表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/257

9 北荒 玄武の国の魔導師 (5)

 宿を訪れたニエザは、ヨーダムに住み込みで仕える唯一の弟子だった。ニエザの仕えるヨーダムは、玄武国一の魔導士いや現在の魔導士界における魔導士の最高峰だった。彼は、長い年月、数多くの魔導士を指導した魔道の師であり、玄武国の元首である法座主から「太師」と尊号を賜った唯一の魔導士でもあった。けれど、弟子は一千人はくだらないヨーダムも、今現在は齢七百年を越え、半ば隠棲研究の生活を送り、身の回りの世話はニエザひとりに任せていた。

 この日、ニエザは、非凡な才を持つ者が、南から来るので、彼を弟子にするために、迎えにいくようにと、ヨーダムより指示されていた。 

(太師がわざわざ私を迎えに寄越すなんて、一体どんな御仁なんだろう)

 ニエザも興味津々で、その者が現れるのを待ち受けた。

 

 亭主は、薄暗い土間の廊下へ降りると、奥へ入り、小柄な少年をつれてきた。

亭主は、ニエザの前に少年とふたりで並び、一礼して

「このお方がリーユエン様です」と、紹介した。少年を見たニエザは、細い目を見開き、口を少し開けて、予想外の貧相な姿にしばし呆然となった。

 過酷な旅を経たためか、顔色は青白く、(やつ)れた様子で、それ以上に驚いたのは、顔左部分のひどい火傷の跡だった。それに全身を見ていくと、左手にも同じようにひどい火傷の跡があった。こんな痩せ細った弱々しい少年が、太師の弟子入りさせたい人間であるとは、到底信じ難かった。

「君は、リーユエンなのかい?この隊商に、他にリーユエンという人はいないのかな?」もしかしたら、同名の別人がいるのかもしれないと、ニエザは考え、念の為尋ねてみた。しかし、リーユエンは、頭をふり

「リーユエンと言う名の者は私しかおりません。ヨーダム様にお渡しする薬材は、用意してありますので、お確かめください」と言い、ニエザへ揖礼した。

 やはり、この者が太師が待ち望んでいた者なのかと、まだ得心いかない気持ちながらもニエザは、

「ありがとう、では、薬材を検めさせてもらいましょう」と、帳場から立ち上がり、彼らの立つ土間へ降りていった。

 荷車に積まれた薬材は、どれも最上等の品質だった。薬師でもない少年が、よくこれだけの品質のものを買い集めたものだと、ニエザは内心感心した。

「ふむ、全品揃っていますね。では、これを、太師のいらっしゃる尖塔へ運びましょう」

 亭主がニエザのそばに来て

「この隊商の荷物運び人は皆、疲労がひどく、昨日雪嵐に遭い凍傷を負ったものもおります。すぐの運搬は無理かと・・・」と、囁いた。しかし、ニエザはにこりと笑い

「いや、これは私の方で運びますから、どうぞ、ご心配なく」と言った。ところが、リーユエンは、ニエザに

「運ぶのは構いませんが、薬材の代金を納めてください」と声をかけた。

「ああ、分かった」ニエザは、太師から渡された金貨の詰まったずっしり重い袋を取り出した。その中にいくら入っているのか知らないけれど、ここから払えばいいと思い「いくら必要だ?」と、尋ねた。すると、リーユエンは、

「袋ごと全部ください」と言った。

 ニエザは、いくらなんでもふっかけすぎじゃないのかと思いながら、それを彼へ渡そうとしたら、その背後から禿頭の恐ろしげな顔つきの男が現れ、太い腕を伸ばして袋を持ち上げた。

「カリウラ、勘定してくれる?」リーユエンが男を見上げて言った。カリウラと呼ばれた男は、無言で頷くと袋を抱えたまま帳場へ向かい、そこで待っていたハオズィと一緒に袋の口を開け、中の金貨を机の上に広げて勘定し始めた。数え終わると、まずカリウラが

「百デナリウス金貨が七百枚だな」と、唸るように言った。

「まっ、牛黄に犀角が高騰して、他もまったくの品不足、相場の七倍ってところですかね」と、ハオズィが満足げに言った。だが、それを聞いたニエザは仰天して

「七倍だとっ、どれだけ暴利なんだ」と叫んだ。しかし、ハオズィは、細い目を彼へ向け「当然でしょ、こんな僻地まで危険を犯して、特級品の薬材を、流行病の治療薬として持ち込んだのだから、七倍だって安いくらいですよ。何なら十倍だっていいくらいだ」と、うそぶいた。彼は、リーユエンが薬材を用意した時は、迷惑そうな顔をしていたのに、現金なものである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