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お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、王都ライフ
29/144

P29 狐と犬と姫

 ラライア姫を治療した後、丁度昼時だったからそのままお城で昼食を取る事になった。王族のランチだ、嘸かし美味しい料理が出てくるんだろうね!

 っと、思っていた時期がわたしにもありました。出てきたのはワーウルフの肉料理でした。勿論美味しかったけれども、違うだよ。わたしが求めていたのはこれじゃないんだよ。

 ワーウルフは飽きた! 戦うのも食べるのも飽きたんだ! もうやめてほしい!


 お昼も食べたしルルも待っているだろうし、街に帰ろうかなと思ってたんだけど、帰りも馬車で送ってくれるらしく明日になるそうだ。

 まぁ走って帰っても良かったんだけど、行きも馬車に乗って来たから道を覚えていない。あぁ、マップが欲しい。


 帰れないという事なので、コタビとラライア姫と遊ぶ事となった。まさか、一国の姫と普通に遊ぶ事になるなんてなぁ。向こうからしても女神と遊ぶ事になるなんて思ってもいないだろう。

 姫と女神に挟まれて遊ぶコタビも相当な立場だな。そのどっちとも仲が良いのだから気負いはしないだろうけどね。


「いつもはスインがわたくしの部屋に運んでくださるのでここで食べてましたから、大勢での食事なんて久々で嬉しかったですわ。食堂までも歩けませんでしたもの、まるで夢を見ているようですわ」


 そんなに悪かったんだね。血を吐くくらいだし当然と言えば当然なのかな。でも、それも今日までだ! 今後は活発に活動してくれたまへ! わたしを巻き込まないようにね!

 絶賛巻き込まれてラライア姫の部屋に戻ってきているのだけれども。


「でも、食堂に着く頃には全力で走ったみたいに疲れてたの。体力全然ないの」


 ラライア姫はうぅ~って言いながら拗ねている。

 疲れるのも仕方ないと思う。病み上がりって言うのもあるけれど、流石お城って思うくらい廊下が長いんだよね。わたしだってこの身体じゃなければ途中で倒れてたかもしれない。それくらい長い。嫌がらせの如く長い。

 このお城で生活するだけで、体力トレーニングにはなるのではないだろうか。これから体力を付けなければならないラライア姫にはぴったりだね。


 そう言えば、コタビは全然疲れてなかったな。ラライア姫みたいに体力がない訳ではないけど、子供には辛い廊下だと思う。わたしみたいにイレギュラーな体質でもないだろうし。


「コタビは体力あるんだね。あの廊下を歩ききっても疲れてる顔一つしていなかったし」


「当然なの!コタビは定期的にラライア様に会いに来てたの。その度に毎回通って来た道だから、もう慣れてしまったの」


 なるほど、コタビの努力の成果という訳だ。毎回、この長い廊下を歩いて来ているんだから、そりゃ体力も付くというものだ。コタビ的にはラライア姫の治療の為に来ていたから体力が付くのはおまけみたいなものかもしれないけどね。


「その節はどうもありがとうございましたわ。でも女神様のお陰で元気になる事が出来ましたので、もう通う必要はありませんわ」


「え……」


 コタビが悲しそうな表情になっている。


「ふふ、冗談ですわよ。わたくしの数少ないお友達ですもの、これからも毎日会いに来てくださいですわ」


 パァっと明るくなるコタビ。

 コタビの表情筋は忙しくて筋肉痛になるんじゃないか。


「毎日は無理だけど、絶対会いに行くの! 毎日は無理だけど! なの」


 毎日は無理って言うのを強調する辺り、やっぱコタビもあの廊下を通るの嫌になってるんじゃないか。


「女神様も是非、遊びに来て下さいませですわ」


「う、うん、考えておくよ……」


 わたしだって疲れはしないものの、あの廊下は通りたくない。長いんだよ。これがゲームだったら、お城入ったらラライア様の部屋にワープ出来る機能を実装してくださいって言う要望を運営に送るレベルだよ。


「ところで、遊ぶって何して遊ぶの?」


 遊ぶと言えばゲームだ。それしかわたしの頭にはない。いや、なかった。この世界に来てからは魔法の研究って言うのも追加されたからね。研究だから遊びと言って良いのか分からないけど、わたし的には遊びなのだ。


