管理番号4番:狂った時計 ②
そして、それから俺は……なぜだか落ち着けなかった。
一時間……それがどうにも長過ぎるのである。
俺だって体感時間としてもそれが少し長く感じるのはわかる……だけど、異常だ。
既に一日以上、俺はライナの事を待っているような気分になってきた……俺はベッドから立ち上がったり、座ったりを繰り返す。
走行している間に、ライナが扉を開けて俺の部屋に入ってきた。
「遅い!」
部屋に入ってきたライナに俺は思わずそう言ってしまった。
「……時間通りですが」
ライナは少し不機嫌そうにしながらそういう。
「いやいや……おかしいだろ? もう一日は経っているはずだ。時計だって……」
俺は時計を見る。
時刻は……2時54分。
「ほら! こんな時間だ……どうしてこんなに遅くなったんだ?」
すると、ライナは冷たい瞳で俺を見る。まるで、俺が言っていることが間違っているとでも言わんばかりに。
「な……なんだよ。その目は……」
「管理番号1番。現在の時刻は2時54分……アナタはそう言いたいのですね?」
ライナは俺に変な質問をしてくる。俺は当然だという意味で大きく首を縦に振る。
「そうだ……何かおかしいのか?」
「いえ……ですが、アナタは一時間前、私にその時計は壊れていると言いかけませんでしたか?」
「え? そんなこと言ったかな? 大体! 一時間前じゃない! 一日前だ!」
俺がそう言うとライナは怪訝そうな目で俺のことを見る。そして、そえから小さくため息を付いてから先を続ける。
「では……管理番号1番。その一日前の時刻とは、いつですか?」
「え? そりゃあ……5時45分だよ。時計はそう示していたんだし……」
「なるほど。では、もう一つお聞きします。管理番号1番。今は昼ですか? それとも、夜ですか?」
ライナの奇妙な質問に……俺は答えられなかった。
今は……どっちなんだ? よく考えてみたらわからない。
「え……そ、それは……」
俺が困っていると、ライナは少し優しげな笑みを浮かべて俺に語りかける。
「管理番号1番。アナタは眠っていますか? それとも、これから眠るのですか?」
「え……あ、ああ。まだ寝てないな……ってことは……夜?」
俺がそう言うとライナは小さく頷く。
「現時刻は午後11時半です。ですから、そろそろ就寝の時間となります」
「え……そ、そうだったのか……でも、俺……全然眠くないというか……」
それはそうだ。俺は今まで自分が一体夜にいるのか、昼に居るのか全く理解していなかったのだ。
今は夜だと言われて「はい、そうですか」という感じで眠ることが出来るわけがない。
俺がそう言うとライナは少し不安そうな顔をする。それから、真剣な表情をして、俺の方に少し近づいてきた。
「……アナタは睡眠を通して死亡と蘇生を繰り返している。そして、今まで徹夜と夜更かしはしたことがなかった……ですが、今、この夜の時間であっても、アナタは眠くない……というわけですね?」
「え……あ、ああ。そうだけど……」
俺がそう言うと心配そうに俺を見ながらも、ライナは少し興味有りげな表情で先を続ける。
「……試してみましょうか。アナタが寝ないとどうなるか」
「え……そ、それは……危ないんじゃ……」
しかし、ライナは真剣だった。
だからこそ、俺は理解した。
俺がこれからなんと言おうと、ライナが応える回答は「申請を拒否します」なのだ、と。




