管理番号16番:死地 ②
それからどれくらい眠っていたのだろうか。
よくわからないままに俺は目を覚ました。
「……ここは?」
なんだか風が吹いているように思える……ここは屋内だったはずだが。
俺はゆっくりと目を開ける。
「……え?」
俺は思わず驚いてしまった。視界に移ったのは……荒れ地だった。
「ここって……」
すぐに理解できた。あの絵画……管理番号16番と同じ風景だ。
風が吹きすさぶ荒野……何もない寂しい土地。
「え……おいおい。これってどうなって……」
『聞こえますか? 管理番号1番』
と、耳から聞き覚えのある声が聞こえてきた。ライナの声だ。
「ライナ……俺……どこにいるんだ?」
俺がそう言うとライナは少し間を開けた後で、ゆっくりと先を続ける。
『……私は今、管理番号16番の部屋にいるのですが……アナタが描かれています』
「……は? 何に?」
『管理番号16番の中に、です』
ライナにそう言われても理解できなかった。管理番号16番の中に描かれているって……一体どういう意味だ?
「え……ど、どういうこと?」
『……言いにくいのですが、私が管理番号16番の部屋に入った時、アナタは睡眠中でした。そして、今もそうです』
「え……でも、俺は今こうしてライナと喋って……」
『はい。それが問題なのです。睡眠しているアナタは私と喋れるはずがない……では、なぜ今こうして私と話しているのです?』
俺は答えに困ってしまった。それはつまり……
「……俺の意識だけが……身体と分離しているってこと?」
俺がそう言うとライナは無言のままだった。
『先程からいかに強く衝撃を与えてもアナタは起きません。これはそのことの証明になるかと』
「え……ちょっと待って。じゃあ、俺の意識は今どこにいるんだ?」
俺はそう言って今一度荒廃した土地を見回す。なんとなくだが……俺にも答えは理解できていた。
『……今、アナタが眠ってから管理番号16番に一つの変化が起きました』
「え……変化って?」
『管理番号16番は荒廃した土地の絵で、人物や動物は一切描かれていなかったですよね?』
「あ……ああ……それがどうかしたのか?」
『アナタが睡眠をとってから……管理番号16番の中に、新たにアナタそっくりの人物が書き足されているのです』
そう言われて……俺は恐怖し、理解した。
「もしかして、俺が今いる場所って……」
俺が先を続けようとすると、ライナが先に話を続ける。
『……はい。おそらく、管理番号16番の中……荒廃した土地の絵の中、ということになります』




