表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お狐様スローライフ  作者: くるみざわ
狐っ娘、異世界ライフ
1/144

P1 ここは異世界?

 どうも、皆さんこんにちは。

 今、ゲームの世界? 異世界? のどっちかに来ている。来ていると思われる。


 現在の状況は森の中。360度どこを見回しても木、木、木。

 いやー、なんでこんな事になっているんだろう。実ははっきりとは覚えてないんだよね。

 いよーし! ここは冷静になって、こうなる前の記憶を思い出そう!


 わたしは、河渕灯(こうぶちあかり)、17才。

 家はお金持ち。なので、生活に苦労はしたことがない。金銭面ではね……。

 お金持ちと言っても幸せなのかって言われると、はい幸せですとは言えない。

 父は女遊びばかりで家になんて帰ってこないし、母は欲しいもの買い漁りホストで遊ぶ日々。

 家族愛? 夫婦愛?何それ? 美味しいの?

 わたし? わたしは、別荘で一人暮らし。お金は自由に使っていいらしいからその辺は感謝しているよ。お金には困らないのは良いことだ。でも、あの両親みたいに溺れるのは良くない。

 だから、極力使わないようにしている。


 学校は行っていない。勿論、初めはちゃんと通っていたよ。中学に上がるまではね。

 小学校の頃は良かった。子供はお金にがめつくないからね。がめつい子も中にいるかもしれないけど、少なくとも私の周りにはいなかった。

 中学も最初は楽しかったよ。友達もいたしね。まぁ、その友達もお金に目が眩んだのか、金出せ金くれって毎日のように言い出した頃から友達とは思わなくなった。

 お金を出すのを拒否し続けてたらいじめが始まった。金持ちなんだから金出すのは当たり前だとかなんとか、脅されたり殴られたり、思い出したくもない日常だ。


 そして当然の如く、わたしは引き籠った。引き篭もり生活の始まりだ。

 家に居てもする事なくて暇を持て余してたんだけど、そこで出会ったのがアニメ、小説、ゲーム。

 アニメや小説はファンタジー物ばかり。魔法の世界に憧れた。

 いいよね。魔法。凄く便利だもん。水は自分で出せるからタダ。火も自分で出せるからタダ。なんて素晴らしいんだ。おっと、金持ちなのに貧乏性になってしまっているな。でも、仕方ないよねあんな金に溺れたのが親だもの。ああはなりたくない。


 はぁ、わたしも魔法とか使ってみたい。

 っていう思いでやり始めたVRMMORPGのゲーム。フルダイブ型のゲームだ。

 これ凄いのよ。まるで自分が異世界に、ゲームの世界に入っているような感覚なのよ。

 風を感じて、大地を踏みしめる感覚あって、草原で寝そべって寝たら太陽が暖かくで気持ちいいところまで再現されているんだよ。

 勿論、欠点もある。痛覚がある。大ダメージを受けても、死ぬほど痛いって訳ではないけどね。


 極力お金に頼りたくない私は無課金でゲームをしてた。戦闘面に関しては全く使わなかった。

 強い武器や防具なんていらない。そりゃあった方が楽に強くなるし効率もいいのはわかる。でも、そうじゃないんだよ! 自分のPSだけで最前線に立つ方がかっこいいじゃん! 無課金でも前線を張れる。だったら課金なんて必要ないよね。そうPSさえ極めればね!


 真っ先に極めたのは魔法職。そりゃそうでしょ、魔法を使いたくてやり始めたんだから。

 全属性を極めましたとも! 魔法愛だね! 攻撃も回復も、支援系は……うん、ソロプレイには必要なかったよね。一応スキルレベルカンストまではしたけど、NPC相手に使う虚しさよ。

 ゲームでもボッチかって? いや、ボッチじゃないよ。基本的にはソロだったけど、たまーにPT組んだりもしたよ。PTじゃないと受けれないクエストなんてものがあるからね。運営の嫌がらせだね。


 極めたのは魔法だけではない。近接武器も多少は極めた。

 いや、極めざるを得なかったのよ。魔法が効かないモンスターが出たりするとねどうしても近接武器も触らないと駄目だったんだよね。魔法職の私が近接武器を握ってもダメージは近接職には遠く及ばないけどね。でも、魔法も近接もできるオールラウンダーってかっこいいよね! 後衛をやらせても前衛をやらせてもいい。PTに引っ張りだこ。嘘です。ほとんどソロでした。


 魔法が使いたくて始めたのになんで近接まで極めてしまったのか。このゲームにハマって好きになってしまったからだよね。

 そう、このゲームが好きなのだ。自分が作ったこのゲームでのキャラが好きなのだ。

 戦闘面に関してはお金はかけてはいない。でも見た目だけは別! これでもわたしは女なのだ。見た目を気にする乙女なのだ。ゲームの世界とは言え、自分の身体だよ。そりゃ可愛くしたいでしょ。

