管理番号16番:死地 ①
管理番号16番・簡易名称:『死地』
概要:管理番16番は、作者不詳の風景画です。
描かれているのは、荒廃した土地の様子であり、人物描写はありません。
管理番号16番を鑑賞した後、睡眠をとると、管理番号16番が描かれた風景が現れます。
管理番号16番の風景の中に長時間いることで、夢を見た対象者は自身も管理番号16番に描かれている一部だと認識するようになってしまいます。
(対象が夢を見ている間、実際に管理番号16番に、対象者の姿が映し出されます。この状態の管理番号16番を視認した後睡眠をとっても、影響はありません)
認識が長くなればなるほど、対象者は夢の世界に拘束されることになり、最終的に目覚めることがなくなります。
睡眠を取ることで蘇生と死亡を繰り返す管理番号1番が、夢の世界に囚われた場合どうなるかを点検して下さい。
「……えっと、これが管理番号16番?」
『はい。その絵画が管理番号16番となります』
ライナの声は耳元でそう言う。
俺の前にあるのは……ただの絵だ。どこかの荒廃した土地を描いているようで……人とか動物とか、そういうものは描かれていない。
「……えっと、俺はどうすればいいの?」
『管理番号16番を見て下さい。見ているだけでいいです』
見ているだけ……なんだか不安を煽る言い方だったが……今の俺には言われたとおりにするしかなかった。
とりあえず俺は今一度絵画を見てみる。本当に何の変哲もない絵だ。
ただ……見ているとなんとなく不安な気持ちになってくるというか……そんな感じの絵だ。
俺はそれでも絵を見続ける。なんだか、そのまま絵の中に入り込んでしまいそうな不思議な感覚が俺の中に芽生えてくる。
『結構です。管理番号1番』
そう言われて俺は我に返った。俺は周囲を見回す。
周りは……保管部屋だ。絵の中に入ったわけではないようである。
『どうかしましたか? 管理番号1番』
「え……あ、ああ。大丈夫だ」
『では、管理番号1番。その場で睡眠を取って下さい』
「……へ? ここで?」
いきなりのことで俺は驚いてしまったが……ライナの声の調子からして冗談を言っているわけではないようである。
『はい。寝て下さい』
「……まだ眠くないんだけど」
『では、眠くなるまでその場で待機していて下さい』
……どうやら、マジでそう言っているようである。
俺は困惑したが……おそらく、俺が寝ない限りは……この部屋から出てはいけない、とか言うのだろう。
既にそれは理解していたので、俺は反抗するのはやめておいた。
「……わかった。だが、すぐには眠れない。少し待ってくれ」
『わかりました。私も待機します』
ライナのその言葉を聞いてから、俺は今一度管理番号16番……荒廃した土地が描かれた絵画を見る。
……変わらない。何の変哲もない絵だ。
俺はそう思いながらしばらく絵をずっと見つめていた。すると、不思議なことに、段々と眠くなってきた。
まだ眠るには早いと思っていたが……目を開けていることさえ困難になってくる。
俺はそのまま睡魔に抗うこと無く、瞼を閉じる。
瞼を閉じる瞬間、一瞬だけ荒れた土地が視界に写った。
何か嫌な予感がしたが……俺はそのまま意識を失うように、眠りに落ちてしまったのだった。