「それは勿論! 女神様に質問して……」


「却下だよ! わたしへの質問は一切答えないからね!」


 コタビの質問に答えていたらそれだけで一日が終わる勢いになる事は目に見えている。馬車でわたしは学んだんだ。わたしは学習できる子だからね。

 更に今回はラライア姫まで加わっている。コタビだけで精一杯なのに増えたら無理だ。一日じゃ終わらないかもしれない。


「ええー!? なの! まだ、女神様に聞きたい事は一割も聞いてないの!」


 怖いよ! 車であれだけ聞いてきといてまだ九割残ってるの!? 質問お化けじゃん!


「ダメなものはダメ! あんまり答えてるとわたしが天界の秘密機構に怒られちゃうからね!」


 勿論そんなものはない。あったとしてもわたしには全く関係ない事だ。だって、わたし本物の女神じゃないもの。


「女神様が怒られてしまうのなら仕方ないの……。諦めるの……」


 そして、わたしの言う事なら何でも信じてくれる信者コタビ。なんて扱いやすいんだ。


「仕方ないですわ。ここはわたくしの出番の様ですわね。この部屋に閉じ籠ってても出来る遊びをお教えしますわ」


 寝たきりの姫が出来る遊び。まさか、わたしがやっていたフルダイブ型のVRゲーム!? あるの!?

 電子技術はないけど魔法はあるから、魔法陣とかを駆使してゲームを作れているとか!? 王族だもんね! それくらいの技術力を秘めていてもおかしくない!


「その遊び、是非教えてほしい!」


「やめたほうがいいの。ラライア様の遊びは理解出来ないの」


「コタビはいつもうそう言って一緒に遊びませんけど、とっても楽しいんですわよ」


「女神様もきっとコタビと同じ事を思うの」


 一体どんな遊びなんだ。わたしが思っている事とは間違いなく違うという事だけは何となく分かった。

 でも、一国のお姫様がそんな理解出来ないような遊びをする訳ないでしょ。姫だよ?姫。きっとコタビには理解出来ないだけで、わたしみたいな育ちの良い子には理解出来るのかもしれない。


 え? 引き籠もりでゲームばっかしてるやつが育ちが良い訳がないって?

 おいおい、育ちが良いに決まっているじゃないか。だって、わたし女神なんだもの。


「この部屋の窓から王都が一望できるのですけれど、歩いている人や働いている人、この王都で生活している人達を見ていると凄く面白いのですわ」


 まさかの人間観察? それのどこが楽しいのかさっぱり分からない。

 一国の姫だから自分の国の民の生活ぶりを観察と言うか、今日も平和に暮らしているなぁって見守るのが楽しいのだろうか。

 そうだとすると、姫としては民思いの良い姫なんだね。


 わたしも窓から街を見てみる事にする。ラライア姫の部屋はお城の割と上の方にあるので遠くの方まで見る事が出来た。

 おお! 絶景だ!

 王都をじっくり見るのは初めてだ。王都に着いた時も神殿から裏口入門みたいな感じで王都に入ったし、城に来るのも馬車で王都の景色を全く見ていなかったからね。

 やっぱ日本とは全く違うね。異世界って言うか外国って言うかそんな感じだ。高層ビルとかコンクリートとかアスファルトの道もない。

 それに車も工場もないから空気が澄んでいる。そんな気がする。


 でも、面白さはやっぱり感じない。わーきれいなけしきだー。っとしか思わない。

 ラライア姫を見てみると、凄く楽しそうに王都を見下ろしている。


「何を見てそんな楽しそうにしてるの?」


「女神様! あそこを見てくださいですわ! あそこの黄色い屋根の家がある所の道ですわ!」


 ラライア姫が指し示す場所を見てみると、男女が二人で歩いているのが見える。

 これのどこが面白いんだ。見る人が見るとリア充爆発しろって言う言葉が飛んでいく光景だよ。

 わたしは恋愛なんてどうでもいいのでそんな事は思わないけどね。強いて言うなら魔法が恋人だ。


「あの人達がどうかしたの?」


「男性の方ですけれど、あの方は結婚もしていて子供もいるのに毎日違う女性の方と歩いているのですわ! 面白いですわ!」


 面白くないよ! 全然面白くないよ!

