定期報告:管理番号1番との交流(3回目) ②
「……マジでやるのか?」
俺がそう言うと管理番号21番は頷いた。
「ええ。やりますよ。すでに始まっています」
そういって、管理番号21番は両手を交互に見る。
「さて……簡単な賭け事です。決まるのも一瞬です。さぁ、選んで」
俺は今一度半透明の管理番号21番の手を見る。
おそらくだが今回も管理番号21番はイカサマなどしていない。これは100%純粋な賭け事だ。
そうなると……ここで俺か管理番号21番のどちらが勝つかは、完全に運の強さに限定されるということなのだ。
俺はゴクリと生唾を飲み込んでしまった。そして、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「……わかった。そうだな……右だ。俺から見て右の方の手にコインが入っている」
俺がそう言うと管理番号21番は小さく微笑む。そのまま右手を開くと、その中には……
「あ……あった」
普通に、コインがあった。管理番号21番は苦笑いしながら俺を見る。
「あはは……やれやれ。相変わらず私は弱いですね……」
そう自嘲気味に言ってから、管理番号21番は俺の方を見る。
「そうですね……噂ですよね。ここは組合によって作られた施設……そして、ここに閉じ込められている我々も組合によって集められたわけです」
「組合によって……集められた……」
「ええ。そして、その管理をしているあの魔女も、組合に任されてこの仕事をしている……最も組合長とあの魔女はそれなりに近い仲だと聞いたことはありますが」
「え……そうなのか? いや、その組合長って……」
「そうですねぇ……まぁ、簡単にいえば優秀な魔術師です。それ以外のことは私でも知りません」
そういって、いつもの貼り付けたような笑顔で俺を見る管理番号21番。俺は思わず顔をしかめて奴を見てしまう。
「……まだ、知っていることがあるな?」
「ええ。もちろん。ですが、わかっているでしょうが、この部屋の会話はあの管理者である魔女に聞かれている……私はこれ以上劣悪な環境の場所に移送されたくないので、これ以上はお話できません」
管理番号21番はそう言いながらコインを弄っている。俺はそれを見て、奴が何を言いたいのかなんとなくわかった。
「……じゃあ、もし、俺がお前との賭けに勝ったら、教えてくれるのか?」
俺がそう言うとその言葉を待っていたとばかりに管理番号21番は俺を見る。
「そうですね……賭け事で負けてしまったら、仕方がない。アナタにこれ以上の秘密を教えるしかないでしょう」
「あ、ああ……そうだよな」
そう言うと管理番号21番は懐から何かを取り出した。それは……ナイフだった。
「え……なんだそれ」
「賭けに使うんです。しかし、今回はよりスリリングな賭けですよ。まずは……こうします」
そういって、管理番号21番は自身の胸に何事もなかったかのように思いっきりナイフを突き立てた。
「お……お前、何して……」
しかし、管理番号21番は平気な様子である。見ると、そのナイフには……刀身がなかった。
「面白いでしょう? これ、一定の確率で刀身が現れたり、消滅したりするんです。今回はこれを使って……どちらが自身の心臓にナイフを突き立てるか、それを賭けようではありませんか」
嬉しそうな顔でそういう管理番号21番。
こいつ自身、死んでいるということもあるのだろうが……ほとほと命を賭け金くらいにしか考えてないギャンブル狂いなのだと実感したのだった。




