定期報告:管理番号1番との交流(3回目) ④
「おやおや。管理者様。今は賭け事の最中です。いくら管理者様でも邪魔をされては困りますね」
管理番号21番は相変わらずの笑顔でそう言うが、ライナは厳しい顔だった。
「……管理番号21番。確かにアナタのいうことは正しいです。ですが……アナタは本当にアレンが欲しいものを与えられるのですか?」
ライナがそう言うと、管理番号21番は参った、と言わんばかりに苦笑いする。
「やれやれ……また、負けてしまいましたか。今度は勝てそうだったのですが」
「……は? お前、何言って……」
と、管理番号21番はいつもの笑顔で俺を見る。
「申し訳ございません。管理番号1番。私は基本的にイカサマはしませんが、より、スリリングな賭けを好みます。アナタとの賭けは楽しいですが……いささか、スリルに欠ける。ですから、少し賭けてみたのですよ。アナタの命を」
「は? それって……俺の命を囮に、ライナを?」
管理番号21番は済まなそうに頭を下げる。
「ええ。そのナイフ、実は基本的に刀身は消滅して、決して使用者を傷つけません。しかし、使用者がもし、すべてを終わらせたい時はそれを悟って、刀身を消滅させないのです。私は……アナタがいつか勝負を放棄したいと言うとわかっていた。その瞬間に対して、賭けていたのですよ」
そういってから、管理番号21番はライナのことを見る。
「管理者様が……管理番号1番を見殺しにするか、そうでないか、を」
管理番号21番がそう言うと、ライナは更に鋭い瞳でライナを見る。
「……で、アナタは、私がアレンを見捨てる方に賭けたのですね」
「ええ。ですが……賭けは外れでした。また私の負けですね」
いたずらがバレた子供のように苦笑いする管理番号21番。俺はその時、管理番号21番が、思った以上にイカれていることを理解した。
「それで……アナタは、知っていたのですか。私の秘密とやらを」
少し経ってからライナは管理番号21番を睨みつけたままでそう訊ねる。
「おや。やはり会話は聞かれていましたか。先程言ったとおり、私はスリリングな賭けを好みますから……そのためなら、多少は方便を使ったというわけです」
「なっ……じゃあ、お前何も知らないのかよ!?」
「ええ。すいません」
俺は呆れてしまった。何も得られるものがないのに、俺は自らの命を賭けて戦っていたということか……
「……管理番号21番。アナタには罰として今後、この施設において、アレン・アークライトとの賭け事の一切を禁止致します」
「おやおや……それは残念です」
ライナはそう言ってから、俺の方を見る。
「そして、アレン……話があります。保管部屋に行きますよ」
そういって、ライナは歩き出した。それと同時に、俺は自分が椅子から離れられることを理解した。
「ふふっ。運がいいですね。アナタも」
俺に向かってそう微笑む管理番号21番。
「……もう、二度と賭け事なんてやらねぇよ」
俺はそう捨てセリフを吐いてから、ライナの後をついて部屋を出ていったのだった。




