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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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16 白金の明妃(7)

(ウラナの独白)

 ああ、まただわ。明妃に心を奪われる方のなんと多いことか。

 明妃は、妃としては大層変わった規格外のお方です。お美しいけれど、お顔と左腕にはひどい火傷の痕がおありだし、お背は高くていらっっしゃるのに、お体は大層痩せていらっしゃるのです。女性的な基準でいうと、あまり魅力的ではないと思います。ところが、どうしたことか、年に何人か、必ず、明妃に恋煩いして、おかしくなる者が現れるのです。明妃が困り果て、一方猊下はその様子をおもしろがるところを、私はもう幾度となく目撃してまいりました。だから、そのような場合の対処の仕方も、いろいろ心得ております。金杖の尊貴のお方であろうとも、明妃に不用意に近づけるわけにはまいりません。私が、ガッチリガードして、お守りしてみせます。 

  

 一時間ほど後、デミトリーはまた彼を見舞おうと部屋へ向かったが。その彼を、書類を頭の高さくらいまで抱え込んだ、ふたりの官服姿の役人が早足で追い抜いていった。そのふたりは、彼より先に明妃の部屋へ入り、それから手ぶらで部屋から出てきた。

 今度は、デミトリーは、扉の前で、「リーユエン入るぞ」と声をかけた。すると、中から「どうぞ」と応えがあり、中へ入った。

「何なんだ・・・これは?」デミトリーは、呆気にとられた。

 リーユエンの寝台周りは、書類の山がいくつもあり、その中で埋もれるように彼がいた。先ほどの薄い衣の上に黒い長衣を来て、白金の面覆いをつけていた。ちょうど、何か書類を熱心に読み込んでいるところだった。

「ダメだ。これ」とつぶやき、リーユエンは横の箱のひとつへ書類を投げ入れた。それからまた、一枚取り上げ、今度は読み通すと、脇のインク壺に浸したペンを取り出し、下欄へ書きにくそうに署名していた。

「リーユエン、朝から何してるんだ?」

 デミトリーが戸惑いどいながら尋ねると、彼は顔を上げ、「仕事だよ。不在にしていたから、溜まってしまって・・・」と、肩をすくめた。

「はあ?おま・・いや、あなたは明妃なんだろ。どうしてそんなに仕事が多いんだ?」デミトリーは、金杖の後宮の側妃たちが、そんなに仕事をしているところなど見たことがなかった。だが、リーユエンは首を傾げ

「いや、何でと言われても、知らない間に増えてしまって・・・」と、言った。

 そこへウラナが、お茶の用意を整えて部屋へ入ってきた。そして

「明妃は、先読みに優れたお方でいらっしゃいますので、皆、念のため最終決裁を、明妃まで回してこられるのです。それに、玄武国は、魔道士の数は多いのですが、役人の数は少なく、常に役所は人手不足でございます」と、説明した。

 リーユエンも頬杖をつき、嘆息して「金杖国のように弁護士がゴロゴロいる国が羨ましい。ここは、世捨て人のような魔道士か、金勘定の大好きな商人が多い。役所の仕事なんて誰もやりたがらないんだ」と言いながら、また一枚署名をした。しかし、その指先を見たウラナが、

「明妃、指先に血が滲んでおられます。そろそろ、今日の分は終わりになさっては・・・」と、話しかけた。けれど彼は首をふり、

「まだ、そっちの箱に避けた差し戻し分に、差し戻し理由を添付しないといけない」と憂鬱そうに言った。それを聞いてデミトリーは思わず

「その手で細かい字はかけないだろう?」と、尋ねた。

 すると彼は、「いや大丈夫」と言い、何か呪文を呟いた。すると、先ほどの箱の中から書類が空中へ浮き上がり、整列した。リーユエンは侍女頭へ、「ウラナ、その机の上の白紙の紙の束を持ってきて」と、頼んだ。紙の束が、足元に置かれると、その紙へ、ペンが生き物のように勝手に動き出し、リーユエンの呟く言葉を自動筆記し始めた。

「へえ、魔導術か。便利だな」と、デミトリーが感心していると、ウラナが横で

「術を展開しながら、同時に口述筆記もされるので、とても大変なんですよ」とささやいた。リーユエンはその作業を箱が空になるまで延々三時間近く続けた。

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