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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号21~30
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管理番号22番:被虐的な彼女 ③

「では管理番号22番の部屋に……本当に大丈夫ですか?」


 心配そうな顔でライナは俺にそう訊ねる。俺は何も言わずただ、管理番号22番の部屋の扉を見ている。


「……中に入っていいか?」


 俺がそう訊ねると。ライナは小さく頷いた。俺は扉を開け、そのまま中に入った。


「なっ……貴様……性懲りもなく……」


 見ると、管理番号22番が部屋の中央に立っている。


 もし、普段の俺だったら色々と気付く点があっただろう。まず、なぜ昨日ボコボコにしたはずなのに、傷一つ無いのか。自分で言うのもなんだが、かなりの重症を負わせてしまったはずである。


 しかし、まるでそんなことはなかったかのように、管理番号22番は元気そうだった。


 だが、俺にとってそんなことはどうでもよかった。


 俺は何も言わずに管理番号22番の腹部に強烈な一撃を見舞う。


「がはっ……き、貴様……」


 管理番号22番がなにか言いたそうだったが……関係ない。


「殺す……殺してやるからな」


 俺は小さな声でそう言いながら、管理番号22番のことをひたすら殴った。


 自分でも恐怖するレベルで管理番号22番のことをボコボコにしていく。


 そして、それからどれくらい時間が経っただろうか。


「……はぁ」


 俺は小さくため息を付いた。俺の眼の前には……ピクリとも動かない管理番号22番が横たわっている。


 管理番号22番を殺した……俺は殺してしまったのだ。しかし……


「……ダメだ。こんな程度じゃ……」


 やり場のない怒りが俺を支配している。


 どうすればいい……誰でもいい。この怒りをぶつけたい。


「……ライナ」


 俺は思い出した。そうだ……ライナを殺せばいい。自分でも何かおかしいと思ったが、思考は止められなかった。


 殴り殺してやる……そんな凶悪な思考だけが俺のことを支配している。


 俺はそのまま管理番号22番の遺体を放置し、部屋を出た。


 と、部屋の前には……


「……ライナ」


 部屋の前にはライナが立っていた。俺は拳をギュッと握る。


「点検行為……終わりましたか?」


「……ああ。終わった」


「そうですか……では……死んで下さい!」


 そういって、ライナは俺に突進してきた。俺はとっさのことに何の対応もできずにそのまま立ち止まる。


「なっ……ライナ……がはっ……」


 腹部に痛みを感じる……見ると、俺の腹には見たことの有る短剣が突き刺さっていた。


 ライナは笑顔で俺を見ている。


「管理番号22番に関する報告書を読みました。管理番号22番の特殊性に影響されたアナタは私を殺そうとする……その殺意に対して真剣に向き合わなければ私が殺されます。そのために万全を期したのです」


「それで……管理番号13番を使ったってことか」


 俺はそのまま廊下に倒れ込む。ライナは嬉しそうに微笑んでいる。


「ええ。大丈夫です。大好きなアレンに私を殺させるなんて……そんな酷いことさせません。ですから、安心して死んで下さい」


 笑顔でそういうライナ。俺は段々とやり場のない怒りが薄れていくのを感じる。


 それにしても……やっぱり管理番号13番ってのは、どうにも趣味の悪い危険存在だと改めて思ったのだった。

点検結果:管理者報告

管理番号22番の危険度判定:中度

理由:管理番号1番が管理者に襲いかかってきたため、管理番号13番を使用し対処。なお、管理番号22番は管理番号1番が殺害したが、24時間後には完全な状態で蘇生していた。管理番号1番には蘇生後、殺意に対して訊ねたが、激しい殺意は持ち合わせていない模様。その後、管理番号22番と面会させたが、管理番号1番が殺意を抱く様子はなし。管理番号22番の特殊性の継続は1人の人間が死ぬまでの模様である。

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