管理番号16番:死地 ③
「……おいおい。まじかよ」
信じられない思いで、俺は思わずそう呟いてしまった。
だとすると……俺はどうなるんだ? どうすればいいんだ?
『大丈夫ですか? 管理番号1番』
ライナのそんな声が聞こえてきても、俺はどう返事すれば良いのかわからなかった。
「……大丈夫では……ないんじゃないか? どうやってここから出れば良いのかわからないし……」
『……そうですね。すいません。とりあえず、今のアナタの状況を教えてください』
ライナにそう言われ、俺は周囲を見回してみた。
……何もない。完全なる荒野だ。人も動物も、家も見つかりそうにない。
幾つかの枯れた木と、岩……そんなものしか見当たらない。
「……管理番号16番の絵のとおりだよ。何もない荒野だ」
俺がそう言うとライナは少し黙った。それからしばらくしてライナの声がまた聞こえてくる。
『これは私が考えた仮設ですが……そこは意識の世界なのではないでしょうか?』
「は? 意識の世界?」
初めて耳にする言葉に、俺は思わず戸惑うが、ライナの声調子は酷く冷静だった。
『はい。魔術師はよく使う言葉です。肉体ではなく、意識だけで構成された世界……それが意識の世界です』
「よくわからないけど……要するに精神的な世界ってこと?」
『はい。その理解で十分です。意識の世界では食事も排泄も、睡眠も必要ありません。しかし……死は存在します』
「え……死?」
『ええ。異常な世界に放り込まれてあまりのことに発狂する……これが意識の世界での死です。発狂してしまえば死ぬことも出来ず、永遠に意識の世界にとらわれることになります』
そう言われて俺は俄に恐怖する。まさか……このままこの荒野の世界で永遠に発狂するまで彷徨うことになるっていうのか?
「ら、ライナ……それは……勘弁なんだけど」
『ええ。もちろん、私もアナタが意識の世界にとらわれることは望んでいません。ですから……そこから脱出する方法を提案します』
俄に希望に満ち溢れた言葉をライナは口にする。
「え……どうすればいいの?」
俺は思わず食い気味にライナに訊ねる。すると、ライナは少し間を置いてから先を続けた。
『方法は一つ……意識の世界での自死です』
「え……自死、って……」
俺は意味がわからず、もう一度訊ねてしまった。しかし、ライナはあくまで冷静に繰り返す。
「はい。つまり、その世界で自殺をしてほしい、という提案です」




