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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、王都ライフ
32/144

P32 害虫駆除

「わたしは見かけによらず強いから守ってもらわなくても大丈夫だよ。だから帰らないよ」


 折角来たのに、はいそうですかって帰るわけがない。


「ダメだ。子供が戦場に居てはいけない」


「子供に見えるかもしれないけど、女神だよ。何百年も生きてるよ」


 全くの嘘だけどね。現世から数えると17年。この世界に来てからだと数か月くらいかな。まだよちよちだね。


「ダメだ」


 ダメだー!この人、凄く頑固だ!

 何を言っても無駄なパターンに入ってるよこれ。


「タトルはいつもこうですぞ!あの優秀なコタビ神官様もいつもダメだダメだと言われてましたぞ!」


「こいつは子供は守るべき存在であって戦うべきではないと思っていますからね。実際守るべき存在ではあると思いますが、戦わなければならないときは戦場に立って戦うべきだと思いますけどね」


「ダメだ」


 何を言ってもダメだの一点張り。

 別に従う理由はわたしにないから、無視して好き勝手させてもらうつもりだから良いんだけどね。

 それに、ここで駄弁ってる場合ではない。


「話してる場合じゃないね。こっちに来てるみたいだよ」


 騎士の防衛を突破してムカデが再びこちらに進みだしている。

 やっぱ、わたしを狙ってるよね?

 あのムカデに何かした覚えはないんだけど…、何か恨みでも買ってしまったかな。

 前世で家に出て来たムカデを倒しまくった恨みをこっちの世界で大きくなって晴らしに来たとか?まぁそれはないだろうけど。


「突破されたぞー!」

「すみません女神様!」

「お逃げください!」

「うおおおおおおおお女神様あああああ!」


 こんな状況でも熱狂ファンの人はブレないな!


 やっとムカデがこっちに来てくれてるし、わたしの出番が来たね!

 騎士達には退場してもらってわたしが相手をしよう。

 っと思って駆け出そうとしたら腕をガシッと掴まれた。


「行ってはダメだ」


 またこの人か!何でそこまで止めるんだ。

 全然抜け出せない。力強いなこの人。いや、わたしに力がないだけか。


「ここは我々にお任せくださいですぞ!」


「王様の客人の女神ですからね。傷一つ付けさせるわけにはいきません」


 そうは言うけど、あの大人数で食い止められなかったのに三人でどうしようもないでしょ。いくら団長で強いのかもしれないけど無理なものは無理だよ。


「女神様を安全な所まで連れて行く。あとは任せた」


 タトルさんがそう言ってわたしを抱き上げ、ムカデから距離を取ろうと走り出した。

 これが白馬に乗ったイケメン王子様ならときめいたかもしれないけど残念ながらおっさんだ。


「離して!」


「ダメだ」


 急募、頑固なおっさんの説得の方法。

 誰かー!助けてー!


 後ろではムカデが接近してきていて、残った団長二人が対峙しようとしている。

 あの2人には無理だ。絶対に無理だ。わたしが知らないこの世界に特殊な力があればもしかしたら倒せるのかもしれないけど、ワーウルフ討伐の時にジェネラルワーウルフとギリギリの戦いをしていたから、そういうのもないだろう。

 絶対に負ける。分かりきっている。


「離して!あの人達やられちゃうよ!」


「ダメだ」


 どんだけ頑固なんだ。いい加減にしないと怒るよ!?

 いや、優しさなんだろうけどね。それは分かっているんだけどね。けど今はその優しさが徒となってるよ。


 あの二人もあの二人で、勝てないって分かってるのになんで逃げないんだ。

 わたしも逃げはしないだろうけど、わたしの場合は勝てる見込みがあるからだよ。無茶をしているわけじゃない。

 負けが確定してるイベントならやっても意味ないでしょうに。


 ムカデが団長二人に接近し噛み付こうとしている。噛み砕こうとしている。

 あんなのに噛まれたら一溜りもないよ!?

