管理番号4番:狂った時計 ①
管理番号4番・簡易名称:狂った時計
概要:管理番号4番は非常に小型の持ち運べる時計です。
管理番号4番は時計としての機能を果たしておらず、針は止まっています。管理番号4番の点検の際には保管部屋からの持ち出しを認めて下さい。
管理番号4番は1時間ごとに針の位置を変化させます。そして、管理番号4番を所持している人間は、所持時間が1時間を超過すると、所持者は管理番号4番が指し示す時間が実際の時間だと誤認するようになります。(同時に、対象の体内時計や時間感覚が著しく狂わされることになります)
結果として、日常生活に支障をきたす程度のことでありますが、組合としては危険存在として点検を希望します。
「……これは?」
俺は部屋の真ん中にまで行ってから、部屋の中央に無造作に置かれているものを手に取った。
「……時計、か」
『はい。今回の危険存在はその時計です』
耳元から聞こえるライナの声で、今自分が手に取ったものが今回俺が点検しなきゃいけない存在だということを、俺は理解した。
「へぇ……特に危険は……なさそうだけど?」
俺自身が見てもわからないだるが……実際、危険には見えなかった。ただ、どうやら時計は壊れているらしく、針が動いていなかった。
『はい。危険性は低いそうなので、それを持って、部屋を出て下さい』
「え? い、いいの?」
『問題ありません。そのまま自分の部屋に戻って下さい。ただし、時計は懐にしまい、見ないようにして下さい』
ライナの言うことの意味がわからなかったが……部屋を出て良いのならば出て行くに決まっている。
俺はライナの言うとおり、時計を懐にしまうと、そのまま鉄の扉を開けて部屋を出た。
部屋の前にもライナはいなかった……どうやら、俺は部屋に戻っていいらしい。俺は時計を懐にしまったままで暗い廊下を歩き、部屋の前までやってきた。
「あ」
見ると、ライナが俺の部屋の前に立っている。
「ああ。管理番号1番。時計、持っていますか?」
「え……ああ。ほら」
俺はそう言って時計を取り出す。ライナは俺が持ってきた時計を確認する。
「……管理番号1番。時間を確認して下さい」
「え……でも、この時計壊れているんじゃ……」
「命令です。確認して下さい」
ライナに強い口調でそう言われてしまったため、俺は時計を確認する。
「……5時45分……で、本当の時間は?」
「回答を拒否します。一時間後、再度この部屋を訪れますのでそれまで待機していて下さい」
そういって、ライナは俺を残して行ってしまった。
「……意味がわからないな。この時計、壊れていること、ライナは知らないのか?」
俺はそう言って時計を今一度見る。
……やはり時間は5時45分を指し示している。
しかし……
「……最初に見た時は……違う時間だったような……」
最初に手にした時、時計が示していた時間は違う時間だった……無論、明確に覚えているわけではないが……少し嫌な予感がする。
「……まぁ。一時間だけ、待つとするか」
俺はライナの言葉を思い出し、面倒では有るが、一時間だけ部屋で待つことにしたのだった。