35 俺に明日は無いらしい
朝、俺は久しぶりに早朝の鐘と同時に起きて貴族の家に来ていた。
理由は勿論朝ごはんに俺が今から作るデザートを食べてもらうためだ。
用意してもらったのは牛乳、砂糖、卵それと容器。そして昨日材料を伝えたときに気付いたのだがバニラエッセンスなんてものはありませんでした。作り方も知りません。ここまでくれば何を作ろうとしているかわかる人もいるだろう。そうプリンです。
料理人の人たちが朝ごはんを作っている横でプリンを作る。料理長さんは横で手順を見てる。俺は字が書けないので覚えてもらう他ないのだ。容器に入れて蒸し焼きにする。冷蔵庫なんてものがないので水に浸して冷ます。材料や作り方のせいで少し味は変わってしまうがこの世界の住民はもともとプリンなんて知らないのだ。大丈夫だろう。最後にカラメルをかけて食事後、家族で会話をしているところに持って行った。
「まぁ、きれいな色ね。なんて料理なの?」
「プリンって言います。舌に合わなければ作り方は料理人さんが覚えてると思うので試行錯誤してみて下さい」
「分かったわ。ではこの上にかかってるソースは何?」
「それは砂糖です。簡単に作れます」
「そうなの。期待しちゃったわ。とりあえず食べてみようかしら」
そういって奥様は料理を手に取る。他の方もそれに続く。お嬢様がが静かだなとおもい見ると朝に弱いのかぼーっとしていた。
結論を言うと奥様はとても気に入ったようだ。お嬢様もさっきまでの眠気が嘘だったかのようにぺろりと食べてしまっていた。さらに昨日の会話で同じような料理を満腹亭にも教えるということを覚えて、止めようとしてきた。無効に教えるのは甘いものではないと言うと少し心配そうではあったが納得してくれた。
俺は挨拶をして屋敷から去る。今日は庭の整理があるわけではないのでいる必要もないのだ。芝や雑草も毎日伸びるので昨日より少し庭の見栄えが悪くなっているように感じたが気にしないことにした。細かいことは当主様がするだろう。
そしてそのまま満腹亭に来た。
満腹亭では茶碗蒸を作った。もうすぐピークの時間になるというのに料理場を1つ開けてくれてネイピアさんは俺の動きを1つもみのがさないとばかりに凝視している。そんなに難しい事しないのにな。
入れる具は色々と試行錯誤してもらうとして、甘い味にしないようにとだけ約束して裏口から店をでる。そして、表から入りお昼を食べた。丁度昼ごはんの時間になっていたからだ。今日はすぐ宿を出たので朝ごはんも食べていなかった。おなかが減っていた分たくさん食べてしまった。
食事後、俺はギルドに薬草採取の依頼の紙を持って行った。今日もいつもと変わらずピエールさんが受付にいた。
「お、シンじゃないか。そういえば草むしりは終わったんだったな。問題とかが起きなくて本当に良かったよ。で今日は何を受けるんだ?」
「はい。今日も薬草採取です」
「そうか。お前さんは大量にとって来れるもんな。わかった行ってこい。でもFランクになってから草しか刈ってないんじゃないか?」
「言われてみればそうですね。じゃぁ明日は他の依頼探してみます」
「明日があればいいけどな」
「え?怖いんですけどどういう意味ですか?」
「別に悪い事じゃないから気にせずいってきな」
「……わかりました」
気になる。とても気になるがネイピアさんの様子だと話してくれる気はなさそうなのであきらめて採取に行くことにする。
今日の目標は10束。前回が12束だったことと今回は最初から美佳が手伝ってくれることを考えると6時間位で終わるかなとは思う。
無心で刈るのもいいが暇なので美佳と会話をする。
『そういえば、料理で金稼ぎしないとか言ってたのに結局たくさん作ってるな』
『一応、それでお金貰ったの野菜チップスのときだけだし良いんじゃない?オーナーさんもレシピ公開して手に入れたお金渡したそうだったけどことわってるしさ』
『まぁそうか。プリンなんて全く予定してなかったからなぁ。あとマヨネーズとハンバーグのはずだったのに』
『それも作ればいいじゃん。シン君マヨネーズ好きだもんね』
『うむ。結局ご飯にかけて食べる境地には至れなかったけどかなり好きな部類だったな』
『ハンバーグとは鮭とかなんでもかけてたもんね』
『胡麻ドレとマヨはもう偉大だったわ。本当に』
こんな昔話をしつつ20束もって北門に帰る頃にはもう日が暮れていた。夜の鐘の少し前だったが夜の鐘が鳴ると門をしめてしまうそうだ。間に合ってよかった。前にロピタルさんかソフィーさんにそんなことを聞いたような気もするがよく覚えてない。
後から聞いた話だが美佳は知っていたし、普通に間に合うと思っていたらしい。日が落ちる時間で大体の時間がわかるらしい。これは精霊だからではなくもともとの能力だそうだ。さすがです。
そして報酬の銀貨5枚を渡されると同時にピエールさんからとんでもない一言が放たれた。
「おまえ今日でFランク卒業な」
明日がないとはこれのことだったようだ。
もう酒なんていらない




