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夏
入道雲を追いかけて自転車を漕ぐ。
どれも同じ蝉の声が両耳に入り込む。
体のどこから流れ出したのかわからない汗がシャツと肌をくっつける。
「はぁっ はぁっ」
キィーーッ ガチャンッッ
慣れた手つきで駐輪場にとめる。
「はっ はっ はあっ」
ガラララ…
教室の冷房で冷えた空気が逃げ出す。
「おー。今日もギリギリなのな」
焦げた肌に似合う白い歯をみせて笑いながら、大輝がこちらを向いて椅子に座る。
「明後日学校くればおわりだからな。遅刻はしねぇよ。」
「そうだな、俺もしねぇ。」
会話が弾みだすと担任がやってきて席につけだのなんだのと言いながら教壇に上がる。
そんな退屈な話は一切も耳に入らずまあまあな特等席から見える外を眺める。
これが俺の日常。
高一の夏はきっと部活も恋愛もない怠惰なものがやってくるのだろう。
きっと。