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無力を知っている転生者の日常  作者: ゴミ屋敷
1章 異世界で生活していく為に
15/72

15 店でも出そうぜ

 まだ厨房やカウンターで仕事をしている人はいるがほとんどの人が唐揚げ丼を食べていた。やはり揚げ物は珍しいのか驚いている。それになかなか評判もいいようだ。皆が思い思い感想を言っている。


「ふむ、たしたかにボール……丼物っていうんだっけか?これだと食べやすいな」

「オーナー!今日の肉はなんか臭みが少なくなってるぞ。今日は珍しく魔物の肉使ったのか?ご飯が進むぜ」

「いや、俺が後ろから見ていたが正真正銘昨日のあまりの鳥の肉だよ。確かに臭みは減ってるがな」

「まじか?今日の賄いはそこの子供の冒険者が作ったんだろ?おい、どんな魔法使ったんだ?」

「私も気になるー。このさくっとしてて食感もいいし、かむと肉の汁が口の中に広がって幸せ。お母さんも気になるでしょ?」

「え、ええ。本当にこんな料理初めて食べたわ。ぜひ作り方を教えてちょうだい」

「ほらお前ら、一気に聞かれてシンも困ってるだろう。料理のことは俺が聞いておくからお前らは仕事に戻れ」


 一気に来られて慌てていたが、ネイピアさんの助けによって安堵できた。しかし、それと同時に俺は混乱していた。要因は2つある。1つは肉。もう一つはお分かりであろう。まさかの女性がいた。しかも親子で。


『な、なぁあの親子昨日、いや今日の朝もいなかったよな?』

『あれ?気が付いてなかったの?昼時の前に入って来てたよ。オーナーの奥さんと娘さんで病気で寝込んでた人たちのうちの2人らしいよ』

『まじか!あのおっさんこんなきれいな人を射止めていたのか』

『驚くところはそこなんだね』

『あれ?他になんかあるか?』

『年齢差とか?』

『確かに!ネイピアさん45くらいだよな?奥さんは多分30くらい。娘さんは15ってところか。ってことは変態紳士(ロリコン)か』

『んーこっちの世界では普通らいいよ』

『そ、そうなのか』


 俺が何でそんなことを知っているのか聞こうとしたときにネイピアさんから声がかかる。


「おい。何でボーっとしてるんだ。つかれたか?」

「あ、いえ大丈夫です」

「そうか、ちょっとこの料理について聞かせてほしいんだがいいか?」

「はい」

「じゃぁここじゃなんだから少し奥で話すか」

「わかりました」


 確かに食器返却口のすぐ近くじゃ話せないなぁと思いつつ、ローレンツさんに断りを入れネイピアさんを追いかけた。


「仕事もあるし、もうすぐでピーク時だし単刀直入に言うぞ。さっきの料理のレシピを教えてくれないか?臭みを減らす方法もだ。金貨5枚までなら出す」

「そんな、お金なんて払わなくても後ろで見ていたんだから勝手に真似すればいいんじゃないですか?」

「いや、筋は通したい。それに後ろから見ていても何故臭みが薄まったのかわからなかったしな」


(たしかにそれは俺もさっぱりだった。それにしても正直な人だなぁ。お金だってここの土地を買うために必要だろうに。それに魔物の肉がどうのってのもよくわからないし)

 俺は少し考えるふりをしながら俯いた。


『ミカも一昨日の貴族みたいな人とのやり取り聞いたよね?お金も必要そうだし教えてあげようと思うんだけど?聞きたいこともあるし』

『ただってことだよね?シン君だってお金が余ってるわけじゃ無いんだからもらっておけばいいのに、お人よしだなぁ。でも、まぁそれでこそシン君だよね』

『で、何で臭みが減ったんだ?』

『え?……』

『お、おいミカさんや。目が怖いよ』

『生姜とお酒だよ。お酒がにおいを打ち消してくれて生姜が違う風味を足してわからなくしてくれてるの。実際に食べてないからどのくらいの臭みなのかわからないけど』

『あーなんか科学でやった気がする……。俺どちらかというと物理の方が好きなんだよな』


 美佳がいて本当に良かったと感じながら顔を上げる。考えるふりをしてからそんなに時間も経っていない。


「お金は大丈夫です。その代りと言ってはなんですが教えて欲しいことがあるのですが」

「良いのか?俺に答えられることなら何でも答えてやろう」

「えっと、さっき料理人の方が、魔物の肉と間違えてましたけど何でですか?」

「臭み消す方法知ってるのにそれは知らないのか。なんか変な感じだな。魔物は体内に魔石を持っていてな。仕組みは解明されてないが持っている魔石の魔力が多いほど臭みがなくなる。ある一定以上は臭みはなくなり熟成されうまみが増すんだ」

「なるほど、だから魔物の肉の方が高いんですね」

「そーゆーことだ。うちは多少値は張るが旨さと量で店を出してるからな。飼ってる肉がうまくなるんならそっちの方が安くできていいんだよ」


 まだ3日目だがネイピアさんの人の良さがわかる。ピエールさんといいムキムキの人はいい人なのだろうか。

 

「臭みが薄くなったのは酒と生姜のおかげです」

「確かに生姜は香りが強いからわかる。少し気になりにくくなるってことも知ってるがそれと酒でこんなに消えるものなのか?酒なんか余計臭くなりそうだが……」

「僕もよく変わっていないんですけど、先人の知恵ってやつです」

「色々と突っ込みたいことはあるが今は料理のことを教えてくれ。名前はなんて言うんだ?」

「名前は唐揚げって言います。唐揚げ丼ですね。作り方は見てた通りです。醤油、酒、生姜で味付け、臭み消し、香り付けをしてます。で最後に例の粉を全体的にまぶして熱した油にで揚げます。そうすると外側で粉が固まります。これのことを衣って言うんですけど、衣が肉の旨味と汁を閉じ込めてあの味になるみたいです」

「なるほど、衣か。確かにあのサクサクと肉汁はうまかった。ソースにも合うしな。それで相談なんだが、これを店で出してもいいか?」

「いいですよ。もしまたあの貴族が来たら生姜と酒のことだけ隠してくださいね。酒の代わりに砂糖でいいので」

「なんだ、聞かれていたのか。なんか理由があるんだな?了解した」

「じゃぁそろそろ食器が溜まってそうなので仕事に戻りますね」

「ちょっとまってくれ。もう一つ言うことがあるんだ」

「?なんでしょう」

「気付いたかもしれないが、俺の妻と娘の熱が下がって今日から復帰した。見習いの連中もそろそろ治りそうでおそらく全員明後日から復帰する。シンには悪いが依頼も明日で最後にしようと思っててな」

「そうですか。もともと見習いさんたちの代わりでしたからしょうがないですよ。明日もしっかり働かせてもらいます」

「ほんとにすまねぇな。たった4日だったけど本当に助かった」

「まだ明日もあるんです。そういう話は明日にしましょう」


 その後はまた夜の鐘まで働き宿に戻り夕飯をもらってぐっすり寝た。





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