管理番号29番:堕女神 ②
そして、次の日も、管理番号29番の点検行為だった。
ライナは点検行為を連続して行なうことを少し不思議がっていたが……当たり前だ。
管理番号29番は……女神だ。俺にとっての……いや、世界にとっての女神だ。
部屋に入った瞬間から、俺は管理番号29番……女神様の前にひれ伏した。
「あらあら……いいんですよ。そんなことしなくても」
「いえ……俺がしたいんです。やらせてください!」
俺はそう言って顔を上げる。眼の前には……女神が居た。俺はその人を見ているだけで幸せだった。
「ありがとうございます、今日も会いに来てくれて」
嬉しそうにそういうその人見ていると……涙が出てきた。ずっとこの人の側にいたい……俺はそれだけを思った。
しばらくすると、扉が開いた。ライナが部屋に入ってきた。
「か……管理番号1番……なぜ、管理番号29番の前にひれ伏しているのですか?」
なんだかライナは辛そうだった。まるで何かを我慢しているかのような。
「ああ、ライナ。管理番号29番……いや、俺は女神様に感謝を捧げているんだ」
「め、女神様……う、うぅ……やはり、管理番号29番……アナタのせいでしたか」
ライナがそう言っても管理番号29番はニコニコと笑っているだけである。
「どうしましたか? アナタもこちらにいらっしゃい?」
女神様の言葉とおりにライナもこちらにやってくる。
そうだ。ライナも女神様に感謝を捧げたほうが良い。そして、死ぬまで彼女に尽くすことが、俺達にとっての幸せなのだから……
ライナも地面に手をつき、女神様を見る。
「さぁ、ライナ。女神様に感謝を」
「……管理番号1番……申し訳ないですが、ちょっと痛いかも知れませんよ」
「痛い? 何が痛いんだ? 女神様に感謝を示すことは痛いなんてことな――」
そこまで言いかけた時だった。バゴン! と、けたたましい音を立てて、部屋の扉が吹き飛んだ。
「え……なんだ?」
俺が扉の方を見ると、人影がこちらに向かってくる。
「……信者1号? アンタ……今、誰に対して女神様、って言ったのかしら?」
破壊された扉の向こうから現れたのは……凄まじ良い怒りの形相をした管理番号14番なのであった。