 そして、最終的に落ち着いたのが巫女服狐っ子。いやーね、モフモフの尻尾と耳がいいよね!まぁ、自分の尻尾と耳をもふるのはなんか違うなって後から思ったりもしたけど、後悔はしていないとも。あー、一つだけ後悔した事があったよ。尻尾にも当たり判定があること。現実にはない尻尾の事を気にしながら回避するのに慣れるのには結構時間かかったよ。

 あ、どうして巫女服なのかって?狐っ子と言えば巫女服ってイメージがわたしの中にあるからだよ。なんでだろうね。

 

 え? 異世界に来てしまった理由を思い出せって? こういうのは一から思い出していった方が思い出すんだよ。

 うーん。確か今日もゲームしていたと思うんだよね。アプデで新しくレアアイテムを落とすボスが追加されたから、早速倒しに行こうと歩いて移動してたと思うんだど……。

 そこからの記憶が曖昧だ。

 なんか、夢? を見た気がする。ゲームの世界で夢って見るのかな?

 そもそも、ゲームの中とはいえ歩いてて急に夢を見るのかな?

 意識だけが存在しているような真っ暗な世界。身体の感覚がない。目が空いてるのかどうか、目があるのかすらわからない。だから意識だけの真っ暗な世界。そんな夢。

 そこで誰かもわからない声を聞いた。そうだ、声を聞いたんだ。だんだん思い出してきたぞ。

 確か……。






「ジー…ジー…ザ、ザー」


 なんの音だろう?


「あーあー。聞こえているかな?」

 

 頭に直接声が響いてくる。

 聞こえてるけど…。誰?ってかどんな状況だこれ。

 夢?


「まぁそんな感じだと思ってもらっていいよ」


 そうなんだ。変な夢ね。

 ゲームをしていたと思うんだけど。寝落ちちゃったのかな。今までゲーム中に寝た事なんてなかったのに。


「寝たというより、死んでしまったけれどね」


 は?

 夢の中でいきなり死にました宣言されてしまったよ。酷い夢だね。


「そんな事よりも、早速本題に入ろう。いくつか質問があるから答えてくれると嬉しいよ」


 そんな事よりもって、死にました宣言をそんな事よりもって。本当に酷いな私の夢。


「魔法は好きかい?」


 魔法? もちろん大好きだけど。なんで魔法?


「もし異世界に行けるなら、異世界で何をしたい?」


 無視ですか。そうですか。

 異世界? そうね……。魔法が使える世界ならのんびりスローライフとか魔法を極めるのもいいね。

 魔法がないなら、今の現実と変わらないし、不本意ながらお金がある今の方が楽だし行きたいとは思わないかな。


「では、異世界に持っていきたいものはあるかい?」


 持っていきたいものかー。うーん。持って行っても活用出来る物って考えてみるとないよね。

 パソコン……電気を使う系は使えなかった事を考えると怖い。

 刀や銃……武器は消耗品だ。無くなる物を持って行っても意味がない。そもそも扱えない。

 あ、一つあった。定番だけど当たり前のように持っているもの。

 でも、場合によっては失われてもおかしくないもの。

 記憶。


「異世界で生きていくために欲しいものは?」


 今度は欲しいものか。

 やっぱ魔法関連のものが欲しいかな。

 例えば、MP? 魔力? そういう魔法を使う力みたいな。

 魔法が使える異世界だったとして魔法が使えなかったら悲しいからね。


「君が一番大切にしてる物はなんだい?」


 ゲームデータだね。

 わたしの汗と涙の努力の結晶だよ。ゲームだから汗も涙もないけど。でも、努力をしてきたのは本当。

 それに、自分のキャラ気に入ってるんだよね。VRゲームだから外見は鏡でしか見れないけど、自分で作って、自分がなりきっているキャラだ。自分の第二の身体と言ってもいい。大切に決まっている。


「うん。なるほど。質問はこれで終わり」


 何がなるほどなのか。

 というか、あんた誰よ。


「じゃあ、もう時間だからこれで失礼するよ」


 おーい、無視かーい。






 って言う夢を見たんだよね。思い出すと腹立ってきた。自分の夢だけど。

 そのあと、気が付くと森の中って言うのが今の状況だ。


 ゲームに戻ったのなら草原に居るはずで、現実に戻ったのならベッドの上のはずなんだよね。

 で、最初に思ったのはゲームに戻ったと思ったわけよ。

 なんでかって? 尻尾が付いているんだよね。尻尾が。これ、鏡見なくてもわかる。ゲームでの自分のキャラだ。

 だからゲームだと思ったんだよね。

 でもね、土、木、葉。全てがリアルすぎるんだよ。いくら最新のゲームだからって土の粒とかまで再現出来ていなかった。

 でもここは、木、一本一本の形が全て違うし、葉っぱ一枚一枚の大きさもまちまちだ。それくらいリアルだ。

 ここは現実なのかな。でも、ゲームキャラなんだよね。意味わからん。

 現実の身体がゲームのキャラになったのならベッドの上で目覚めるだろうし、やっぱりゲームなのかなあ。

 急にメンテナンスになってアプデが入って、それで変な夢を見ていたのかも。

 いや、ないな。ないない。

 そんな無差別テロみたいなメンテナンスあって堪るか。

 仮にあったとしてもゲームに接続できなくなって、目が覚めるはずだ。

 ゲームに接続……あ、そうだ簡単な方法があるじゃーん。

 ゲームだったらメニュー画面開けるよね。


「メニュー」


 あ、開いた。

 やっぱゲームなのか。ってあれ?

