管理番号21番:博打好きの死霊 ①
管理番号21番・簡易名称:博打好きの死霊
概要:管理番号21番は実体を伴わない霊的存在です。
管理番号21番は常に机のある場所、そして、椅子に座っています。机の周りには椅子が全部で4つあり、その一つに管理番号21番が座っています。
管理番号21番は、対象が椅子に座ると、賭け事を持ちかけてきます。賭け事の種類は様々で、管理番号21番は賭け事に対してイカサマ等はしていないようです。
ただ、管理番号21番と賭けをする際には特別なものを払う必要があるようです。
点検行為では、死亡することに問題ない危険存在とともに、管理番号21番の点検行為を実施して下さい。
「……なぁ、ライナ」
「はい? なんですか?」
ライナは俺の隣に居て相変わらずの無表情で俺を見ている。
「……重いんですけど」
俺はそう言って背中の存在を肩越しに見る。1時間に3分だけ蘇生する男……管理番15番を背負っていた。
「仕方ありません。先程、管理番号15番は3分間の蘇生を終えてしまいました。次に蘇生するのは1時間後です」
「ああ、そう……で、この中にまたよくわからない存在がいるわけね」
俺がそう言うと何も言わずにライナは扉を開ける。扉の先には……机、そして、椅子に座った男性がいた。
男性は黒いローブ姿で……どこからしらライナと同じような雰囲気をまとっていた。
「やぁ、ようこそ、みなさん」
「え……お、おい、アンタ……」
俺は思わず驚いてしまった。男性は……透けているのだ。男性の身体を通して向こうの景色が見えているのである。
「ああ、驚かせてすいません。私、既に死んでいるもので」
「え……つまり、幽霊とか?」
俺がそう言うと男性は頷く。
「そうです。管理番号21番は霊的存在……既に死亡しています」
そう言ってライナは俺の方を見る。
「今回は管理番号21番の点検行為に付き合ってもらいます。管理番号1番、座りなさい」
「え……座るの?」
「ええ。ああ、管理番号15番は隣に座らせて下さい」
よくわからなかったが……俺は管理番号15番を背中から下ろし、椅子に座らせた。
「うおっ!?」
それと同時に管理番号15番が目覚めた。
「え……お、おい、アンタ……どうして……」
俺が驚いているのと同様に、管理番号15番も驚いているようだった。
「え……俺、死んでた……よね?」
管理番号15番は信じられないという顔で俺にそう言う。俺も思わず頷いてしまった。
「……なるほど。アナタのせいですね。管理番号21番」
ライナだけが冷静に管理番号21番に問いかける。
すると、半透明の男性はニヤリと微笑む。
「ええ。賭事の最中に死なれては問題ですからね。アナタには賭けの最中は生きていてもらいますよ」
管理番号21番の言葉を俺も、おそらく管理番号15番も理解できなかっただろう。
しかし、ライナだけが鋭い目で管理番号21番を睨んでいる。
「……それで、アナタの賭事……一体何を賭けるのですか? お金ですか? それとも……」
すると、管理番号21番は不敵に微笑み、俺とライナ、そして、管理番号15番を見る。
「……私、これでも生前は魔術師でしてね。人間の生命に関する魔術が特異だったんです。特に人間から魂を抜いたり、死体に魂を入れたり……まぁ、ある時失敗して自分の身体からこんな風に魂だけ抜け出てしまったんですが……そんな私が賭事で賭けてほしいものといえば……わかるでしょう?」
管理番号21番がそう言うと、ライナは本当に不機嫌そうに管理番号21番を睨みつけたままでそういった。
「……それぞれの、魂、ですか」
ライナがそう言うと満足そうに管理番号21番は頷く。俺と管理番号15番は思わず顔を見合わせてしまった。
どうやら……大変な点検行為に巻き込まれてしまったようだった。




