11 隊商は大峡谷へ至る(1)
西荒 大牙国への旅の話に戻ります。あちこち飛び回ってすみません。それと、もう一つ、玄武の国で、ヨーダム太師の弟子のニエザが、時々間違ってニエバ表記になっていて訂正しました。すみません。(辞書登録を他の事で使っていて、この話ではほとんど使ってないので、よく間違えてます。読みにくくて申し訳ないです)
頭が激しく揺さぶられ、はっと目覚めた。騎獣が、岩場を通り、体が傾いていた。
「リーユエン、気がついたか?」
耳元で魔獣の声がした。振り返ると、見たことのない青年が手綱を握り、自分の腰を腕でしっかり支えていた。
「誰?」
見慣れない青年に思わず誰何した。すると、青年は眉尻を下げ
「ええっ、俺の事分からないのか?自分が呼び出しておいて、あんまりだよ〜」と、悲しげに言った。
リーユエンは、右側の目を眇め、もう一度青年を見上げた。青年は、彼の顔を覗き込んできた。その両眼が、紅く光った。
「・・・・アスラなのか?」
「正解、やっと分かったのか」
召喚した記憶はあったが、どうして、いつまでも人型でいるのか、訳が分からなかった。
「その格好では、生気がいくらあっても足りないだろう」と、尋ねると、アスラは、
「いや、転身する時は必要だけど、この状態でいるのに、生気はほとんど使わないよ。ねえ、俺って格好いいだろう」
そう言うと、アスラは、リーユエンに顔を近づけ、フードの脇から耳元へ
「亀じじいより、俺の方が絶対いいって」と、囁いた。それを聞いた瞬間、リーユエンの全身が硬直して、騎獣から落ちかけた。
「うわっ、危ない、気をつけろ」と、アスラが怪力で支えた。けれど、リーユエンは体の自由が効かなくなっていた。
「バカ、移動中に呼びかける真似をするとは・・・」
玄武紋が動き出す気配に、リーユエンは、うめき声を押し殺した。
「どうしたんだよ・・・具合が悪いのか?」
(ダメだ・・・意識が引きづられる)
リーユエンの体は脱力し、意識が危うくなった。
カリウラが異変に気がつき、騎獣で駆け寄ってきた。
「どうした?」
「リーユエンが変なんだ。亀じじいの事を言ったら急に・・・」
カリウラの形相が超凶悪に変化した。
「馬鹿野郎っ、猊下を気安く呼ぶとは、おまえは大馬鹿者だ。そんな事は、リーユエンが寝ている時にやれ」と、小声で叱りつけた。
「リーユエン」
カリウラは、彼の肩をつかんで揺すった。リーユエンは、顔をあげ、カリウラへ
「意識が、向こうへ行ってしまう」と囁いた。カリウラは舌打ちし、アスラへ、
「俺について来い」と、叫んだ。
彼らの様子を、ヨークは少し離れた場所から見守っていた。隊商は、もう直ぐ大牙の森林地帯へ入る前の最後の難所、大峡谷へ到る崖沿いの道に差し掛かっていた。
カリウラは、アスラが共乗りする騎獣を、オマが管理する、調理器具を乗せた荷車の方へ連れていった。
「オマっ、すまんが、リーユエンの具合が悪い、荷車に乗せてやってくれ」と、カリウラは、オマへ大声で話しかけた。カリウラの形相を見るなり、オマは、幌つきの荷車の垂れ幕を上げ、中のものを寄せて、空いた場所を作った。
「早く、寝かせておやり」
カリウラは騎獣から飛び降りると、リーユエンをアスラからひったくるように肩へ担ぎ上げ、荷台へ乗せた。
幌の中から、アスラを見たオマは、目をむいて指差すと
「おまえ、誰なんだい、いつの間に紛れこんだんだ」と叫んだ。
「もうっ、オマ、俺だよ、いつも大喰らいって呼んでるじゃないか」
オマは、顔を引き攣らせた。
「まさか、おまえ、魔獣なのかい?」
「へへっ、俺、リーユエンに名前をつけてもらったんだ。アスラだよ。よろしくな」
オマは、床に伸びているリーユエンを見下ろし、ため息をフウーッと勢いよくついた。
「まったく、魔獣を人型にするのに生力を使い果たすなんて、馬鹿なことを・・・」
「違うよ、リーユエンが気絶したのは、か・:*+.\(( °ω° ))/.:+ フガフガ」
カリウラがアスラの口を塞いだ。
「アスラ、本当にもうそれ以上言うな、リーユエンが無事で済まなくなるぞ」
「・・・分かったよ。チェッ」




