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 ワタルと沙樹は互いに顔を見合わせる。

 さっきまで泣いていた沙樹は、口を半開きにして何か言おうとした。だが言葉を見つける前にふっと息を吐いたかと思うと、突然笑い始めた。抑えようとしても抑えられず、いつまでも笑い続ける。ひとしきり笑ったところで、最後に残った涙を両手で拭き取った。

「うそみたい。同じ大学だからって、こんな偶然あるんですね」

「まったくその通り。信じられないよ」

 ワタルは残ったコーヒーを飲み干した。カップをおき、改めて沙樹を見る。いつもと同じ屈託のない表情に戻っていた。

「思い切り笑ったら、急におなかがすいてきたみたい。マスター、何かあります?」

「焼きそばくらいならすぐに作れるけど、終電大丈夫?」

 マスターがカウンター内の壁にかけられた時計を指さした。日付が変わろうとしている時刻だ。

「うそ、いつの間に」

 沙樹は椅子から飛び上がり、慌ててコートに袖を通す。

「走ったら間に合うかな」

「遅い時間だから、駅まで送るよ」

「走らなきゃいけないし、いいですよ」

「遠慮しない。ライブに備えて毎日ジョギングしてるから。こう見えても体力には自信があるんだ」

 ワタルが力こぶを作るポーズをとると、沙樹は目を細めて、

「じゃあ、お願いします」

 と笑った。

 背後で、エラ・フィッツジェラルドの力強いボーカルが響いていた。


  ☆  ☆  ☆


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