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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号21~30
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管理番号21番:博打好きの死霊 ④

「では、最後と参りましょうか」


 そういって、パチンと指を鳴らす21番。俺は何も言わずに暫くコップを見つめていた。


「……えっと。一つ聞いていい?」


 俺がそう聞くと不思議そうな顔をしながらも、21番は頷いた。


「ええ。いいですよ」


「……これで俺が負けると、アンタが持っている魂は、アンタのものになるのか?」


「ええ。賭事のルールはご存知でしょう。勝ったものが全てを手に入れる……それだけです」


 いよいよ俺は緊張してきた。これで俺が負けると、ライナも15番も……死ぬ。本当に死んでしまう。


 というか……俺も死ぬのか? 死亡を再生を繰り返す俺が……死ぬ?


 でも、実際にライナは死んでしまっているようぬ見える。15番も……


「……コップを選択するのはOKか?」


 俺がそう言うと21番は小さく頷いた。俺は少し悩んだ。


 15番はコップを交換した……しかし、結局、死んでしまった。


 というか、2つしかコップがないのならば、交換も何もない……ん?


「コップが二つしか……ない?」


 俺はある事に気付いた。そうだ。なぜ気づかなかったのだ。ここまでくればわかるじゃないか。


 この賭事のからくり……最後、21番がどんな手を使ってくるかなんて。


「アンタ……既に死んでいるんだよな?」


「え? はい、そうですが……それが何か?」


「……アンタが死んでいるってことは……この賭けで毒を飲んでもアンタは死なないってことなんじゃないか?」


 俺がそう言うと、21番は少し困ったような顔をする。


「……いえ。死にますよ。といっても、仮死状態なものですが……そうでなければイカサマになってしまいます」


「ああ、そうだ。だから、アンタはそれをやっているんだ」


 俺がそう言うと21番は更にキョトンとした顔をする。


「……イカサマはしていないと言ったはずですが?」


「ああ。アンタは、高度なイカサマはしていない、といった。だが、それが嘘じゃないって証拠はない……最初からこの賭けはアンタが勝つように仕組まれていたんだ」


 俺がそう言うと悲しそうな顔で21番は俺を見る。


「アンタは毒を飲んでも死なない……だから、この2つのコップ……両方に毒が入っているんだ」


「……いえ。仮死状態と言ってもそれは負けです。ですから、私はそんなことは致しません」


 コイツ……あくまでしらを切るつもりらしい。


 俺は鋭く21番を睨みつけた。


「……私は純粋な賭事を楽しみたいだけなのですが」


「だったら……アンタが先にその水を飲んでくれ」


 そう言って俺はコップを指差す。


「……ええ、構いませんが」


 ……少し予想外だった。ここで躊躇うと思ったからだ。


 しかし、21番は躊躇うこと無く、そのまま口の中にコップの中の水を流し込んだ。


「え……」


 俺があっけにとられていると、管理番号21番はニッコリと微笑んだ。


「……どうやら、また、敗けてしまったようです」


 そういって、半透明の管理番号21番は口から赤い血を流している。


 それとともに、ムクリとライナ、そして、15番が、少し気だるそうに起き上がった。


「じゃあ……本当にイカサマなんてしていなくて……」


 俺は意味がわからず、目の前のコップを見つめる。


「ええ。していませんよ。これで、アナタの勝利です。ですから、二人の魂はお返ししたんです……言ったでしょう? 私はイカサマなどしていないと」


 ニッコリと微笑む管理番号21番。その時、俺は目の前の半透明の幽霊が、本当にただのスリルを求める博打好きであることを理解したのだった。

点検結果:管理者報告

管理番号21番の危険度判定:重度

理由:管理番号21番は純粋に賭事を楽しんでいるだけのようである。しかし、魂を代償とするのは管理番号21番が主催する賭事に参加する側である。もし、管理番号21番との賭事に敗北した場合どうなるのか、今後も引き続き調査を続行する可能性はある。

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