管理番号12番:「誰か」からの手紙 ②
「……戻ってきてる」
翌日も俺はライナに言われ、管理番号12番の部屋にやってきていた。
波打ち際には……瓶が流れ着いている。
そして瓶の中には、やはり紙切れが入っている。
『管理番号1番。漂流物は確認できましたか?』
「え……あ、ああ。あるよ」
ライナの声と共に、俺は漂流物を拾い上げる。
瓶の中の紙は……やはりとても古びている。かなり時間が経っているように思える。
だけど、なぜだろう……前に流れ着いた紙よりも新しいような……そんな感じがした。
「えっと……開けてみてもいいの?」
『はい。どうぞ。文章を読み上げて下さい』
俺の質問にライナは間髪入れずにそう答えた。俺はそのまま瓶の蓋を開け、中身の紙を取り出した。
紙を広げてみると……またしても文章が書かれていた。
「『しかし、それにしても運が悪かった……まさか、船が完全に壊れて戻れなくなるとは……この島の存在を他のやつに知られるのは癪だが……この瓶を拾った奴、俺を助けてくれ。俺は今遭難状態だ。おまけに島の正確な位置はわからない……とにかく、捜索隊を派遣してくれ。頼む』……なんだこれ?」
意味がわからなかった。俺はてっきり俺が書いた内容の返事が返ってくるのかと思っていた。
しかし、これは俺の手紙への返事ではない。おまけになんだか……前の手紙よりも随分と詳細に自身の状況を教えてくれている……
『……結構です。管理番号1番。では、返事を書いて下さい』
「え……返事って言っても……何を書くの?」
ライナは少し悩んでいたが、しばらくすると俺に指示を出してきた。
『……前と同じです。暫く待っていてほしい。助けに行くから、と』
俺は少し納得いかなかったが……とりあえず、ライナの言うとおりにすることにした。
手紙を取り出し、代わりに俺が書いた返事を瓶の中に入れて流す……しかし、俺はふと考えてしまった。
もしかして……俺がやっていることは無駄なんじゃないか、と。確かに前回俺は瓶を流した。そして、今回、瓶はまた同じように流れ着いていた。
しかし、それは俺の手紙への返事ではなかった。前回と内容は似ているが、何かおかしい内容の文章……
もしかすると、この瓶……そもそも拾い上げた俺への救援を目的としているのではなく、単純に毎回流れ着いているだけじゃないのか?
そもそも、文章の内容がおかしい。
前回の方が短い文章だが、とても鬼気迫るものがあった。しかし、今回の文章はなんだか……いやいやながらも救援を出した、という感じである。
つまり、この流れついている瓶は……
『管理番号1番。本日の点検行為はこれで終了です。明日、また、よろしくお願いします』
……思った通り、やはりまだ点検行為は続くらしい。俺は部屋を出る際に、チラリと海岸の方を見る。
瓶は……まだ流れ着いていない。きっと、明日だ。
明日、俺が考えていることが当たっているか間違っているか……それが明確になるはずである。
俺はそんなことを考えながら、管理番号12番の部屋を後にしたのだった。




