管理番号13番:殺したいほど愛してる ①
管理番号13番・簡易名称:殺したいほど愛してる
概要・注意:該当危険存在は非常に危険であることが分かっています。
管理番号13番の見た目は鉄製の鋭利な短剣です。
管理番号13番を手にすると同時に、手にした対象は異常な殺人衝動を抱くことになります。その殺人対象は自身が好意を持っている対象の人間であり、その対象への好意が強い程殺人衝動も強いものとなります。管理番号13番を所持している間は、所持者の行為は時間とともに強いものとなっていきます。
管理番号13番は、対象者が殺人を実行するまで、実体を確認することが出来ません。対象者が殺人を終えると、管理番号13番は実体化します。
補足:この点検行為の実施内容は管理者判断に一任します。
「えっと……今の話……本当?」
「ええ、本当です」
今日点検するであろう危険存在の保管部屋に向かう最中、俺は今一度ライナに訊ねてしまった。
「その……今日は俺じゃなくて……ライナが点検するって」
俺がそう訊ねると、ライナは小さく頷いた。
ライナは……俺と違って死んだらそれで終わりだ。それなのに危険存在の点検なんてやっていいんだろうか?
「……今日点検する危険存在は危険じゃないのかな?」
「いえ、かなり危険です。組合でも既に管理番13番のせいで何人も死傷者が出ていましたから」
「えぇ……そんな危険存在を点検するって……それって、どう考えても俺がやったほうがいいんじゃない?」
俺がそう言うとライナは大きく首を横に振る。
「いえ。その方が危険なのです。私が死亡する可能性があります」
「え……そうなの?」
意味がよくわからなかったが……ライナは真面目だった。
つまり、俺がその危険存在に関わると、どうやらライナを死の危険に追い込む可能性があるらしい。
「ん? ってことは……俺が死ぬ確立が高いってこと?」
俺がそう訊ねるとライナは何も言わず俺のことを見る。
「……いえ。確立は……そこまでは高くないはずです」
「高くないはずって……微妙ってこと? なんだか逆に怖いなぁ」
俺がそう言うと何も言わずにライナは一つの保管部屋の前で立ち止まる。
「管理番号1番。アナタには、これから私が危険存在に関わってから、その効力が切れるまでの間のことを覚えておいてもらいます。その間のことを後で報告として私が受け付けますから」
「はぁ……でもさぁ。効果がいつ切れたとか……そういうのわかるのかなぁ?」
俺がそう言うとライナは少し不安そうな顔をしたが、そのまま扉を開く。
「おそらく……わかります」
そういってライナが扉を開けた先……部屋の中心には、小さな短剣が無造作に置かれていた。
「これが……危険存在?」
俺は短剣の近くまでやってきてそれを見た。何の変哲もない短剣のように見えるが……
「ええ。触らないで下さい。管理番号1番」
そういって、俺の前でライナはゆっくりと短剣に手を伸ばしていく。そして、持ち手を持ち、ライナは短剣をゆっくりと手にした。
その瞬間だった。
「あ」
俺飲めの前でライナが持っている短剣が一瞬にして消滅したのである。
「……なるほど。報告書の通りですね」
「え……そうなの? 短剣はどこに?」
「私にもわかりません。ですが……今現時点より、点検行為が開始されました」
「あ……そうなんだ。えっと……ライナ。何か身体に変化とかは?」
俺がそう言うとライナは首を横に振る。
「いえ。特にありません。まだ時間も経っていませんから……とりあえず、この部屋を出ましょう。アレン。アナタは部屋に戻って下さい」
「あ、ああ……」
そういって、俺とライナは部屋を出た。
「では、また必要な時にアナタの部屋に行きます」
そう言ってライナはそのまま去っていってしまった。俺は1人残されて呆然と去っていくライナの後ろ姿を見ている。
「……あれ? さっきライナ俺のことをアレンって……」
ライナは唐突に……いつものように「管理番号1番」ではなく、名前で呼んできた。
これは……危険存在の影響なのだろうか。
「……まぁ、いいか」
その時俺はあまりそのことを気にもせず、自分の部屋へと戻っていったのだった。




