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紙耐久の魔法使い

作者: タケヤリ
掲載日:2026/08/11

魔法使い ゾヴィラー・ウィッジ。彼が、一流の冒険者となるべく初めてのクエストに臨む。

 

 アルディス王国の冒険者ギルド。


 マスターに声を掛け冒険者登録の手続きを完了させる。これで晴れて自分も一人の冒険者だ。


 冒険者にはそれぞれランクが存在し、自分は当然一番下の『☆1冒険者』。

 早速と言わんばかりに、ギルドの受付嬢がクエストを勧めてくる。


 『エルミア平原の薬草採集 推奨ランク ☆1』

 『シルディアの森のキノコ採集 推奨ランク ☆1』

 『ガルディス洞窟の鉱石採掘 推奨ランク ☆1』


 最低ランクらしく地味ではあるが、魔物と戦闘する系のクエストがないのはありがたい。


「じゃあ、この薬草採集のクエストで。」

「こちらのクエストですね!採集対象は『ヒーリングラス』を5本です!」


 受付嬢は快く受注印を押してくれた。


 エルミア平原はこの王国を出てすぐだ。ギルドを後にし、王国の城門へと足を進めた。


 城門を抜けしばらく歩くとそこには大自然、『エルミア平原』が広がっていた。


 クエスト達成に向け、1度深呼吸。空気が美味しい。


 今回のクエスト目標である『ヒーリングラス』。依頼書を確認すると、それは小川の周辺に自生していることが多いようだ。


 辺りを見まわし耳を澄ませる。水の流れる音が聞こえる。音を頼りにし、慎重にその方向へと向かう。


 当たりだ。発見した川辺には目標の薬草、『ヒーリングラス』がたくさん生えていた。


「これだけあれば、5本なんてすぐだ!ラッキー!」


 薬草を必要な数だけ丁寧に摘み取り、ポーチに詰める。


 楽勝だなんて思っていると、後ろからガサガサと音が鳴る。


 そういえば、水辺にはスライムがよく出るから気をつけてと、よく幼い頃から注意された。


 予想通り、茂みからスライムのお出ましだ。ピチャピチャと水音を立てながらこちらに近づいてくる。


 即座に杖を構え、炎魔法を唱える。


「フレイム!」


 火の球がスライムに着弾し、弾け飛んだ。魔法使いが一番初めに覚える炎魔法『フレイム』。普通ならリンゴ程度の大きさの火の球が放たれるのだが、ゾヴィラーの場合はまるで大砲のようだった。


「よし!撃破完了!」


 魔物退治も意外と簡単と思っていると、後ろからとてつもない激痛が走る。


「ぐあっ!?」


 スライムは一体だけではなかった。もう一体後ろに潜んでいたのだ。そいつに強烈なタックルをお見舞いされてしまった。


 痛い。折れたかもしれない。死ぬかもしれない。身体に絶え間ない鈍痛と恐怖が響く。しかし胸の奥でなにかが燃えていた。痛みとか恐怖とかとは全く違うなにか。


 そうだ。こいつに怯えるんじゃ絶対に一流の冒険者になんかなれっこない。勝つんだ。この恐怖に。


「っあああ!フレイム!!」


 恐怖を押し殺し、全力で炎魔法を唱えた。さっき放ったものよりも、更に強力なものを。


 ゾヴィラーの放った火の球はさっきよりも小さかったが、その分密度が増していた。スライムに着弾した瞬間、火の球は爆ぜ、瞬時に蒸発させた。


 これで一件落着...とはならなかった。ゾヴィラーの放った炎が近くの木に燃え移り、火事になった。


「ヤバい...早いとこ離れよ!」


 ゾヴィラーはそそくさとその場を後にした。そして王国のギルドへ向かい、『ヒーリングラス』を5本を取り出す。


「...はい!ヒーリングラス5本!クエスト達成です!ありがとうございまーす!」

「こちら、報酬の銅貨5枚です!お疲れ様でした!」


 初めての依頼達成。背中に残る鈍痛を消し去るかのように、満足感と達成感が身体に染み渡る。幸い骨まではいっていなかったが、あの痛みは2度とゴメンだ。


「あぁ...。冒険者って楽しいな...」


 ギルド内の椅子に座り、感傷に浸っていた。そんな中、とある話題が耳に入る。


「おい、あの平原で火事があったらしいぞ。なんでも、王国の兵と魔法使いが総出で消火活動に回ったとか...」

「えー?なにそれ。魔物が暴れたりでもしたのかな...?」


 様々な憶測が飛び交う。サラマンダーが現れたとか、闇の魔法使いの仕業だとか。


(もう話題になってる...。それもそうだよな....。もっとコントロールしないと...!)


 ゾヴィラーは反省しつつも、内心バレていなくてホッとしていた。


 今回のことを戒めにし、ギルドを出て自宅へと足を進める。


(家に帰ったら、また魔力を抑える練習だな...)


 新米冒険者 ゾヴィラー・ウィッジ。膨大な魔力を持ちながら、貧弱すぎる肉体を持つ彼は、明日の依頼に向けしっかりと休息を取る。いつかこの力を完全にモノにし、一人前の冒険者になるために。


終

初めて小説を書きました。文章を書くのが楽しいです。

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