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光と闇のシンフォニア  作者: 花宮 あいら
光と闇のファンタジア
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1ー5 光と闇の対峙の先は

5章 闇の鎮魂歌ーレクイエム


───闇へと沈みゆく


───名もなき地の上に


───祈る


───慈愛の鎮魂歌ーレクイエム


───紡ぐことわり


───闇夜の月に


───狂い果てて


───光散りゆく片割れ


───世界……


「……終焉か」



天と地の狭間で

闇で命を無くしたものは光へは上がれない決まり。

だからアリアは幾たびも湖のほとりでレクイエムを歌い続けてきた。

その闇を、光を優しく夜に包むように。

安らかに民が眠れるように願って。


その湖から時々歌が聞こえた。

綺麗なソプラノの声。透き通り、美しく、流麗な調べを湖に張る水に波紋をつくるような。


───光へ手を伸ばす


それは闇のレクイエムと対をなす光のセレナーデだった。

幻想的なその調律が、アリアは聞いていて心地良かった。

全てにおいて対をなす二つの王国のなかでアリアとルナは、知らず知らずのうちに惹かれていた。


誰か分からず、顔も知らず、知っているのはただ、声だけ。



「アリア様?」



ルナの声がした。



「ルナ…?」


「その声は、まさか、闇のレクイエムを歌う…」


「言うな」


「っ!そうなのですね…!」



振り返る。ルナも振り返ったようだった。

アリアはつけていた仮面を外す。


ルナは驚いた。

闇の中でしか外さないと思っていたから。

アリアの美貌が、ルナをくらくらさせるほどに美しい。彼から視線を逸らした。



「お前はいつもここで、セレナーデを歌っていただろう。」


「はい」


「オレはいつもここで、闇のレクイエムを歌っていた。」



虚空に手を伸ばし、湖を眺める。



「…では、わたしたちは知らないうちに知り合っていて、惹かれあっていたのですか?」


「惹かれあって…?」


「少なくともわたしは、姿こそ見せないけれど、美しい歌声を湖一面に響かせているあの声が好きでした。

 今も、好きです。」



屈託なく言う彼女に、アリアは頬を染める。

しかし、アリアは突っぱね返してしまった。



「…確かに、セレナーデの声が好きな自分がいた。」


「だったら…!」


「でもオレたちはもう夫婦だ。

 いくら光の王女だったとしても、もうセレナーデを歌うことは父上がお許しにならないだろう」



その言葉をルナに吐いたとき、彼女は綺麗な胸元──心臓を抑えて泣きそうになりながら、言った。



「…女神様からもご祝福いただいて、誰からも認められた夫婦なのに、なぜ心が遠いのでしょう?

 なぜわたしは、こんなにもここが、苦しいのでしょう?」



ルナは駆け出した。



「ルナ!!」



アリアはルナを追いかけた。

でもルナの強い光に阻まれてうまく進めない。


仕方なくアリアは城へ戻った。

二人のベッド、悪魔と天使が描かれた絵画

さっきからずっと、胸のあたりがざわざわして落ち着かない。どくん、どくんと不穏な音をたてている。

ずっと、ずっと身体中に鳴り響く。



「なんで…こんなに、苦しいんだ?

 病気でもなんでもないのに…」



頭と胸ぐらを手で抑えて、溜め息をつく。

アリアは、ルナの言葉を思い出した。



『なぜ心が遠いのでしょう?

 なぜわたしは、こんなにもここが、苦しいのでしょう?』


「っ────」



(ルナも、同じ気持ちなのか?)


(アリア様も、同じ気持ちなのでしょうか?)


なら、私  は───

   オレ



───あなたと共に


光でも闇でもない「狭間」を選んだ二人


光のセレナーデと対になる闇の鎮歌。


同じ思いなのに、

うまく伝わらないのがもどかしい二人です。

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