 なんでお城から浮気調査しているんだ、この姫は!


「次はあそこを見てくださいですわ!」


 次も二人の男女が歩いている。また浮気現場とかじゃないだろうね…。


「特に変わった様子もないけど……?」


「女性の方、いえ、女性に見える方ですけど実は男性の方なのですわ!」


 えええええ!? わたしが見る限りどう見ても、女だ。うん、女だ。


「どうして男だって分かるの?」


「ふふ、姫の秘密ですわ!」


 ウィンクしながら嬉しそうな笑顔でそう言うラライア姫。

 怖い! その笑顔は可愛いけど怖い!

 さっきの浮気してる人の結婚していて子供まで居るって言う情報もあの女の人が男の人だっていう情報もどうやって入手したんだ。姫の秘密怖すぎるよ。

 わたしも気を付けよう。いや、わたしにやましい事は何一つないけどね。


「次は……」


「待って! もういいよ! 満足したから!」


 どうせ次も、何かしら秘密がある人達なんでしょ! 分かってるんだからね!


「そうですか? まだまだ、これからが面白くなりますのに残念ですわ」


 まだまだいるんだ……。この国大丈夫か……。姫の楽しみ方からして、大丈夫じゃなさそうだけども。


「だから言ったの。ラライア様の遊びは理解されない遊びなの」


「コタビの意見に全面的に賛成するよ」


「当然なの」


「そんなぁ! 酷いですわ! こんなにも面白い事を理解出来ないなんて損ですわよ」


 理解したくもないよ。どうしてこんな事を面白いと思ってしまうように育ってしまったのか。きっと親の教育が悪いんだね。つまり、この国の王と王妃が悪いという事だ。大丈夫かこの国!


「折角スインに教えてもらった遊びですのに……皆で遊びたかったですわ」


 諸悪の根源はあのメイドか! あの慌てん坊のメイドか!

 姫になんて遊びを教えているんだ。それを面白いと受け入れているラライア姫にも問題はあるんだけども。


 噂をすれば何とやら、扉がバーンと勢いよく開きスインさんがあわあわしながら入ってきた。


「あわわわわー! 大変です! 大変ですよ、姫様!」


 相変わらず、慌ただしい人だ。

 大変ですって、何が大変なのかを先ず伝えてほしい。そこが一番重要でしょうに。


「またスインはドタバタと騒がしいですわね」


「あわわぁ、す、すみません。でも、大変なんですよ!」


 だから、内容を言いなよ! 内容を言わないと伝わらないよ! 分からないよ!


「落ち着いて、何が大変なのかを話してくださいですわ」


「清潔魔法で姫様の服を洗濯していたのですが……、パンツだけ風で飛んで行ってしまいました!」


 なんだってー! 大変だー! それは確かに大変だー! ラライア姫のパンツが風に盗まれたぞー!

 いやいや、そこまで慌てる程の大変さか?パンツが飛んで行ったのは大変な事だけど、慌てて報告に飛んで来る程の事ではないと思うけど。


「はぁ、またですか? どうして、いつもいつもパンツだけ飛んで行ってしまうのか、疑問に思いますわ」


 またって、どれだけラライア姫のパンツが王都に舞ったんだ。しかもパンツだけ。


「いつもの光景なの。もうどうしようもないの。王都名物として受け止めるしかないの」


「そうですわね。パンツの一枚や二枚、減る物でもありませんし構いませんわ」


 減ってるよ! パンツ減ってるよ!

 ラライア姫のパンツが空に舞うのが王都の名物にしないでほしい。いや、その国の姫が良いなら良いのか?わたしなら嫌だけど。


「あわわぁ、次からは気を付けます……」


 何回も飛ばしているという実績があるからその言葉は信用できないな……。絶対次も王都にパンツが舞うね。ヒラヒラと舞うね。


 スインさんが部屋から出て行き、再び三人になった。

 この二人に任せていたら碌な遊びにならないので次はわたしが提案するとしよう。


「リバーシって言うんだけど知ってる?」


 そう、わたしが提案するのは馬車で作ったリバーシだ。って言うかこれしか作っていないからこれしか提案出来ない。


「リバーシ? 見た事も聞いた事もありませんわ」


「コタビも知らないの。ハッ! これは神様の遊びなの! 天界でしか知られていない崇高な遊びなの!」


 神の遊びではないけど……、まぁこの世界ではしられていないって事は分かった。


「この盤上にこの駒を置いて同じ色で挟めば反転して色が変わっていって、最終的に自分の色が多い方が勝ちって言うゲームだよ。知らなくても簡単だからすぐ覚えられると思う」


