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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号1~10
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管理番号2番:何もない宝箱 ③

『聞こえていますか? 管理番号1番』


 ライナの声が聞こえてくる。


 正直……どうでもいい。耳障りな声だ。


『いいですか? 許可できる点検行為は一度だけです。もし、命令を違反した場合は措置をとらせていただきます』


「あ、ああ……わかっている」


 俺はそう言いながらも、既に宝箱の方に進んでいく。


 ある……絶対に中身はある。俺がもう一度確認すればきっとあるに決まっている……


 俺は宝箱の前に立って、ゆっくりと跪いた。


『では……点検行為を実施して下さい』


 言われるままに俺は宝箱の蓋の部分を持つ、そして、ゆっくりと宝箱を開く。


 ……ない。


 ない。ないじゃないか。


「……ない」


『……何もありませんか?』


 おかしい……なんでない?


 あるはずじゃないか。いや、あったのだ。


 俺は今一度宝箱を素早く閉め、今一度開けた。


『管理番号1番。やめなさい。命令違反です』


 ない。ない。ない……あり得ない。あったんだ。ここには間違いなく。


 俺は今一度閉める。開く。ない。


 開く。


 ない。


 閉める。


 ない……


『管理番号1番! やめなさい! 命令違反です! 措置を実行しますよ!』


 女の震えた声……関係ない。


 あるはずなんだ。あるはず……


「ああ……そうか」


『え……ど、どうしましたか? 管理番号1番』


 そうだ。ある、じゃない……あった、のだ。


 俺は宝箱を開く。そして……身体を宝箱の中にしまうことにした。


 ないのでない。あるのだ。たからは。俺が宝箱の中にあればいいのだから。


『な……何をしているのですか! 管理番号1番! やめなさい! いや……そんな……!』


 バキッ。ゴキッ。


 骨が折れる音。


 狭いな……俺の身体が……箱の中に全部入って……


 グチャッ


 ふたが、しまった。


 ああ、あるじゃないか。たからばこのなかには、おれが、ある。

○点検結果:管理者報告


管理番号1番:宝箱の内部に身体を無理矢理折り曲げて入り、出血及び全身骨折により死亡。


管理番号2番の危険度判定:中度


理由:管理番号は隔離し、人間との接触を避けることで、危険存在としての脅威は薄れると考えるため。


○補足


管理者の精神的動揺により、管理番号2番の保管部屋には行けず。


6時間後、管理番号1番の保管部屋に管理者が向かうと、管理番号1番はベッドの上で就寝中であった。


まったくの健康体。起こして何があったか問いただすが「部屋の中に宝箱があった」という記憶しか存在せず、自殺に至った記憶は完全に抹消されており、宝箱への執着も消失していた。


また、管理者が管理番号2番の保管部屋を外部から観察したが、管理番号1番の死体、もしくは血痕などは確認できなかった。

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