管理番号19番:騎士の指南 ③
「……今日こそ、勝つ」
俺ははっきりとそう言った。
『そうですか。健闘を祈ります』
ライナは無関心そうだったが……必ず俺は勝ってみせる。
そう思って、そのまま管理番号19番の部屋に入る。俺は迷わず剣を取った。
「ふむ……良い面構えになったな」
鎧は立ち上がると、嬉しそうにそういった。
「……もはや言葉はいらないだろう。さっさと始めようぜ」
俺はそう言って剣を構える。鎧も同様だった。
俺は確信していた。この戦いに限っては……俺は完全にこの鎧と同等の強さになっている、と。
その原理はわからないが、兎に角強くなっているし、鎧もそのことに気がついていると。
私も鎧も動かなかった……ただ、ジット互いのことを見つめている。
そして、どれくらいの時間が経った頃だろうか……
「……覚悟!」
そういって鎧が突進してきた。俺はすかさず剣で鎧の剣撃を受け流す。
この鎧……わかってしまえば、剣撃は単純だ。俺でもさえも見てから避けることができる。そして、鎧の攻撃が一旦収まる。俺は……すぐには攻撃には出なかった。
「……なんだ? 来ないのか?」
鎧は誘うようにそう言うが……その手には乗らない。昨日でわかった。
この鎧は、俺が攻撃すると同時に、それを逆手に取って攻撃してくる……それならば、単純に攻撃しただけでは昨日と同じだ。
俺は少し、剣を構えたままで動きを止める。鎧は今にも俺が来ないかと待ちわびている……それならば……
俺は足を一歩踏み出した。しかし……そのまま突っ込まない。鎧はそれに動揺したようだった。
俺はその合間を見逃さなかった。すかさず鎧の近くまで間合いを詰め、そのまま鎧の頭めがけて剣を振り下ろした。
カーン、という金属音が響く。そして、鎧の頭部が床に転がった。
「……見事」
そう言う言葉が聞こえると同時に、鎧は音を立ててガシャーンとその場に崩れた。
『……お疲れ様です。管理番号1番……そして、お見事でした』
ライナが少し驚いた感じでそう言う。
「え……あ、ああ……どうも」
なんだか……ドッと疲れた。でも……今まで一番達成感のある点検行為だ。
俺はそう思いながら、そのまま床にうつ伏せに倒れて、目をつぶったのだった。
管理番号19番:点検報告
危険度:軽度(現在は完全に無力化)
理由:管理番号19番と管理番号1番の接触は、傍から見るとまるで「師匠と弟子」のような光景であった。
管理番号1番に関しては、その後の調査で「強くなった気がする」という供述をしている。
なお、実際に管理番号1番が強くなったかの確認行為をしたかったのだが、管理番号1番に倒されて以来、管理番号19番は特性を示さなくなってしまい、現在はただの鎧と剣になっている。今後も危険存在として扱うかは、経過観察の後、管理者の判断により決定する。