 抱きかかえられながらもわたしは咄嗟に魔法を発動させた。オオムカデよりも大きな土壁を。

 噛み付こうとしたままの勢いのままムカデが土壁にぶつかった音が鳴り響く。


 抱えられながらという姿じゃなければ、わたしかっこよかっただろうなぁ。

 そろそろ、本当に離してくれないかな。降ろしてくれないかな。


「えっ!?嘘でしょ!?」


 当然と言えば当然の事なんだけど、ムカデが壁をよじ登って来た。這い上がってきて顔を覗かしている。

 そしてそのまま上から団長二人を目掛けて酸を吐き出した。

 二人は回避しようとはしたものの、上から雨のように降り注ぐ広範囲の酸攻撃だ。避けられるはずもなく当たってしまっている。


 わたしが初めから全速力で突っ込んでいれば騎士達も団長二人も傷つかずに済んだかもしれない。

 この人に捕まってる場合じゃない。倒せるのはわたしだけなんだから、わたしが戦わないとね。


「そろそろ離してもらっていい?」


「ダメだ。あの二人の犠牲を無駄には出来ない。このまま逃げる」


 あ、そうっすか。そもそも犠牲になる必要もないんだよ。

 もういいや。


「離せって言ってるでしょ!」


 力では敵わないけど魔法でなら負けないからね。魔法で強引に抜けさせてもらうよ。

 わたしの身体の周りを風魔法で覆いタトルさんを引き剥がす。

 ちょっと加減をミスって引き剥がすというよりは吹き飛ばした感じになったけど、離さなかったこの人が悪いって事にしておこう。


 さてと、自由の身になった事だしわたしの出番だね!やっと!

 先ず団長二人を助けないとって思ったけど、酸を浴びさせるだけでムカデは二人を無視してわたし方に近づいてきている。

 飽く迄わたしが狙いって言う事ね。そんな、恨みを買った覚えはないけど好都合だ。


 騎士達がいるからここの場所は離れないとね。その前に回復しておくか。王都に戻ったとしてもコタビ達は冒険者の回復で魔力使い切っているだろうしね。

 テリトリー範囲内の騎士全員に回復魔法掛ける。よし、これで大丈夫だろう。


 うーん、でも回復して元気になったら追いかけてきそうだよね。とくにダメだってずっと言ってるおっさんとか、謎の熱狂ファンの騎士とか。

 取り敢えず追いかけてくるなとだけでも言っておくか。


 音は空気の振動で伝わってくるもの。という事は空気を伝わって広げているテリトリー内ならどこにでも声を届かせることが出来るはず。風魔法の応用だ。


「騎士の皆さん聞こえているかな?女神ツズリだよ。さっきの奇跡魔法で怪我は治ったと思うけど、そのまま王都に帰ってね。この魔物はわたしが倒すから追ってこないでね。追ってきて巻き込まれてもしらないからね。じゃそういう事で!」


 思い付きで使った魔法だけどちゃんと聞こえたかな。

 遠くの方でうおおおおおおって聞こえる気がする。多分聞こえたんだろう。そういう事にしておこう。






 ムカデを引き連れて戦いやすい場所へと移動した。


「よし、この辺なら大丈夫かな。テリトリーにも人の反応はないしね」


 騎士達も追いかけてきてはいないみたいだ。これで心置きなく戦える。

 何で狙われているのか分からないけどこの魔物はわたし狙いみたいだし、返り討ちにしてやろう。


「さぁやろっか」


 いざボス戦開始!

 先ずはわたしの好きな氷魔法の槍を数発放ってみる。が、硬い甲殻に当たって砕けた。


「やっぱ硬いね。全然効いてないや」


 反撃とばかりにムカデが酸攻撃を仕掛けてきた。

 冒険者の人は水魔法って言ってたけど、どう見てもゲロ魔法だ。緑色の液体を口から吐いてるんだもん。それならもうゲロ魔法だよね。いや、もはや魔法ですらないな、ただのゲロだ。吐瀉物だよ。


 でも、わたしにはそんな汚いゲロ攻撃は効かない。液体であるのなら凍らせればいいだけだからね。この世界に来て一番使っている魔法だ。得意中の得意魔法だ。

 凍ったからといって防げたわけではない。凍ったままこちらに飛んできている。飛んできているのが凍ったからってそのまま落ちるわけじゃないからね。

 凍ったゲロを風魔法で粉々に砕く。砕かれた氷がキラキラと宙を舞う。


 わー綺麗。これがダイヤモンドダストって言うやつだろうか。

 綺麗だけど欠点は成分がムカデが吐いた酸のゲロという事だ。残念!台無しだ!


