの子は無事……みたいね。良かったわ。ワーウルフを4体も連れて走っていったから心配したのよ?」


 魔法使いのお姉さんはどうやら心配してくれたらしい。

 別に心配何ていらないけど、一応謝っておく。

 親切心を無下には出来ないからね。


「ごめんなさい」


「パルマ、よく女の子を守ったわね」


「あーいや、あのワーウルフを倒したのは、その子なんだよ」


「え?」


「ほんとほんと」


 魔法使いのお姉さんが疑わしそうな目でこちらを見てくる。

 またか。

 そんな、わたしが戦えなさそうに見えるのかな。

 お姉さんに関しては迫っていたワーウルフを倒してあげただろうに。


「魔法でパパッと」


「あーそういえば、ブロムを抜けて来たワーウルフ倒してくれたのあなただったわね。ありがとうね!」


 そう言って魔法使いのお姉さんは頭を撫でてくる。

 子供じゃないんだから止めてほしいものだ。


「獣人なのに属性魔法が使えるなんて凄いわね。それに見た目も不思議な格好だし、髪色も綺麗な色だけど見たことのない色だわ」


 皆思うことは一緒なんだね。獣人は属性魔法が使えないのか。

 収納魔法や身体強化は使えるって言ってたから魔法自体は使えるんだろうけど属性が付くと使えないのかな。

 それにしても、見た目はともかく髪の色も珍しいのかな。

 狐っ子だからオレンジっぽく設定したんだよね。


「話は後だ。また魔物に襲われる可能性があるから、森から離れるぞ。安全なとこまで行ったら今日はそこで野宿だ」


「わかったわ」


「俺とパルマは御者台、ブロムは後ろで見張り、メアと君は領主様達と馬車の中だ」


 馬車かぁ。

 魔法がある世界だけあって、車とかはないのかな。

 魔法があれば科学を研究する必要ないもんね。

 まぁでも中に居れてもらえるのは助かる。馬車の横を走って付いていくのかと思ったよ。

 馬車の速度ってわからないけど、そんなに速くはないよね。

 こんな大きな馬車を馬2頭で爆走何て出来そうにないし、そんな速度で走ったら揺れとか凄い事になりそうだ。

 あーでも領主って貴族系の人だよね。そんな人と一緒に乗って良いのだろうか。小説とかだと貴族って性格悪い人っていう印象なんだよね。

 まぁ、森から煙が出てるからって危険な森付近に自分の護衛を減らしてまで確かめるくらいだから、悪い人ではないのかな。


「さあ、私達は馬車の中に行きましょ」


 何故か手を繋がれて馬車へと連れていかれる。正確には袖越しだけどね。

 だから、子ども扱いしないでほしい! 振りほどいたりはしないけどさ。


 馬車に入ると中は広かった。

 もう一度言うよ。

 中は広かった。


「なんでこんなに広いの!?」


「あら? 知らないの? 馬車には空間拡張の魔核が付けられているのよ」


「魔核?」


 何それ、知らない。

 収納魔法もそうだけど、わたしの知らないものが出てくるなぁ。

 知りたい。知らない魔法を知りたい。


「魔石と魔法陣を組み合わせて作る魔道具よ」


 魔石! 魔法陣!

 ゲームではなかった要素が沢山出てくる!


「魔核って誰にでも作れるの?」


「無理ね。魔法陣を書けるのって上級の魔法使いだから誰でもって訳にはいかないの。だから魔核って高価なのよ?」


 なるほど。今のわたしには無理か。

 そう、今のわたしにはね。魔法に関してわたしは諦めないよ!

 それにしても魔核って高価な物なのか。領主が乗る馬車だけあって魔核が付けられてるって事なのかな。


 馬車の真ん中にあるソファーに連れていかれわたしはそこに座るんだろうなと思って座ろうとしたんだけど、なぜか魔法使いのお姉さん、確かさっきメアって呼ばれてたっけ、2文字は覚えやすいね。そのメアさんの膝上に座らされた。

 この人めっちゃ子ども扱いしてくるな! なんなんだ!

 領主と女の子も机を挟んで反対側に座っている。

 2人もめっちゃこっち見てる。まぁ巫女服のせいだよね。きっと。


「メア、その獣人の子は?」


「うーん。キリーク達が森で拾ってきた子?かなぁ」


 紹介とか説明とかする間もなくワーウルフと戦って移動だもんね。

 でも森で拾ってきた子って……まぁ間違いではない……ね。

 パルパルも長剣さんもいないからわたしが説明するしかないよね。

 めんどくさいけど仕方ない。


「わたしはツズリ。森が燃えたのはわたしのせい、でも直ぐにちゃんと消したから大丈夫だよ」


 初めて名前を言った気がする。

 パルパル達とあったときはそれどころじゃなかったからね。

 やっと落ち着けてるって感じだ。

 名前は現実での日本での名前じゃなくてゲームの名前を名乗った。見た目ゲームのキャラだし、ステータスにもそう書いてあるしね。


「俺はゼルドガルの街の領主、ハセン・ゼシュルーネだ。こっちが娘の」


「ルルーナです」


 ハセンさんとルルーナちゃんね。


「私は冒険者パーティー『未来への光』のメアよ」


 やっぱあの4人は冒険者で同じPTなんだね。

 剣、剣、斧(盾)、魔法使いのPTか。悪くないね。

 それにしても未来への光って……何ていうか偉業を成し遂げそうな名前だね……。


「それで森が燃えたのはツズリ、自分のせいと言っていたがどうして燃やしたんだ?」


「ゴブリンを倒したんだけど、あの時は炎魔法を使っちゃったんだよ」


「森で炎魔法……命の危機だったんだろうが極力森では使わないでくれ……」


「ごめんなさい」


 命の危機ではなかったけど使いました。

 その申し訳なさで、わたしは素直に謝るのであった。


 ゲームだと森は燃えないし、解体する必要もないし、魔法を使った後の地形を戻す必要もない。

 魔法は自由度が高いけど、そういう現実味あるところがめんどくさい。そう思うとゲームの方がいい気がしてくるね。





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