管理番号31番:開放厳禁 ①
管理番号31番・簡易名称:開放厳禁
概要:知らない。どうでもいい。だから、開ける。あの扉を。
「……なんだ?」
その日、俺は不意に目覚めた。なんだか嫌な感じがしたからだ。
俺はベッドから起き上がり、そのまま着替える。
そして、扉の前に立つ。なんだか……おかしい。
俺はそんな感覚を持ちながら、扉を開こうとする。開かないはずの扉を。
しかし……扉は開いた。
俺は廊下に出る。誰もいない。妙に静かだった。
……いや、この場所は静かではあるのだが……なんだかおかしいのだ。
「……ん?」
ふと、足元を見ると、紙切れが落ちていた。俺はそれを拾い上げる。
紙切れには「31」とだけ書かれていた。
「……31って……管理番号か? ライナなのか?」
仕方なく俺は紙切れを懐にしまい、そのまま廊下を歩く。管理番号31……とりあえず俺はそれが保管されているであろう部屋に向かった。
「……なんだ?」
俺は思わず振り返る。何もいない。しかし……なにかに見られているような気がする。
俺は少し足を早めた。しかし、何かがついてきている感じはする。
俺は走り出した。恐ろしい。恐怖が俺の心の中に明確に芽生えた。
そして、なんとか31番の保管部屋の前にたどり着く。
「……はぁ。なんだって……いうんだ……?」
俺はその時振り返ったことを酷く後悔した。
俺の目の前には……酷く異様な物体が存在していた。
ソイツは俺のすぐ目の前にいて、俺を見ていた。その身長は俺の二倍……いや、三倍はあったと思う。
とにかく妙に細長かった。顔は……よくわからなかった。目、鼻、口と思われる部分は黒く窪んでいるだけだ。
腕のような部分は鋭い鎌のようになっていて、それが四本、やつの背中から生えていた。
「ハイ。オワリ」
ソイツは喋ったのかわからなかったが、とにかく俺にはソイツが喋ったように聞こえた。
それと同時に四本の鎌のような腕が一気に俺の胸をめがけて振り下ろされる。
無論、俺は瞬時に鎌に切り裂かれた。それと同時に口から大量の血液が吹き出す。
そのまま鎌を突き刺した状態で、奴は俺を持ち上げる。高く持ち上げられた場所から俺はソイツの背後を見ることができた。
だが……それを見たことも後悔した。
その異形の背後には、さらに異形な存在が蠢いていた。
壁と床を溶かしながら動いている、不定形の黒い水のような巨大な塊。
腕と足が異様に細長い、炎を纏った人型の化物。
見ていると気が狂いそうになる、黒いドレスを着た妖しげな美女……その他にも形容し難い化物がうじゃうじゃ蠢いていた。
「なんだよ……これ……」
俺は血反吐を吐きながら、それが異常事態であり、地獄であるということを理解した。
しかし、理解したその次の瞬間には、化物が今一度鎌を振るい、俺の身体を細切れにしてしまったため、俺はそのまま絶命したのだった。




