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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号11~20
34/80

管理番号15番:24回目の死亡者

管理番号15番・簡易名称:24回の死亡者

概要:管理番号15番は成人男性の死体です。

管理番号15番は死体ですが、1日のうち24回、つまり、1時間に一度、3分間だけ蘇生します。

管理番号15番も、管理番号1番同様に死亡時には、蘇生時に負った傷等は全て回復し、記憶も引き継いだ状態で死亡と蘇生を繰り返します。

当初、組合では管理番号15番を点検係に任命する案もありましたが、活動できる時間が管理番号1番に比べあまりにも短いことが問題視され、危険存在として管理されることになりました。

「……えっと、あれが危険存在なの?」


 俺は思わずライナに訊ねてしまった。


『ええ。アナタの目の前にあるのが、危険存在です』


 俺はそう言われても信じることができなかった。


 なぜなら……どう見ても……


「……あれ、死体じゃない?」


 保管部屋の中央にあったのはどう見ても……死体なのだ。


 横たわったまま動かない……ピクリとも動く気配すらない。


 俺は恐る恐る死体の近くに近寄っていった。


『管理番号1番。管理番号15番の危険性は軽度のものと考えられます。あまり恐れないでください』


「え、えぇ……でもさぁ……」


 近づく程にどう見てもそれは……死体だった。死体特有の肌の白さというか……


「これ……どうなるの?」


 俺が訊ねてみてもライナは返答しない。俺は仕方なく死体を見つめていた。


 と……その時だった。


 いきなり、死体が目を開いたのだ。


「え」


 俺は思わず驚いてしまった。そして、唖然とする。


 死体と……目があってしまった。死体は紛れもなく俺のことを見ている。


『管理番号1番。問題ですか?』


「あ……いや……その……」


 俺がそう言った……その時だった。


「……え? お、おいおい! アンタ人かよ!」


 死体が起き上がったかと思うと俺の肩を思いっきり掴んできた。


「ひ、ひぃぃ!」


 思わず悲鳴を上げてしまう。しかし、死体は嬉しそうに俺の方を掴んだままだ。


「いやぁ! 嬉しいなぁ! ようやく生きている人間に会えたよ! まったく……ここに来てから誰にも会わなかったからなぁ……」


 目に波さえ貯めながら、死体は俺にそう言ってくる。


 この死体は……一体なんなのだろうか?


「え……え、えっと……アナタは……一体?」


 俺がそう言うとようやく死体は俺の方に顔を向ける。


「ん? ああ。俺か。俺の名前は……いや。俺の名前はどうでもいい。一体ここはどこなんだ?」


「え……あ、ああ。ここは、その……なんというか……」


「アンタもここに連れてこられたのか? なぁ? だったら、ここから出る方法わからないのか?」


「あー……ごめん。わからないな」


 俺がそう言うと死体はがっくりと肩を落とす。


「……まぁ、仕方ないよな……まぁ、いいや。とにかくまずは俺とアンタが知り合いになる方が先だな。俺の名前は――」


 その瞬間だった。死体は……そのままガクンと足から床に倒れてしまった。


「……え?」


 俺が見ると死体は……また床に倒れていた。その肌は真っ白で、まるで動く気配すらない。つまり……


「……死んでいる」


 しかし、つい先程まで俺はこの目の前に死体と喋っていた。


 だが、コイツは確実に死んでいる……俺は信じられない気持ちだった。


『管理番号1番。管理番号15番はどのような状態に?』


 ライナの声が耳元に聞こえてきて、俺は我に返る。


「……あ、ああ。えっと……死んでいるね」


 俺がそう言うとライナは少し黙った後で小さくため息をついた。


『分かりました。点検行為は終了です』


「え……でも、管理番号15番は……このままでいいの?」


『ええ。問題ありません。アナタと同じような存在ですから』


 そう言われて俺は、この管理番号15番がどういう特異性を持った危険存在なのかを……なんとなく理解した。


 つまり、俺がコイツを怖がるということは……


「……俺自身を怖がっているってことか」


 なんだか馬鹿らしい気分になりながら、俺は自嘲的に笑いを浮かべて保管部屋を出たのだった。

点検結果:管理者報告

管理番号15番の危険度判定:軽度

理由:報告書の通り、活動時間は3分程度。ただ、脱走等の計画を話し合う可能性があるため、管理番号1番との接触は可能な限り制限する必要があると思われる……ただ、3分で脱走計画の話し合いができるのかは疑問である。

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