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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号1~10
7/80

管理番号3番:影友達 ①

管理番号3番・簡易名称:影友達


○概要


 管理番号3番に実体は存在しません。


 管理番号3番の保管部屋に入った際に、管理番号3番は発生します。


 管理番号3番は一定の空間に存在する、事物の影です。発生には魔術的要因が関係していると考えられます。


 管理番号3番が発生する範囲である空間に対象が入った際に、管理番号3番は対象の影として生命活動を開始します。


 一度、影として活動すると、対象からは離れることがないと、現在までのところ確認されています。


 管理番号3番の発見は、辺境の荒れた古城でした。


 管理番号3番は、発見した組合員の影として活動を開始し、実際に発見者の組合員も管理番号3番と会話等をしたと言っていました。


 しかし、発見した組合員以外には管理番号3番の存在を認識することはできませんでした。


 管理番号3番は、保管のため、発見者である組合員の影として古城を離れました。


 よって、保管のために、管理番号3番の部屋には発見した組合員が居住しています。


 点検の際には、管理番号3番の実体性、そして、対処方法を確認するようにして下さい。


○補足


 保管から78年後、発見者である組合員が管理番号3番の部屋にて死亡しました。


 しかし、管理番号3番の存在を組合が確認できていないため、保管部屋には白骨化した死体が存在すると考えられます。

「ひっ」


 部屋に入った途端、俺は思わず叫んでしまった。


『どうしましたか? 管理番号1番』


 怪訝そうな声でライナの声が耳元から聞こえてくる。


「え……な、なぁ。なんか……骸骨が……あるんだけど」


 見ると……何もない薄暗い部屋の中央だけが明るく照らされていて、そこに白骨死体が無造作に存在しているのである。


『ええ。それは今回の危険存在とは関係ありません。無視して下さい』


 無視しろって……そんなの無理だろ。普通に。


 俺は仕方なく白骨の方ヘ向かっていく。


 白骨は随分と時間が経っているのか、劣化が激しいようだった。


「え……な、なぁ。この部屋にいるのって……相当ヤバイ奴なんじゃ……」


『管理番号1番。それは杞憂です。アナタは職務を遂行して下さい。何か変化はありませんか?』


 ライナの言葉に、俺は周囲を見回してみる。しかし……特に変なことはない。


「ん?」


 と、俺はふと、自分の足元を見る。


「え……お前……誰だ? っていうか……なんだ?」


 俺は思わず訊ねてしまった。


 見ると……俺の足元から伸びている黒い物体……つまり、俺の影なのだが……不思議な事に俺にとってはそれが急に、生きているように感じてきたのである。


『どうしましたか? 管理番号1番』


「え……あ、ああ。変なんだ。なんか……俺の影が……生きているみたいで……」


 俺が困惑している間にも、影は俺とは違う動作を勝手にしている……完全に、俺とは別に意識を持って動いているようなのである。


『管理番号1番。言葉が不明瞭ですが……要するに、アナタの影が意思を持って勝手に動いている……そのように理解して良いのですか?』


「え……あ、ああ。そうだ。これ……大丈夫なのか?」


 俺がそう訊ねると、ライナは少し悩んでいるようで、黙りこくってしまった。


「ライナ?」


 俺がそう訊ねると、ライナは耳元で大きくため息を付いた。


『……わかりました。管理番号1番。アナタの影は……アナタに危害を与えてきそうですか?』


「え……いや、それは……」


 俺は今一度影を見てみる。相変わらずまるで子どもがはしゃぐかのように、勝手な動作を繰り返していて……俺に敵意を持っているとかそう言うことはないようである。


「いや……安全そうだけど」


『そうですか。では、確認します』


 そう言うと、ライナが瞬時に部屋の中に入ってきた。そして、少し遠く……扉の前に立ったままで俺のことを見ている。


「あ……な、なぁ? 俺の影……動いているように見えるだろ?」


 俺がそう訊ねると、ライナは俺の影をジッと見る。影はその間もジャンプしたり、手を振ったりして、自分の存在をアピールしているかのようだった。


「……管理番号1番。確認しますが……私をからかっているわけではありませんか?」


「え……ど、どういうことだ? 動いているだろ? 俺の影」


 俺がそう言って指差すと、影も俺のことを指差す。しかし、ライナは眉間にシワを寄せ、小さくため息をつく。


「……確認できません。私には、アナタの影は普通の影に見えます」


「え……そんな……」


 俺が愕然としているのが面白いのか、影は嬉しそうに手を叩いている。


「……わかりました。アナタにはそう見えるということは、危険存在の実在可能性を示すことになります。ですので……とりあえず処置として、今夜はこの部屋で眠るようにしてください」


「え……えぇ……」


 俺が不満そうにそう言っても、ライナはまるで表情を変えない。つまり、俺にこの部屋で寝ろと言っているのは……本気だということは、俺にも理解できたのだった。

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