72 めでたしめでたし
1の迷宮ルートを選びました
今、俺は後悔の念でいっぱいである。ただ暗闇をさまよう俺に何かできることかと問われれば俺の手をつかむチャオ、レイの手を決して離さないこと。進行方向のはるか先に見える灯りで待っている物に対しての対抗手段を考えることだ。何が待っているかなど分からないのだから対策のしようもないが……。
この空間では声を発しようとしても出ない。よって会話はできない。美佳との意思疎通は出来るが話すことも思い浮かばない。さっき、生きてるかと聞かれたので多分と答えておいた。
この暗闇が三途の川的なものでない事を祈ろう。
何があったか。一言で言うと俺が油断をしていたということだ。
もう少し細かく説明する。魔物の襲来は過去最高規模の物だった。魔物の中にはAランクの魔物を含まれていた。敵の総大将は魔族。手下の魔族も数名いた。戦闘は長期化した。冒険者がいつもの半数程度しかいないのにもかかわらず魔物は何倍もいる。更には統率がとれているのだから当然だ。こちらは騎士団と協力のもと部隊を2つに分け数日半篭城状態で戦った。激しい戦闘で死者も少なからず出た。数日たつと話を聞いた冒険者が王都から来てくれたことで形成はだんだんこちらに傾いてきた。
丁度その頃魔族が本格的に戦闘に参加してきた。厳密に言うと初めて闇属性の魔法を使ってきた。闇属性の魔法はすごかった。前衛の冒険者がなすすべなくやれれた。何故か?闇属性の魔法は盾や鎧を通りぬけたのだ。それでも後衛の魔法使いが属性の壁を作ることでほぼ無効化することに成功。コーシーさんは相手の属性練度が低くてよかったわ。と言っていた。
俺もそれを聞き現状を見て油断していたのだろう。水の衣を纏っているから何か奇襲があっても大丈夫だろうという思いもあった。実際風の攻撃なんて一度も見たこともないし、炎、雷は水の衣で防げた。土なんて遅いからあまり大きすぎない限りはまず当たらない。
それにチャオとレイの嗅覚、聴覚にサーチがある。奇襲自体受けることはないだろうと思っていた。
ほとんど街側の勝利が決まり、休憩ということで更に気が緩んでいるときにその事件は起きた。
突然空間に巨大な黒い円が出現したのだ。何が起きたのか分からなかったがとりあえず反射的に後ろに飛んでいた。
「兄貴!!」
「シン様」
レイとチャオが叫びながら俺をつかむ。何故そんな行動に出たのか分からなかったが後ろを見て理解した。俺の後ろにも同じように黒い円が出現していたのだ。俺たちはそれに吸い込まれた。
最後に見えたのは円から出てきた魔族を蒸発させたコーシーさんの姿だった。
円に飲み込まれた時の事を思い出していると灯りが近くに見えるようになった。ここまで近いのにもかかわらず美佳、レイ、チャオの姿は見えない。この空間に漂う時間の終わりを感じ身構える。
灯りの向こう側は集落だった。ドーム状の何かでおおわれているので洞窟か何かだろうが確かに集落がある。それと祭壇のようななにかも。
見たところレイもチャオも無事であたりを見回している。外敵を探しているのだろう。
『シン君』
『ん?どうした』
『私、ここが何処だかわかっちゃったかも』
『え?なんで?どこなの?出れるかね』
『出れるかは分からないけれど多分ここ迷宮の中だよ』
なんでもコーシーさんに聞いた話だと迷宮の中に祭壇のある集落があって運が良いとたどりつけるらしい。純粋な心を持っていれば普通にたどりつけるらしいがここに来ようとする者はそのほとんどが集落に住むエルフ目当てらしい。当然集落でそんなことをすれば上げしい抵抗には会うが1人くらいなら攫うのも簡単らしい。何故、そんな話をコーシーさんから聞いていたのか、それは奴隷について聞く為、ではない。話の肝は祭壇にある。この祭壇では大精霊の転生の儀が行えるらしい。つまり美佳も人間になれるということだ。
『よし、ならすぐにやろう』
『まず、集落の人に挨拶をしてからだよ。誘拐とかで排他的になっているからちゃんと話をしないと。一応私がいれば大丈夫だとおもうけど』
『そ、そうだな』
『それと、最後に確認だけど、転生した大精霊はエルフになるの。転生は誰かと契約した大精霊しかできないし、契約者の助けが必要なの。しかも、契約者もエルフになってしまうの。その覚悟はあるかな』
『つまり、2人でずっと生きるって事だろ?永遠にも等しい命がどれほどの事か分からない。もしかしたらかなりの苦痛かもしれない。でも、ミカがそれを味わうのなら俺も味わうよ。ミカと2人でなら耐えられると信じてるよ』
『シンくん……ありがと』
こうして俺の決意は決まり集落の人と交渉を始めた。交渉と言っても美佳が見えるエルフの前では何を行っても信じてくれる勢いだったが。
美佳は転生した。名前をミカエル・ジ・フォレシアにかえて。俺の名前もシン・フォレシアになった。
それからチャオとレイにミカの事を紹介した。俺にとってどのような人なのかも。そのうえでこのままここに住むことを決め伝えた。奴隷からは解放すると言ったが死ぬまでついてきてくれるそうだ。少し涙が出た。
俺たちはとりあえずこの集落で村の護衛をしながら数年間は自給自足生活をするだろう。もしかしたら迷宮の外に出て街に戻るかもしれない。でも、少しの間ゆっくり過ごしたいと思う。まず結婚式を挙げよう。その前にプロポーズしなきゃな。良かった魔法鞄を持っておいて。
俺はこの日のためのばあちゃんから貰った指輪を鞄からだしミカのもとへと向かった。勿論その時、金属の擦れるような音は聞こえなかった。
すみません逃げです。どのみちエンディング。
もともとの考えでは王都の迷宮に飛ばされたあと、美佳とは離れて学園生活が始まる予定でした。
受肉の儀も街の北にあるエルフの森予定でAランクと同時にミカ参戦の予定でした。登場しなかった魔王様、国王様は遺憾の意を唱えていることでしょう。
言い訳をさせてください。
人間が付かれたのです。次書くときはゴブリンにします。




