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禁忌倉庫の管理記録  作者: 松戸京
管理番号1~10
10/80

管理番号4番:狂った時計 ②

 そして、それから俺は……なぜだか落ち着けなかった。


 一時間……それがどうにも長過ぎるのである。


 俺だって体感時間としてもそれが少し長く感じるのはわかる……だけど、異常だ。


 既に一日以上、俺はライナの事を待っているような気分になってきた……俺はベッドから立ち上がったり、座ったりを繰り返す。


 走行している間に、ライナが扉を開けて俺の部屋に入ってきた。


「遅い!」


 部屋に入ってきたライナに俺は思わずそう言ってしまった。


「……時間通りですが」


 ライナは少し不機嫌そうにしながらそういう。


「いやいや……おかしいだろ? もう一日は経っているはずだ。時計だって……」


 俺は時計を見る。


 時刻は……2時54分。


「ほら! こんな時間だ……どうしてこんなに遅くなったんだ?」


 すると、ライナは冷たい瞳で俺を見る。まるで、俺が言っていることが間違っているとでも言わんばかりに。


「な……なんだよ。その目は……」


「管理番号1番。現在の時刻は2時54分……アナタはそう言いたいのですね?」


 ライナは俺に変な質問をしてくる。俺は当然だという意味で大きく首を縦に振る。


「そうだ……何かおかしいのか?」


「いえ……ですが、アナタは一時間前、私にその時計は壊れていると言いかけませんでしたか?」


「え? そんなこと言ったかな? 大体! 一時間前じゃない! 一日前だ!」


 俺がそう言うとライナは怪訝そうな目で俺のことを見る。そして、そえから小さくため息を付いてから先を続ける。


「では……管理番号1番。その一日前の時刻とは、いつですか?」


「え? そりゃあ……5時45分だよ。時計はそう示していたんだし……」


「なるほど。では、もう一つお聞きします。管理番号1番。今は昼ですか? それとも、夜ですか?」


 ライナの奇妙な質問に……俺は答えられなかった。


 今は……どっちなんだ? よく考えてみたらわからない。


「え……そ、それは……」


 俺が困っていると、ライナは少し優しげな笑みを浮かべて俺に語りかける。


「管理番号1番。アナタは眠っていますか? それとも、これから眠るのですか?」


「え……あ、ああ。まだ寝てないな……ってことは……夜?」


 俺がそう言うとライナは小さく頷く。


「現時刻は午後11時半です。ですから、そろそろ就寝の時間となります」


「え……そ、そうだったのか……でも、俺……全然眠くないというか……」


 それはそうだ。俺は今まで自分が一体夜にいるのか、昼に居るのか全く理解していなかったのだ。


 今は夜だと言われて「はい、そうですか」という感じで眠ることが出来るわけがない。


 俺がそう言うとライナは少し不安そうな顔をする。それから、真剣な表情をして、俺の方に少し近づいてきた。


「……アナタは睡眠を通して死亡と蘇生を繰り返している。そして、今まで徹夜と夜更かしはしたことがなかった……ですが、今、この夜の時間であっても、アナタは眠くない……というわけですね?」


「え……あ、ああ。そうだけど……」


 俺がそう言うと心配そうに俺を見ながらも、ライナは少し興味有りげな表情で先を続ける。


「……試してみましょうか。アナタが寝ないとどうなるか」


「え……そ、それは……危ないんじゃ……」


 しかし、ライナは真剣だった。


 だからこそ、俺は理解した。


 俺がこれからなんと言おうと、ライナが応える回答は「申請を拒否します」なのだ、と。

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