管理番号18番:言伝用の紙束 ②
結局12時間後といっても、一度俺は眠らなければいけなかったので、結局、管理番号14番に会うのは翌日のことになった。
で、俺は眠ってみたのだが……次の日。頭の中になんだか変な言葉が残っていた。
残っているというか……まるで反響しているかのような、そんな感じなのである。
「……いつも、お疲れ様?」
その言葉……聞いた覚えはないのに、誰か……正確にはライナからそう言われたような気がするのだ。というか、確実に伝達された気がする。
なんだか変な気分だったが……考えるのは後にしておいた。
「管理番号1番。起きていますか?」
扉を開けてライナが入ってくる。
「ああ、起きてるけど……」
「……なんですか? 私に何か?」
不思議そうな顔をしてライナが俺を見てくる。
「……いや、なんでもない」
「……そうですか」
なぜか残念そうな顔をするライナ。意味がわからなかったが……
「では、管理番号14番に会いに行きましょう」
ライナのその言葉に、俺も同意した。俺とライナはそのまま部屋を出た。保管区域に向かう。
管理番号14番の部屋の前で、ライナは立ち止まった。
「では、今から管理番号14番に、昨日管理番号18番にアナタが書き込んだことが伝わっているか確認してください」
「え? いや……流石に女神様でもそれはわかんないんじゃ……」
「命令です。実行しなさい」
ライナはいささか不機嫌そうにそういった。ライナは機嫌悪い……そのことだけは、俺も理解できた。
しかたなく、俺はそのまま扉の中に入っていく。
「あ! 来たわね! 信者1号!」
と、女神様は嬉しそうに俺の方に近寄ってきた。
「え……ど、どうも。女神様」
「ふふーん! 感心じゃない! 私が綺麗で偉大だなんて……まぁ、当たり前よね! 私、女神だし!」
……確認する必要もなかった。どうやら、女神様にはなぜか管理番号18番の俺が書き込んだことが伝わっているらしい。
「……あー。わかりました。伝わっていて、良かったです。
「ええ。そうね。何? もしかして、今日も私のことを褒めに来たのかしら?」
「え……あ、あはは……まぁ、そんなところです……」
「そう! 感心ね! どんどん褒めていいのよ!」
そう言って完全に調子に乗っている女神様……俺は適当に頭を下げてやり過ごしながら、外に出た。
「どうでしたか? 管理番号14番は?」
扉の前ではライナが待ち構えていた。
「え……あ、ああ。伝わってたよ。管理番号18番のおかげか?」
「ええ、そういう特性を持つ危険存在のようです。では、これで点検行為は終了です。お疲れ様でした」
そういって、ライナは立ち去ろうとする。
「あ」
俺はわざとらしく声を出した。ライナが振り返る。
「……なんですか?」
ライナが怪訝そうに俺のことを見る。
「えっと……いや、その……俺、管理番号18番の特性のこと、知らなくて……ありがとうな、ライナ」
俺がそう言うとライナは少し目を丸くしてから俺の方に近づいてくる。
「……なぜ、感謝するのです?」
「え……だって、俺にも伝達されてたし……昨日、俺の後に管理番号18番の部屋に入ったじゃないか」
俺がそう言うとライナは少し恥ずかしそうにしながら、俺に背を向ける。
「……あれは、管理番号18番を確認しただけです。断じて……アナタに感謝の言葉など、述べていません」
そういって、ライナは通路の向こう側に言ってしまった。
なんだかんだで……可愛らしいヤツなんだな、と俺は思った。
点検結果:管理者報告
管理番号18番の危険度判定:中度
理由:管理番号18番事態に危険性はなし。ただし、悪用された場合問題あり。
機密情報の伝達等には有効な危険存在といえる。