 今度は噛み砕こうとわたしに突っ込んでくる。

 高く跳躍して躱す。そのまま落下する力を利用してムカデの頭を取り出した刀で突き刺す。


「うわっ、腕が痺れるっ!」


 硬い物と硬い物が当たった衝撃の振動で腕が痺れた。ゲームだとそういうのはなかった現象だけど、流石に現実ではそうはいかなかった。

 刀は刺さらなかったものの刃毀れはしていないみたいだ。流石神様謹製。贅沢を言うならどんなものでも斬れる刃にしてほしかったよ。トマトもスパスパと斬れる刃にね。


 この甲殻硬すぎるな。普通の攻撃じゃやっぱ効かないみたいだ。

 そう普通の攻撃ならね。じゃあ、普通じゃない攻撃をすればいい。その為に場所を移動してきたんだから。


 ムカデの頭から飛び降り距離を取る。


「これならどうかな?」


 上空に岩を生成してその岩を炎で覆い対象に向けて落下させる炎土混合魔法。

 まぁ所謂隕石だね。それを数個作りムカデ目掛けて放つ。


「流星群だ!くらえー!」


 炎魔法を使わないなんて言っていられない。封印なんて即解除だ。虫には炎系の魔法だ!そう相場が決まっている!

 放たれた隕石は物凄い音を立てて降り注ぎ、地面に当たった所がクレーターになっていく。

 しっかし、地響きが凄いし土煙がも酷いな…。エフェクトが出るだけのゲームとはやっぱ違うね。


 ん?なんかこの地響きおかしいな。真下から振動が来てるような、そんな感じがする。

 うん、間違いなく真下から振動がする。なんだ?

 近づいて来てる?取り敢えず逃げた方が良さそうだね。


 さっきまで立っていた場所からあのムカデが飛び出してきた。


「え!?二匹目!?」


 隕石が降り注いだ所を見てみると土煙が晴れて見渡せるようになっている。そこにはムカデの姿はなく、隕石が地面に当たった跡と、穴が一つ空いているだけだ。


 ああ、そういえばこいつ地面に潜れるんだっけ。冒険者がそんな事を言っていたような気がする。

 地面に潜って逃げたのか。む、虫の癖に賢いじゃないか…。

 あの魔法を躱されると思ってなかったよ。まぁでも、二匹目ではない事だけは救いか。


 さぁて、本当にどうやって倒そうかな。

 さっきの魔法を逃げたって事はダメージを与えられる威力は出てるって事だと思うんだよね。それでも、躱されれば意味はないんだけど。

 じゃあ、躱されないようにして攻撃すればいいのか。

 あの作戦でいくか!一つ試してみたい魔法があるんだよね。女神らしいあの魔法を試してみたいんだよ。出来るかどうか分からないけどやる価値はある。


「よーし!第二ラウンド開始だね!」


 わたしに答えるようにムカデもカチカチと牙を鳴らし威嚇をしてきた。

 向こうもやる気みたいだ…ね?って…んん?


「ちょっと待ってそれ威嚇じゃないね!?仲間呼んでるね!?」


 仲間と言っても同じくらいのオオムカデでじゃなくて小さいムカデだ。小さいって言っても元の世界で見るような大きさじゃない。オオムカデが電車くらいだとしたら、このムカデはわたしと同じくらいの大きさだ。

 でかい。元の世界に居たら化け物だね。この世界でも十分化け物だけど、魔法がある分余裕が生まれる。

 その小さい方のムカデがついさっきオオムカデが出て来た穴の中から、うじゃうじゃと出て来ている。そう、うじゃうじゃと…。


「うえぇ、気持ち悪いっ!気持ち悪いよっ!」


 こんなの現実じゃなくてゲームで見たとしても気持ち悪いよ!

