管理番号12番:「誰か」からの手紙 ③
「……やっぱりか」
俺は海岸の波打ち際までやってきて、瓶が流れ着いている事を確認した。
瓶の中には……やはり、紙切れが入っている。
『紙切れ、入ってますよね?』
ライナの声が耳元から聞こえてくる……どうやら、ライナにも何が起きているのか想像できているようだった。
「……中を確認するぞ」
俺がそう言うとライナは小さく頷いた。
俺は瓶を開け、中身を確認する。
微妙ではあるが……以前の紙切れよりもさらに古いものであることがわかる。
俺は紙を広げて書かれている文章を読む。
「『やった! 遂に幻の島を見つけた! この島は俺の新発見だ! 俺だけの島……誰もこの島には絶対に近寄らせないぞ! だが……俺は自慢が好きなタイプの人間だ。だから、この瓶に俺が島を発見したという事実だけを記す。これを見つけた奴、くらぐれも、俺のことを助けようなんて思うなよ? 俺は幸せなんだ! 邪魔しないでくれ』……えっと、ライナ、これって……」
『……はい。アナタもわかるでしょうが……順番が、逆ですね』
ライナの言っていることはわかった……だが、どうしてこんなことが発生しているのかがわからなかった。
「……えっと、これって、魔法のせい?」
『そうですね……なんとも言えませんが、この瓶はどうやら狂った時間の中をさまよっているようです。しかも、それは繰り返す時間の中で……』
「そ、そうなんだ……じゃあ、俺が書いた返事って……」
俺がそう言うとライナは暫くの間無言担った後で、小さくため息を付いた。
『そうですね。一つ確実に言えるのは……仮に救援を出してこの瓶の送り主を探したとしても、きっと、彼を見つけ出すことは出来ない、ということでしょう』
そう言われて俺は少し悲しい気分になってしまった。
俺は瓶の中に紙切れを戻し、瓶そのものを波打ち際に戻した。
瓶はなんだか波に遊ばれた後で……瓶はまた、海の向こうへと流れはじめてしまった。
「……明日も、この海岸に打ち上げられるのかな?」
俺は小さくなっていく瓶を見ながらライナに訊ねる。
『……ええ。誰かが助けに応じてくれるまで……例え、それが絶対に不可能であっても、瓶は流れ続けるのでしょう。ただ……我々の時系列的には、最後には助けに来るな、と言っているので、我々も彼を助けに行く事を考えるのは、やめておきましょう』
「あ、ああ……そうだね」
『では、お疲れ様でした、管理番号1番。点検行為は終わりです』
ライナにそう言われ、俺は寂しげな波の音を聞きながら、保管部屋を出たのだった。
点検結果:管理者報告
管理番号12番の危険度判定:軽度
理由:瓶そのものに危険度は存在せず。なお、瓶の中の紙片の文章に書かれている救援要請に関しては、当面、管理者として応じる可能性はないと述べておく。




