管理番号22番:被虐的な彼女 ③
「では管理番号22番の部屋に……本当に大丈夫ですか?」
心配そうな顔でライナは俺にそう訊ねる。俺は何も言わずただ、管理番号22番の部屋の扉を見ている。
「……中に入っていいか?」
俺がそう訊ねると。ライナは小さく頷いた。俺は扉を開け、そのまま中に入った。
「なっ……貴様……性懲りもなく……」
見ると、管理番号22番が部屋の中央に立っている。
もし、普段の俺だったら色々と気付く点があっただろう。まず、なぜ昨日ボコボコにしたはずなのに、傷一つ無いのか。自分で言うのもなんだが、かなりの重症を負わせてしまったはずである。
しかし、まるでそんなことはなかったかのように、管理番号22番は元気そうだった。
だが、俺にとってそんなことはどうでもよかった。
俺は何も言わずに管理番号22番の腹部に強烈な一撃を見舞う。
「がはっ……き、貴様……」
管理番号22番がなにか言いたそうだったが……関係ない。
「殺す……殺してやるからな」
俺は小さな声でそう言いながら、管理番号22番のことをひたすら殴った。
自分でも恐怖するレベルで管理番号22番のことをボコボコにしていく。
そして、それからどれくらい時間が経っただろうか。
「……はぁ」
俺は小さくため息を付いた。俺の眼の前には……ピクリとも動かない管理番号22番が横たわっている。
管理番号22番を殺した……俺は殺してしまったのだ。しかし……
「……ダメだ。こんな程度じゃ……」
やり場のない怒りが俺を支配している。
どうすればいい……誰でもいい。この怒りをぶつけたい。
「……ライナ」
俺は思い出した。そうだ……ライナを殺せばいい。自分でも何かおかしいと思ったが、思考は止められなかった。
殴り殺してやる……そんな凶悪な思考だけが俺のことを支配している。
俺はそのまま管理番号22番の遺体を放置し、部屋を出た。
と、部屋の前には……
「……ライナ」
部屋の前にはライナが立っていた。俺は拳をギュッと握る。
「点検行為……終わりましたか?」
「……ああ。終わった」
「そうですか……では……死んで下さい!」
そういって、ライナは俺に突進してきた。俺はとっさのことに何の対応もできずにそのまま立ち止まる。
「なっ……ライナ……がはっ……」
腹部に痛みを感じる……見ると、俺の腹には見たことの有る短剣が突き刺さっていた。
ライナは笑顔で俺を見ている。
「管理番号22番に関する報告書を読みました。管理番号22番の特殊性に影響されたアナタは私を殺そうとする……その殺意に対して真剣に向き合わなければ私が殺されます。そのために万全を期したのです」
「それで……管理番号13番を使ったってことか」
俺はそのまま廊下に倒れ込む。ライナは嬉しそうに微笑んでいる。
「ええ。大丈夫です。大好きなアレンに私を殺させるなんて……そんな酷いことさせません。ですから、安心して死んで下さい」
笑顔でそういうライナ。俺は段々とやり場のない怒りが薄れていくのを感じる。
それにしても……やっぱり管理番号13番ってのは、どうにも趣味の悪い危険存在だと改めて思ったのだった。
点検結果:管理者報告
管理番号22番の危険度判定:中度
理由:管理番号1番が管理者に襲いかかってきたため、管理番号13番を使用し対処。なお、管理番号22番は管理番号1番が殺害したが、24時間後には完全な状態で蘇生していた。管理番号1番には蘇生後、殺意に対して訊ねたが、激しい殺意は持ち合わせていない模様。その後、管理番号22番と面会させたが、管理番号1番が殺意を抱く様子はなし。管理番号22番の特殊性の継続は1人の人間が死ぬまでの模様である。




