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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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9 北荒 玄武の国の魔導師 (8)

 太師はリーユエンを長椅子へ横たえ、

「おまえの体に合う服があるだろうか・・・思ったより小柄だな」と呟いた。

リーユエンはそれを聞いて、「今まで着ていた服があります」と言った。けれど太師は「あれはもう傷んでボロボロだ。それに血の匂いがするから、焼き捨てた」と言った。血の匂いと聞いて、リーユエンは右目を見開き、太師を見た。

「おまえの血は特別なのだ。だが、体の外へ流れ出さなければ、問題はない。とにかく服を持ってくる。少し大きめしかないが、じきに背が伸びるだろうから、たくし込んで着ておけばよい」」と言って、服を取りに行った。

 

 魔導士の黒服を着せられたリーユエンを伴い、太師は、食卓についた。そして、食事が終わると、ニエザへ、

「リーユエンは、わしに弟子入りする。ニエザよ、おまえは兄弟子として、面倒をみてやれ」と言った。それからカリウラへ「カリウラ、おまえは、魔導士には向いておらんが、寺院の方で読み書き算数を勉強するがよい。将来、隊商を自分で立ち上げるくらいの実力をつけられるだろう」と言った。

 はっきりとした目標もなく、ただリーユエンを守ろうという気持ちだけで付き添ってきたカリウラは、自分も勉強できる機会をもらえて、喜んだ。二人は、立ち上がり、太師へ丁寧に揖礼した。その後、太師はリーユエンへ向き直ると、

「おまえの弟子入りは認めるが、ひとつ条件がある」と切り出した。リーユエンは、無言で話の続きを待った。

「おまえの体に神聖紋を刻み込む必要がある。胸と背中の二箇所だ」

 傍らで話を聞くニエザは、真っ青になって体が震えた。あの複雑怪奇な神聖紋を体に刻み込むなんて、正気の沙汰ではなかった。それも二箇所なんて、太師がそんな要求をした弟子は、いままでひとりもいなかったはずだ。

だが、リーユエンは神聖紋の事など何も知らないのだろう、ただ

「お願いします」と、頭を下げた。ニエザはその様子を見て、これからどんな目に遭うのか、この子はきっと何も知らないのだと思い、本当に可哀想になった。

(あんな紋は、人の体に刻むものじゃないよ。太師は一体どうされてしまったのだろう。さっき、お風呂に入れて見ていたのは、刺青するのに、傷がないところを探しておられたのか)と、ようやく太師の異常と感じた行動を理解できた。


 翌日、太師は朝一番で自分の血を混ぜ込んだ特別な顔料で、床に直径が三丈半ほどの円形魔法陣を描いた。その真ん中へリーユエンを連れていき、

「今日から、わしが許可する場合を除いて、おまえはこの法陣の中から出てはならん」と命じ、それから懐から薬瓶を取り出すと

「これは、もっとも強力な血止め薬だ。ただ非常に染みる。刺青を入れるとしばらく出血が続くだろうから、これをかならず傷口につけて血止めしなさい」と言い、リーユエンの側へおいた。

 それから、リーユエンの上半身を裸にし、うつぶせにさせた。

「今日から、背中側へ刻み込む」と言い、長い針を取り出した。その針先を墨に浸した。魔法陣から蔓が伸びて、リーユエンの体が動かないよう拘束した。

 神聖紋は、一尺(一尺:六分の一丈)ほどの直径で、その中に三千字余りの象形文字と、呪文を象徴する記号や獣が、円形に配置された魔法陣の一種だ。非常に強力な魔力回路を構成し、神降ろしや、神獣の召喚に古来から用いられてきた。肌へ刺青するには、通常の刺青に使う針より細い針で、繊細な作業が必要だった。

 太師は躊躇うことなく、リーユエンの背中へ下書きもなしに、いきなり針を突き刺していった。リーユエンは苦痛に歯を食いしばったが、声は上げなかった。指を握りしめたが、そこも太師があらかじめ、爪で怪我をしないように包帯を巻いていた。

 悲鳴こそ聞こえないが、ひどい苦痛を感じる気配が、ニエザにも、ひしひし伝わって来た。

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