 

「ステータスしかない……アイテムもログアウトもない……」


 バ、バグかな。致命的だね……。

 アイテム欄開けないって、集めたアイテム達は?

 何時間も籠って手に入れたレアアイテムとか結構あったんだけど…ショックだ…。

 それと、ログアウトがないのも大問題だよね。

 ゲームから出られないと現実では空腹で死んだりするのかな。

 あ、あの変な夢が本当ならわたしって死んでるんだっけ。

 でもこうやってゲームキャラ操作できてるって事は生きてるよね。


 とりあえず、今出来る事をしよう。そうしよう。

 唯一、メニューに表示されているステータスを開こう。


「ステータス」


『名前:ツズリ

 種族:妖怪(妖狐)


 装備:巫女服(神様謹製)[詳細]


 スキル:異界言語[詳細]

     異界文字[詳細]

     妖力付与[詳細]』


 わーい。ツッコミ所たくさんだー。

 って現実逃避してる場合じゃない。

 何このステータス。

 HPもMPも打撃力とか魔法力とか耐性も書かれていない。

 一番悲しいのは、極めた魔法が全部消えている事だ。

 わたしの努力がぁ……。

 また一から極めるしかないのかな。魔法愛さえあればまた極めれるよね。

 いよーし! 気を取り直して他の所を確認しよう。


 名前:ツズリ

 これはゲームで使っていた名前だ。

 ゲームキャラの姿だし何の問題もない。


 おかしいのはここからだ。


 種族:妖怪(妖狐)

 妖怪ってなんだ!?

 わたしのキャラは獣人種だよ!

 モフモフの獣人っ子だったはずだよ!

 なんで妖怪扱いになっているんだ!


 装備:巫女服(神様謹製)[詳細]

 えーっと。うん。

 巫女服はわかる。わたしのキャラが着てたやつ。

 物理、魔法の耐性もあって、尚且つ可愛いというお気に入りの衣装。

 それはいい、けど、(神様謹製)ってなんだ!?

 詳細を見てみるか。


 『巫女服(神様謹製)

  神様が丹誠込めて作り上げた最高の一品。

  耐熱耐寒。防汚防臭。

  更になんと! 防御面でも優れているよ!

  捨てないで下さい。お願いします。』


 お、おう。性能凄い。流石神様謹製って書いてるだけあるね。

 なんか最後の方は懇願されてるけど、流石にこの性能の服は捨てないよ。というか着るものこれしかないよ。

 

 神様が作ったとか。そもそも、神様がいるのかどうかすら怪しい。

 けど、次のスキルにある文字が神様が居て神様のせいで今の現状になっていると、わたしの中のファンタジー思考が訴えてくる。

 これって多分そういうことだよね。


 『異界言語

  異世界の言葉が理解できるようになる。

  元の世界の言葉で発音しても、この世界の言葉に変換され話せる。


  異界文字

  異世界の文字が理解できるようになる。

  元の世界のひらがな・カタカナを書けば、この世界の文字として認識される。


  妖力付与

  狐と言えば、妖狐。妖狐と言えば妖怪。妖怪と言えば妖力。

  この世界の魔力とは少し異なるが、ちゃんと魔法が使える。』


 異世界の言葉、文字を理解できるようになる……。

 ここは異世界か? 異世界なのか!?


 あの変な夢で言っていた。わたしが死んでるって…まさか本当なの!?

 死因は何だろう……。

 やめよう、死んでしまったのなら考えても無駄だ。

 現実を見よう。

 ああダメだ……現実を見ても理解できない状況だった……。


 落ち着け私。落ち着くんだ私。

 状況を整理するんだ。

 自分の姿は、ゲームキャラ。

 私はもう死んでいるかもしれなくて、今、異世界にいる。

 うん、意味わからん。

 

 うーん。

 ん?

 待てよ?悩む必要あるかな?

 元の世界にいい思い出なんてないし、友達もいないし、家族はいるけどあんなのだし。

 むしろ異世界大歓迎なのでは?


 スキルの妖力付与とかいうやつに書いてあった、ちゃんと魔法が使えるって説明あったよね。

 魔法!

 この世界には魔法がある!

 ゲームという縛りがなくなった魔法の世界だ!

 これは好機では!?

 わたしが憧れた魔法を使ってスローライフ!

 ありがとう! 神様!

 変な夢とか妖怪とかちょっとイラっとした事もあるけど、ありがとう神様!


「魔法も楽しみだけど、森を抜けて街を探さないとなぁ。お腹も空いたし食べ物を買わないと……。あっお金なくない?」


 わたしの異世界生活、始まる前に早速ピンチだよ!




よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