 勝てないとかそういう理由じゃなくて逃げだしたい気持ちで一杯だ。でも、わたしが狙いみたいだから逃げたとしても追ってくるんだろうなぁ。ぞろぞろと、うじゃうじゃと追いかけてくるんだろうなぁ。


 よし、燃やそう。それが最善策だよね。虫に炎魔法は効果抜群だ。さっきも潜って逃げていたしね。

 ちょっと焦げ臭いが蔓延するけど仕方ない。巫女服に臭いは染みつかないからそれだけでも良しとしよう。


 今度は炎と風の混合魔法を使おう。風魔法で横向きの竜巻を作りその竜巻に炎属性を付与させる。炎の竜巻だね。横向きだけど。

 集敵しつつ燃やせる、今の状況に打って付けの魔法だ。


「燃え去れぇ!」


 穴から出て来たムカデの大軍を炎の竜巻が全て巻き込み焼き払う。焼かれたムカデは竜巻と一緒に吹き飛んでしまった。

 焦げたムカデは臭そうだから、飛んで行ってくれて助かった。処理も出来る完璧な魔法だったね。

 飛んで行ったムカデは…まぁ騎士にでも片付けを頼んでおこう…。


 当然オオムカデも巻き込まれているんだけど、どうやら効いていないみたい。

 こいつ炎魔法も効かないのか。なんだよー、さっきの隕石魔法逃げたくせに。炎じゃなくて岩の威力に逃げたのかな。


 まぁちょうどいいや。わたしが試したい魔法は炎魔法は使わないからね。

 使うのは水魔法と氷魔法。この世界で準じて言うのなら水魔法のみで出来る魔法だ。


 ムカデが身体を縮こまらせ一気に身体を伸ばし勢いよく突っ込んできた。


 それ蛇がするやつでしょ!

 こいつ自分の事を蛇だと勘違いしていないか?皆がドラゴンって言うから勘違いしちゃってるのか?

 お前は爬虫類じゃなくて昆虫だ。


 わたしはさっきと同様、上に跳躍をして回避する。

 けど、ムカデも身体を九十度に曲げて上に回避したわたしを追ってくる。


 なんだその動き!?

 一度見た回避行動は覚えて対策済みって事か。それに空中に居たら回避も出来ないだろうって読みかな。虫のくせに本当に賢いな…。


 でもまぁそういう空中攻めはゲームでもしてきた敵は沢山いるよ。だから対策は完璧だ。

 風魔法の壁を作り、それを足場に再度跳躍をして回避する。何度もやった事のある回避技だ。ゲームでの戦闘経験がこの世界でも活きている。

 身体がゲームキャラなんだから当然と言えば当然なのかもしれないけどね。

 いやー、ゲームやっててよかったね!この為にゲームをやってたわけではないけど!


「さて、わたしの実験に付き合ってもらうよ、ムカデちゃん」


 ここからはゲームではなかった事をやる。

 まず、ムカデを地面に潜らせないようにしよう。ムカデよりも大きい水弾でムカデを覆いつくす。流石に水中じゃ動けないだろう。


 このまま放置とか凍らせても窒息とかで倒せそうだけど、今回やりたいのはそういう事じゃないんだよね。


「雷って知ってる?あれって静電気なんだよね」


 まぁムカデに言っても分からないだろうけども。

 自然現象の静電気で雷程の威力が出るって事は、それをわたしの妖力を込めて作り上げたら良い火力がでるんじゃないだろうか。


 静電気の作り方は氷魔法を使う。雲の中と同じ状況を再現して雷擬きを作れば良い。

 次第に身体の周りにバチバチと音が鳴り始めた。


 おおー出来た!電気だ電気!今のわたしは人間発電機だ!使う電気製品はないけどね!

 うーん、これって多分だけど氷魔法関係ないかもしれない。静電気というイメージで妖力を込めて作り上げた雷魔法とでも言うべきものだね。土魔法で土を水魔法で水を炎魔法で炎という現象を生成出来るみたいに雷魔法で電気を生成した感じだ。

 成功したのはいいけど、巫女服着てなかったら間違いなくわたしが感電してるね。ビリビリに痺れてるね。巫女服様様だ。


 溜めた電気をムカデを捕えている水弾の水槽に向けて放つ。

 電気の放ち方なんて分からないけど、普通に魔法の放つ方法と同じ感覚で放つ事が出来た。魔法の電気だから当然か。


 バチバチと音を立て当たりムカデが水槽の中で暴れて、やがて大人しくなった。

 電気が通りやすいように塩分増しましの水魔法だ。この世界に来た時に飲み水も出せたし、土や光の色も変えられるんだから、水の成分くらいちょちょいのちょいで変えられる。


「いよーし!この世界に来て二体目のボス討伐!やったー!」


 うんうん、順調に世界攻略に向けて進んでいるね!


「ってちがーう!わたしは戦いたいんじゃなくてスローライフをしたいんだよー!」




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