美しいお姫様
これは、ここではないどこか、今ではないいつかの物語。
とある国に、とても美しいと評判のお姫様がいました。
その美しさは、キラキラと眩しく輝いているように人々の目に映るほどでした。
その噂は国を超えて広がり、各国の王子たちが求婚しましたが、お姫様は誰とも結婚しませんでした。
その国には、一人の青年がいました。
彼は町の人々のために、誰に言われることもなく働きました。
町にごみが落ちていれば拾い、道端に花を植え、手入れを欠かさず行いました。
誰かに傷つけられても仕返しはせず、困っている人がいれば自分を後回しにして助けました。
おなかをすかせた人には自分のご飯を与え、着るものがなければ服を分け、住む場所がなければ家を貸しました。
そうして青年は、何も持たず、生傷だらけになり、日に日に見ずぼらしくなっていきました。
周りの人々は、彼を薄汚い男だと罵りましたが、青年は気にしませんでした。みんなが幸せであれば、それでよかったのです。
そうして、青年の努力でその国はとても美しい街並みが保たれていました。
それこそ、キラキラと眩しく輝いて見えていたのかもしれません。
ある日、青年はお姫様に出会いました。
「あなたほど美しい人を、僕は見たことがありません」
お姫様も微笑みながら答えました。
「あなたのような人を、私も見たことがありません」
二人は恋に落ちました。しかし周囲は許しませんでした。
「あんな汚らしい男に、私たちのお姫様は相応しくない」と、皆が口をそろえて言いました。
やがて青年の噂は広まり、王子たちの嫉妬により、青年は命を落としました。
すると国の様子も変わり始めました。
ごみを拾う人はいなくなり、道端の花を手入れする人もいなくなりました。
困っている人を助ける人も、もう誰もいません。
国の景観は荒れ、あんなに美しいと評判だったお姫様も、「あんな国のお姫様が美しいはずがない」と言われるようになりました。
そして、美しいと評判のお姫様はいなくなりました。
その代わりに、一人の見ずぼらしい若い女性が、ごみを拾ったり、花を植えたり、町の人々を助けたりする姿が見られるようになったといいます。