 それから数分、コタビとラライア姫にリバーシのやり方を教えた。教えたって言っても超簡単だ。自分の色の駒で挟むの一言で終わりだ。

 駒い所はやりながら教えればいいからね。うん。


「ふふ、またわたくしの勝ちですわ!」


「負けたの……完敗なの……」


 ラライア姫が白、コタビが黒、そして盤上は真っ白である。黒一つなく、隙間一つなく真っ白である。

 ラライア姫が強いのか、コタビが弱いのか。あるいはその両方なのか。多分両方だな。


「コタビは多くひっくり返そうとしてるから負けるんだよ。ひっくり返したら自分が次に置く所が減っちゃうからね」


「なるほどなの……。天界の遊びは奥が深いの……」


「ついさっき始めたばかりなんだから、コタビが浅いんだよ。これから負けた経験を活かして強くなって行けばいいんだから頑張ってラライア姫に勝とうね!」


「打倒ラライア様なの!」


 ゲームのボス戦と同じだ。負けたら負けた理由を解明して、次に活かす。わたしはそうやってボスを攻略してきたからね。

 わたしが負けず嫌いって言うのもあるかもしれないけど、負けたら負けたで終わりたくない。ゲームはやっぱ勝たないと楽しくないからね。


「コタビが強くなっても、わたくしはその更に上を行きますわ! そう言う事なので女神様! 勝負ですわ!」


「ふっふっふっ、いいでしょう。この女神ツズリが相手をしてあげましょう!」


 何となく女神っぽく、強者っぽく行ってみる。

 っという事で、相手が初心者だろうとゲームに置いて手加減はしないわたしはあっさりと勝利を手にした。

 ごめんね、ラライア姫。勝負事で負けるわけにはいかないんだよ。


「完敗ですわ……。自分で置く場所を決めているはずなのに、女神様に置く場所を決められているような感じでしたわ……」


「ふふん! なの! 女神様に勝てるはずがないの!」


 何でコタビが得意げに威張っているんだ。虎の威を借る狐みたいになっている。

 いや、狐はわたしだから狐の威を借る虎か。でも、コタビは虎と言うより犬っぽいから狐の威を借る犬か。なんかもう、ややこしいな。


「次はコタビが女神様とやる番ですわ!」


「かかってきなさい! コタビ君!」


「お手柔らかにお願いしますなの……」


 ノリノリなわたしはさておき、相手が誰であれ手加減をしないわたしはコタビをボッコボコにした。なんと十手で終わってしまった。


「コタビ……流石に酷すぎですわ」


「うぅなの……」


「何て言うかまぁ、頑張ろうね!」


「無理やり絞り出した頑張ろうの言葉が痛いの……」


 頑張れって言葉しか出なかったのだから仕方ない。許してほしい。

 それからしばらく、リバーシをして遊んだ。リバーシだけだと飽きてくるから、もっと色んな種類あってもいいね。今度暇なとき考えておこう。


 その日は神殿には帰らず、ラライア姫の部屋に泊めてもらう事になった。

 姫様のベッドは流石姫様のベッドって感じで大きいベッドだ。小柄なわたし達が川の字になっていも十分寝れる広さがある。

 わたしを中心に右がコタビ左がラライア姫だ。両手に華だ。最高だね。


 ラライア姫は久々と言うかほぼほぼこんなに遊んだのは初めてだったのか、ベッドに入るなり直ぐに寝息を立てていた。

 コタビはわたしと寝るのは二回目だけど、相変わらず寝付けない様子だったけど、わたしはどこでも基本寝られるのでラライア姫同様に直ぐに夢の世界に旅立った。




誤字報告ありがとうございます。

「コタビ」を「kと浴び」という、どうやったらそんな誤字するんだよ、気づくだろっていう誤字が見つかりました。恥ずかしさ溢れてる。

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