定期報告:管理番号1番との交流(1回目) ①
「え……今日は休み?」
俺は思わず驚いてしまった。
「はい。連続での点検行為は管理番号1番にとっても負担になりますから」
ライナはいつも通りの淡々とした口調でそう言った。
「そっか。はぁ……」
しかし……あまり気は晴れなかった。
「どうしましたか? あまり元気がないようですが」
「え……いや、だってさぁ。休みって言っても……この部屋からは出られないわけだし……あまり気分転換にはならないというか……」
俺がそう言うとライナがジッと俺の音を見ている。不味い……さすがにわがまま過ぎただろうか?
「……つまり、外出許可を取りたいということですか?」
「え……外出……できるの?」
俺がそう言うとライナは小さく頷く。
「はい。幾つかの制約がありますが、外出はできます。ですが……私はあまり推奨しません」
「え……どういうこと?」
俺がそう言うとライナは当たり前だと言わんばかりの顔で俺を見る。
「簡単に言ってしまえば……外に出ても仕方がないからです」
「え……いやいや。こう言っちゃ悪いけど……流石にこの薄暗い部屋の中にいるよりかは……」
俺は言ってしまってから不味いと思ったが……実際いつも思っていることなので訂正はしないでおいた。
ライナは少し考え込むように俺を見ていたが……しばらくすると小さく頷いた。
「確かにその通りかもしれません。いいでしょう。管理番号1番。外出を許可します」
「え……いいの?」
俺は意外にもライナが簡単に外出許可を出してくれたことが嬉しかった。
久しぶりに外に出られる……そう思うと今の憂鬱な気分も晴れていくようだった。
「よし! じゃあ、さっそく……って、何しているの?」
と、ライナはいきなり俺の首何か……首輪のようなものを嵌めた。
「その首輪は私自身が魔術を施してします。禁忌倉庫内の危険存在を移送する場合などに使用するつもりでした。丁度いい機会です。管理番号1番。アナタで実験しましょう」
「え……これって、まさか……」
俺が不安げな気持ちで訊ねると、ライナは俺を見る。
「ええ。一定時間、私の視界からアナタがいなくなると、その首輪は自動で爆発します」
……俺は何も言えなかった。
なんという……なんという恐ろしい物を用意してくれるんだ。
しかも、それを俺に装着させてくれるとは……
「……あのさぁ、その……今日は休みなんだよねぇ? だったら……点検行為はしなくていいんじゃない?」
俺がそう言うと、キョトンとした顔でライナは俺を見る。
「はい? その首輪は危険存在ではありませんが……」
「いやいや! おかしいでしょ!? ライナの視界から一定時間いなくなると爆発するって! 十分危険でしょ!?」
俺がそう言うと、なぜかライナは大きなため息をついて俺を見る。
「管理番号1番。アナタは危険存在の意味を履き違えていますね。危険存在とは魔術師組合でさえもそれを管理下におけないような存在を指します。確かにアナタが現在装着している首輪はアナタにとっては危険な存在でしょう。ですが、魔術師である私にとってはごくありふれた存在です」
ライナはこんなことは常識だと言わんばかりの顔で俺にそう言う。
どう考えても納得できる理屈ではなかったが……おそらく、一度装着されてしまった以上、外してもらうことはできないのだろう。
「……わかった。ただし! ライナも余所見をしたりして俺を爆発させないでよ!?」
俺がそう言うとライナは問題はないという顔で俺を見る。
「大丈夫です。一定時間というのはおおよそ5分間です。管理者として私は、アナタを視界からそんなに長い間外すような間抜けな真似はしません」
「……ん? 待って。ということは……」
嫌な予感が過るが……俺はとりあえずライナに聞いてみた。
「はい。もちろん、私も外出に同行します」
ライナは何食わぬ顔で俺にそう言ってきたのだった。




